遺留分|高額な遺留分侵害額請求に対し、不動産鑑定で評価額を見直し、2900万円減額して解決

遺留分侵害額請求の解決事例:不動産鑑定により約6,900万円の請求を4,000万円で合意し、2,900万円減額

遺留分|高額な遺留分侵害額請求に対し、不動産鑑定で評価額を見直し、2900万円減額して解決

公開日:2026年6月25日/最終更新日:2026年9月28日(事例の要点表とよくあるご質問を追加)

この事例の要点

事件の種類 遺留分侵害額請求(請求された側・交渉)
ご依頼者 遺言で遺産の大半を取得した子
相手方 他の子(代理人弁護士あり)
主な争点 更地を前提とする簡易な査定書にもとづく約6,900万円の請求(区分所有部分・収益部分の扱い、使用貸借の負担)
当事務所の対応 不動産鑑定士による正式な鑑定、財産の範囲・生前贈与・債務の確認
結果 訴訟によらず4,000万円で合意(当初請求から2,900万円の減額)

※個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。


遺留分侵害額は、遺産の価額を基礎として算定されます。そのため、遺産の中心が不動産である場合は、その不動産をいくらと評価するかで、支払うべき金額が大きく変わります。

本件では、相手方が不動産業者の査定書をもとに高額な請求をしてきましたが、ご依頼者様の了解のもとで不動産鑑定士による正式な鑑定を実施し、適正な評価額を交渉の土台に据えることで、訴訟によらず合理的な金額での合意に至りました。

本記事からわかること

  • 遺留分で不動産が主な遺産だと、評価額の前提が結論を大きく左右する
  • 不動産業者の査定書は売却を前提とした概算で、遺留分の算定にそのまま使えるとは限らない
  • 評価の隔たりが大きい場合、不動産鑑定が解決の決め手になり、訴訟を経ずに収束できることがある

依頼前の状況

被相続人であるお父様が亡くなり、相続人はご依頼者様と相手方を含む子らとなりました。お父様は生前に遺言を作成しており、ご依頼者様が遺産の大半を取得する内容でした。そのため、他の子である相手方から、遺留分を侵害されたとして、その侵害額に相当する金銭の支払を求められました。

相手方は当初から代理人弁護士を立て、遺産に含まれる不動産について、不動産業者が作成した査定書を根拠に、かなり高い評価額を前提とした金額を主張してきました。提出された査定書は、土地を更地として周辺事例から価格を出し、建物はほぼ価値がないものとして両者を単純に足し合わせる程度の内容にとどまっていました。それを根拠に約6900万円の遺留分侵害額請求を行いました。

ご依頼者様としては、その金額が遺産の実態に見合わない高額なものだと感じていたものの、不動産の評価をどう争えばよいのか、素人がどこまで反論できるのか分からず、強い不安を抱えていらっしゃいました。相続をめぐる話し合いには兄弟姉妹間の感情的な対立も影を落としており、当事者同士で冷静に評価額を議論することは難しい状況でした。適正な評価に基づいて妥当な金額で、できれば裁判という大事にせずに解決したいとのご希望で、当事務所にご相談にいらっしゃいました。

対応と結果

まず相手方の査定書を精査し、あわせて登記簿や図面をもとに遺産である不動産の範囲と性質を正確に整理しました。本件の不動産には、次のような、簡易な査定では反映されない個別事情がありました。

  • 土地上の一棟の建物に、区分所有として扱われる部分が含まれていること
  • 収益を生む部分は被相続人の遺産には含まれないこと
  • 遺産である土地に使用貸借権の負担があり、減価要因となること

更地評価を前提とした査定書をそのまま受け入れることはできないと判断し、ご依頼者様に鑑定の必要性・費用・見込まれる効果をご説明したうえで、ご了解を得て不動産鑑定士による正式な鑑定を実施しました。鑑定では、遺産に含まれる範囲を正しく前提とし、区分所有部分の取扱い、収益部分が遺産でないこと、使用貸借権の負担といった減価要因を適切に織り込んだ結果、相手方の査定書よりも相当に低い適正な評価額が示されました。

この鑑定評価額をもとに遺留分侵害額を計算し直しました。算定にあたっては、不動産の評価額だけでなく、基礎となる財産の範囲、加算すべき生前贈与の有無、控除すべき債務なども一つずつ確認し、適正な金額の根拠を資料で裏づけました。そのうえで相手方に対し、鑑定書という客観的な資料を示しながら、当初の請求が過大であることを具体的に説明し、適正な評価に基づく金額を提案しました。

交渉の過程では、見込まれる評価額の水準、それを前提とした遺留分侵害額の見通し、相手方が応じない場合に調停・訴訟へ移行した際の負担などを、その都度ご依頼者様と共有しました。仮に訴訟となっても、提出した鑑定書は有力な証拠として機能することが期待でき、交渉での合意が調わなくても不利になりにくい、という見通しもお伝えしました。

相手方も、客観的な鑑定の前では当初の査定書に基づく高い評価額を維持することが難しくなり、評価額をめぐる隔たりは次第に縮まっていきました。最終的に、鑑定評価額を踏まえた水準で、当事者双方が納得できる合理的な金額(4000万円)となり、訴訟手続によることなく合意に至りました。結果として、当初の請求金額から2900万円減額することができました。また、訴訟を経ないことで、解決までの時間的・精神的な負担を抑えられた点も、ご依頼者様にとって意味のある結果となりました。

IGTからのコメント

遺留分侵害額請求では、遺産の中心が不動産である場合、その不動産をいくらと評価するかが結論を大きく左右します。請求する側は高い評価額を、請求される側は低い評価額を主張しがちで、その隔たりが埋まらないまま、感情的な対立も重なって交渉が長期化することが少なくありません。とりわけ、簡易な査定書だけを根拠に評価額が一方的に主張されると、それが適正かどうかを判断する材料が乏しく、請求される側が不利な金額をのまざるを得ない状況に追い込まれることもあります。

不動産業者の査定は、売却を前提とした概算であることが多く、相続における財産評価とは目的も前提も異なります。その数字を遺留分の算定にそのまま用いてよいとは限りません。本件でも相手方は更地評価を前提とした査定書をもとに高額な請求をしてきましたが、実際の不動産は区分所有部分を含む一棟の建物であること、収益部分が遺産でないこと、土地に使用貸借権の負担があることなど、簡易な査定では反映されない事情を抱えていました。これらを丁寧に整理したうえで正式な鑑定を実施し、適正な評価額を客観的な資料として示したことが、過大な請求を見直させ、合理的な金額での解決につながりました。

費用をかけて鑑定を行うかどうかは事案ごとの判断になりますが、評価額の隔たりが大きい場合には、鑑定が解決の決め手になることがあります。単に「高すぎる」と反論するのではなく、客観的な根拠をもって評価額そのものの妥当性を正面から示せたことが、本件を動かす力になりました。

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よくあるご質問(遺留分と不動産評価について)

Q. 相手が示した査定書をもとに高額な遺留分を請求されています。評価額を争えますか?

A. 争える余地が残されていることがあります。不動産業者の査定書は売却を前提とした概算であることが多く、区分所有・収益部分・使用貸借権などの個別事情が反映されていない場合、評価額が実態より高く算定されているおそれがあります。まずは遺産の範囲と物件の個別事情を正確に整理し、必要に応じて不動産鑑定などの客観的な裏づけを検討します。

Q. 不動産鑑定の費用をかけてまで争う意味はありますか?

A. 評価額の隔たりが大きいほど、鑑定によって支払額が適正化される効果は大きくなります。遺留分侵害額は遺産の価額を基礎として算定されるため、評価額の見直しは金額に直接影響します。鑑定費用と見込まれる効果を比較し、費用対効果を見極めたうえでご提案します。仮に交渉が決裂して訴訟になっても、鑑定書は有力な証拠として機能します。

Q. 遺留分を請求されたら、まず何を確認すべきですか?

A. ①相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、または相続開始から10年を過ぎていないか(民法1048条)、②算入される贈与の範囲(民法1044条)、③財産の評価、④支払方法の4点です。受遺者と受贈者がいる場合は受遺者が先に負担し(民法1047条1項)、すぐに支払えない場合は、裁判所に支払期限の猶予(期限の許与)を求めることもできます(同条5項)。

Q. 遺留分の計算では、いつの時点の価格で評価しますか?

A. 相続開始時の時価で評価します(民法1043条1項)。生前に贈与された財産も、贈与時ではなく相続開始時の価格に引き直して評価します(民法1044条2項・904条)。遺産分割(原則として分割時の時価)とは基準時が異なります。

遺留分と不動産評価の問題は、弁護士法人IGT法律事務所へ

遺留分侵害額請求において、不動産の評価は単なる数字の計算ではなく、「不動産の価値をどう定義するか」という法的な交渉です。都心の不動産、収益物件、区分所有、借地・使用貸借などが絡む複雑な案件では、一般民事の知識だけでなく、不動産取引や税務、企業法務の多角的な視点が欠かせません。

弁護士法人IGT法律事務所は、東京都千代田区麹町に拠点を置き、資産家・経営者の皆様の複雑な相続案件に注力して解決にあたっています。

  • 相手方の提示する不動産評価額が高すぎる(または安すぎる)
  • 遺留分を支払うための現金がなく、不動産を売らざるを得ないか不安だ
  • 区分所有・収益物件・借地・使用貸借など、権利関係が複雑化している

このようにお悩みの方は、合意書にサインをする前に、当事務所の初回法律相談をご利用ください。適正な評価額の検討から交渉・調停・訴訟の方針設計、必要に応じた不動産鑑定士との連携まで、ご依頼者様の資産を守るための具体策をご提示します。

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※ 本ページは、最終更新日(2026年9月28日)時点の法令・判例・実務に基づいて作成しています。解決の結果は個別の事情を前提としたもので、同様の結果をお約束するものではありません。

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不動産が絡む遺留分は、評価の作り方と手続の設計で結果が大きく変わります。相手方の主張する金額が適正とは限りません。請求された金額に不安を感じたまま対応を続けるよりも、できるだけ早い段階でご相談いただくことで、評価の妥当性を検討し、適正な金額での解決を目指せる場合があります。まずは状況を整理するところからご相談ください。

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【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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