遺産分割|多数の争点を丁寧に整理し、希望どおり預金2,200万円を獲得

遺産の分け方を話し合う相続人と弁護士のイメージ(遺産分割調停の解決事例)

遺産分割|多数の争点を丁寧に整理し、希望どおり預金2,200万円を獲得

公開日:2026年3月31日/最終更新日:2026年9月28日(事例の要点表とよくあるご質問を追加)

この事例の要点

事件の種類 遺産分割(調停・金沢家庭裁判所)
ご依頼者 長女
相手方 長男
主な遺産 不動産・複数の預貯金・出資金・建物更生共済の満期共済金・自動車
主な争点 葬儀費用・立替金の精算範囲、祖母の持分とされる未登記建物の扱い
当事務所の対応 内容証明への応答がなく調停を申立て。費用を証拠で精査して固定し、未登記建物は別の遺産分割に切り離し
結果 申立てから約7か月で調停成立。ご依頼者は希望どおり預金と自動車を取得し、合計2,200万円を獲得

※個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。

■ 本事例の結論と解決のポイント

結論:母が亡くなった後、長女であるご依頼者様と長男である相手方との間で、遺産の分け方について協議が折り合わず、遺産分割調停を申し立てた事案です。

不動産、複数の預貯金、出資金、満期共済金、自動車など多岐にわたる遺産の範囲整理に加え、葬儀費用等の精算方法や、未登記建物の取扱いという複合的な争点を一つずつ解消した結果、申立てから約7か月で調停が成立し、ご依頼者様はご希望どおり預金および自動車を取得、合計2,200万円の遺産を獲得しました。

解決のポイント:感情的な対立から協議が停滞しているケースでは、「大まかな分け方の合意」があっても、葬儀費用や立替金の算定根拠・未登記建物の帰属といった個別の論点が障害となり、調停が長期化しやすい傾向があります。

本件では、証拠に基づき費用負担の範囲を精査・固定化するとともに、未登記建物の問題を本件調停から切り離して別途解決する道筋を示すことで、争点を可視化・整理し、実行可能な調停条項案の作成へとつなげました。


■ ご相談時の状況とお客様の悩み

母が亡くなり、相続人はご依頼者様(長女)と相手方(長男)の2名となりました。しかし、両者の間には感情的な対立が根強く、遺産分割について当事者だけで十分な話し合いを行うことができない状況が続いていました。

遺産の内容は、不動産・複数の預貯金口座・出資金・建物更生共済満期共済金・自動車と多岐にわたりました。さらに、相手方が主張する葬儀費用や各種立替金をどこまで精算対象に含めるか、また固定資産評価証明書上「被相続人の母(ご依頼者様の祖母)の持分」とされている未登記建物を今回の遺産分割に含めて扱うかどうかも論点となっており、当事者のみで整理することは到底困難な状況でした。

ご依頼者様は、この状況を終局的に解決したいとのご希望を持ち、当事務所にご相談にいらっしゃいました。


■ 弁護士の対応・解決策

内容証明郵便による交渉の試みと、調停の申立て:まず、当事務所がご依頼者様の代理人として相手方に内容証明郵便を送付し、話し合いによる解決を求めました。しかし相手方から一切の応答がなかったため、速やかに金沢家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。

大枠の合意形成と、個別論点の精査:ご依頼者様が預金と自動車を取得し、相手方が不動産その他の遺産を取得するという大枠をベースに協議を進めました。その一方で、相手方が主張する葬儀費用・立替金については、証拠の提出を求めながら費目を一つずつ精査し、ご依頼者様の負担額と対象範囲をあらかじめ固定化することで、後から不利益が拡大しないよう慎重に調整しました。

未登記建物の問題を切り離して整理:「祖母の持分」とされる未登記建物については、今回の調停の対象から切り離し、祖母に係る別の遺産分割協議の中で解決する方向で相手方と合意しました。これにより、本件調停が不必要に複雑化するのを防ぎました。

具体的な条項案の作成:主張書面・調停条項案・遺産目録・代償金計算の基礎資料を一括して作成し、解決内容を客観的かつ具体的な形に整えました。また、被相続人のスマートフォンの帰属やその内部データの取扱い、相続関係書類ファイルの返還時期といった細部の論点についても漏れなく整理し、実際に履行可能な調停条項に落とし込みました。


■ IGTからのコメント

遺産分割では、「誰が何を取得するか」という大枠では意見が一致している場合であっても、葬儀費用・立替金の取扱い、代償金の算定、未登記不動産の帰属といった個別の論点が障壁となり、協議が長期間にわたって停滞してしまうケースが少なくありません。

本件においても、当事者だけでは整理しきれない複数の争点が存在していました。しかし、資料を丁寧に積み重ねながら各論点を明確化・可視化し、具体的な条項案として言語化することで、解決へ向けた道筋をつけることができました。

感情的な対立から相続人同士の話し合いが進まない状況であっても、代理人弁護士が関与することで、終局的な解決が実現できることがあります。遺産分割をめぐる話し合いに行き詰まりを感じている場合には、できるだけ早い段階で専門家にご相談されることをお勧めします。

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■【FAQ】遺産分割調停に関するよくある質問

Q. 相手方が話し合いに応じてくれません。遺産分割調停を申し立てるべきでしょうか?

A. 相手方が交渉に応じない場合や、感情的な対立で話し合いが進まない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申立てが有効です。申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。調停でも合意できなければ、審判の手続に移ります。

Q. 相手方が「葬儀費用を遺産から差し引くべきだ」と主張しています。そのまま認める必要がありますか?

A. 葬儀費用は被相続人の死亡後に生じる費用で、当然に遺産から差し引かれるものではなく、遺産分割の中で精算するには相続人全員の合意が必要です。相手方から請求があれば、領収書や明細書の提示を求め、費目を一つずつ確認することが重要です。

Q. 親族が所有していた未登記の建物が、遺産に含まれるのか分かりません。どうすればよいですか?

A. 未登記建物の帰属は、固定資産評価証明書の記載だけでは確定できず、建築の経緯や固定資産税の負担者、居住の実態などを調べて判断します。本件のように、実質的に別の人の遺産と考えられる場合は、今回の遺産分割から切り離して別に解決する方法が有効なこともあります。

Q. 被相続人の預貯金も、遺産分割の対象になりますか?

A. なります。預貯金は、遺産分割の対象となります(最高裁平成28年12月19日決定)。遺産分割の前でも、一定の範囲(預金額の3分の1に法定相続分を掛けた額、1つの金融機関につき150万円まで)であれば、各相続人が単独で払戻しを受けられる制度があります(民法909条の2)。

(※法律上の見解は一般的な事例に基づくものであり、具体的な状況により結論は異なります。)

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※ 本ページは、最終更新日(2026年9月28日)時点の法令・判例・実務に基づいて作成しています。解決の結果は個別の事情を前提としたもので、同様の結果をお約束するものではありません。

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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