遺言書作成・遺言執行の解決事例|遺留分への配慮・事業承継・遺言執行者の実務

遺言書作成・遺言執行の解決事例(遺留分・事業承継を見据えた遺言と遺言執行者の実務)

遺言書作成・遺言執行の解決事例|遺留分への配慮・事業承継・遺言執行者の実務

公開日:2026年10月10日

遺言は、書いた内容がそのまま実現されるとは限りません。遺留分を持つ相続人への配慮が足りなければ、相続開始後に遺留分侵害額請求を受けますし、遺言執行者が決まっていなければ、遺言の内容や金融機関の取扱いによっては、預金の解約や登記のたびに相続人全員の協力を求められることがあります。
弁護士法人IGT法律事務所では、遺言書の作成から、遺言執行者としての執行、遺言執行者の不適切な処理への対応まで手がけてきました。
ここでは、当事務所が実際に手がけた遺言書作成・遺言執行の解決事例をご紹介します。

遺言書作成・遺言執行の解決事例の一覧(課題・対応・結果)

掲載している8件のうち、遺言書の作成が6件、遺言執行に関する事例が2件です。作成の事例では、6件すべてで公正証書遺言を作成し、そのうち5件で遺言執行者を指定しました。

No. 種類 ご依頼者と課題 結果
① 遺言書作成 お子さまのいない方。推定相続人は兄弟姉妹と甥・姪(10人近く)で、面倒を見てくれている甥に遺産を託したい 甥に全財産を遺す公正証書遺言を作成し、弁護士を遺言執行者に指定
② 遺言書作成 代襲相続人である孫が海外に住んでおり、連絡が取れない 公正証書遺言を作成し、遺産分割協議をせずに遺言の内容を実現できる状態を整えた
③ 遺言書の書き換え 約6億円の資産(収益不動産中心)を持つ方。妻の死亡で以前の遺言が実情に合わなくなった 過去の生前贈与・物件の偏り・借入金の負担まで定めた新しい公正証書遺言を作成
④ 遺言書作成 資産約8億円。夫の相続(一次相続)で長男に資産が集中し、次男・三男の取得分が少なかった 税理士と連携し、一次・二次相続を通算して3人の取得額が平等になる公正証書遺言を作成
⑤ 遺言書作成 約7億円の資産(不動産・資産管理会社の株式など)を持つご夫婦。子2名の関係が悪化 ご夫婦それぞれの公正証書遺言を作成し、弁護士法人を遺言執行者に指定
⑥ 遺言書作成 資産約6億円の事業家。事業は後継者に任せ、ほかの子との遺留分の争いは避けたい 後継者に株式と事業用資産、ほかの子に収益不動産等を相続させる公正証書遺言を作成
⑦ 遺言執行 遺言で指定された遺言執行者(夫)がすでに死亡し、代わりの指定もなかった 家庭裁判所の選任を受けて弁護士が遺言執行者に就任し、預金の解約・送金と不動産の登記を完了
⑧ 遺言執行者への請求 遺言執行者に就任した長男が、自身への返済などを遺産から控除し、その正当性が争いになった 東京地方裁判所に提訴し、合計220万円を支払う内容で裁判上の和解が成立

※掲載の解決事例は、個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。

当事務所の遺言書作成・遺言執行の解決事例

遺言書|お子さまのいない方の遺言書

【概要】
ご主人を亡くされ、お子さまのいない方の事例です。推定相続人はご兄弟姉妹と甥・姪の10人近くに及び、疎遠な親族も含まれていました。日頃から面倒を見てくれている甥に全財産を遺す公正証書遺言を作成し、弁護士を遺言執行者に指定しました。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺産分割協議を経ずに甥へ財産を承継できる形が整いました。

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遺言書|他の推定相続人と連絡が取れない!遺産分割協議を回避する遺言

【概要】
お子様3人のうち1人が先に亡くなり、その子(遺言者の孫)が代襲相続人となる事例です。孫は海外に住んでおり、連絡が取れなくなっていました。遺言がなければ孫を含む全員で遺産分割協議をする必要があるため、ご意思に沿う公正証書遺言を作成し、お子様を遺言執行者に指定しました。

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遺言書|不動産6億円保有の富裕層、妻の死亡後の遺言書の書換

【概要】
収益不動産を中心に約6億円の資産を持つ方が、妻の死亡を受けて遺言を書き換えた事例です。以前の遺言は妻の存在と当時の財産を前提にしていました。過去の生前贈与を特別受益として明記し、物件の偏りを金融資産で調整し、借入金の負担も定めた新しい公正証書遺言を作成しました。

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遺言書|資産8億円の二次相続、一次相続での兄弟間格差を是正する公正証書遺言の作成

【概要】
夫を亡くされた妻の遺言の事例です。夫の相続(一次相続)で、会社を承継する長男に資産の多くが集中していました。ご依頼者様が日頃から相談されている税理士と連携し、一次相続と二次相続を通算して3人のお子様の取得額が平等になる分配案を作成し、当事務所の弁護士を遺言執行者に指定した公正証書遺言を完成させました。

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遺言書|資産7億円の富裕層ご夫婦|資産管理会社を含む遺言作成と「弁護士法人」による永続的な遺言執行

【概要】
不動産や資産管理会社の株式など約7億円の資産を持つご夫婦の事例です。お子様2名との関係や兄弟間の関係が悪化していました。ご夫婦それぞれの分配案を設計して公正証書遺言を作成し、弁護士法人IGT法律事務所を遺言執行者に指定しました。

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遺言書|資産6億円事業家・遺留分に配慮し事業承継を実現

【概要】
会社を経営し、個人でも複数の収益不動産を持つ事業家の事例です。事業は後継者のお子様1人に任せ、ほかのお子様との遺留分をめぐる争いは避けたいというご希望でした。後継者に会社の株式と事業用資産を、ほかのお子様に収益不動産等を相続させる分配案を作成し、当事務所の弁護士を遺言執行者に指定した公正証書遺言を作成しました。

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遺言執行|遺産2億円保有の富裕層|遺言執行と遺言執行者選任申立て

【概要】
遺言で指定された遺言執行者(夫)がすでに亡くなり、代わりの指定もなかった事例です。相続人同士は疎遠で、協力を得にくい状況でした。当事務所の弁護士を候補者として家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立て、就任後に遺産目録を作成して相続人全員へ送付し、預金の解約・送金と不動産の所有権移転登記(司法書士と連携)を完了しました。

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遺言執行|遺言執行者(長男)による不当な遺産控除を追及し、220万円の損害賠償を獲得

【概要】
母の自筆証書遺言で遺言執行者に就任した長男が、不動産の売却代金(2,610万円)から、自身への貸付金・立替金の返済約530万円や駐車場代約30万円を控除していた事例です。次男・三男の代理人として内容証明郵便で請求し、回答がなかったため東京地方裁判所に提訴しました。控除の説明と裏付けを求め続けた結果、相手方の和解提示額は各40万円から各110万円に上がり、合計220万円を支払う内容で和解が成立しました。

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遺言書の作成・遺言執行で当事務所が重視していること

遺言で争いを防げるかどうかは、作成の段階でどこまで先を読めるかで決まります。当事務所では、次の3点を重視しています。

遺留分を前提にした分配案:

兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり(民法1042条)、遺言で遺留分を下回る取り分しか定めなければ、相続開始後に遺留分侵害額請求(民法1046条)を受けるおそれがあります。事業承継のために後継者へ株式を集める場合でも、ほかの相続人に収益不動産や金融資産を割り当てるなど、遺留分を意識した配分を設計します(上の事例⑥)。反対に、兄弟姉妹が推定相続人であれば遺留分はないため、遺言で特定の人に全財産を遺すことができます(上の事例①)。

遺言執行者の指定と、執行までを見据えた設計:

遺言執行者を指定しておけば、預金の解約や不動産の登記を、相続人全員の協力を得ずに進められます(民法1006条1項・1012条)。指定がない場合や、指定された人が先に亡くなった場合は、家庭裁判所に選任を申し立てる必要があります(民法1010条、上の事例⑦)。執行の時期まで長い年月が想定される場合は、個人ではなく法人を遺言執行者に指定する方法もあります(上の事例⑤)。

公正証書遺言での作成と、税理士との連携:

公正証書遺言(民法969条)は、公証人が作成して原本を保管するため、形式の不備で無効になるおそれが小さく、家庭裁判所の検認も不要です(民法1004条2項)。資産が多い方の遺言では、相続税の負担や一次相続・二次相続の通算も検討が必要になるため、日頃から相談されている税理士と連携して分配案を作ります(上の事例④)。

遺言書作成・遺言執行の解決事例に関するよくあるご質問(FAQ)

Q1. 公正証書遺言と自筆証書遺言のどちらで作るべきですか?

A. 争いが予想される場合や資産が多い場合は、公正証書遺言をおすすめします。公証人が作成して原本を保管するため、形式の不備で無効になるおそれが小さく、相続開始後の家庭裁判所での検認も不要です(民法969条・1004条2項)。当事務所の作成事例は、いずれも公正証書遺言です。

Q2. 遺言執行者は必ず指定しなければいけませんか?

A. 必須ではありませんが、指定しておくと、預金の解約や不動産の登記を遺言執行者が単独で進められます(民法1012条)。相続人同士が疎遠な場合や、連絡の取れない相続人がいる場合は特に役立ちます(上の事例②)。指定がない場合や指定された人が亡くなっている場合は、家庭裁判所に選任を申し立てます(民法1010条、上の事例⑦)。

Q3. 遺言で遺留分を侵害する内容にすると、遺言は無効になりますか?

A. 無効にはなりません。ただし、遺留分を持つ相続人は、多く取得した人に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できます(民法1046条)。兄弟姉妹には遺留分がないため(民法1042条)、兄弟姉妹が推定相続人の場合は、この心配はありません(上の事例①)。

Q4. 会社の株式を後継者に集める遺言を作りたいのですが、注意点はありますか?

A. 株式を後継者に集めると、ほかの相続人の取り分が遺留分を下回るおそれがあります。非上場株式の評価額の見込みを立てたうえで、ほかの相続人には収益不動産や金融資産を割り当てるなど、遺留分を意識した配分にしておくことが大切です(上の事例⑥)。

Q5. 遺言執行者が不当な処理をしているようです。どうすればよいですか?

A. 遺言執行者は、遺産の目録を作って相続人に交付し(民法1011条)、相続人の求めに応じて執行の状況を報告する義務を負います(民法1012条3項・645条)。説明に納得できない場合は、根拠となる資料の開示を求め、任務を怠ったことによる損害の賠償を請求したり、家庭裁判所に解任を請求したり(民法1019条)することを検討します(上の事例⑧)。

Q6. 一度作った遺言を、後から書き換えることはできますか?

A. できます。遺言はいつでも、遺言の方式に従って撤回できます(民法1022条)。新しい遺言が前の遺言と食い違う部分は、前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。配偶者の死亡や資産の変化で前提が変わったときは、見直しをおすすめします(上の事例③)。

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【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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