競売回避|サービサーの交渉戦略を読み解き、解決金の支払により自宅を守った事例
公開日:2026年5月13日/最終更新日:2026年9月28日(事例の要点表とよくあるご質問を追加)
この事例の要点
| 事件の種類 | 不動産競売の回避(債権者との任意交渉) |
|---|---|
| ご依頼者 | 自宅不動産の共有持分に競売を申し立てられた債務者 |
| 相手方 | 債権者(サービサー) |
| ご相談時の状況 | 競売開始決定の後、執行官による現況調査と評価人による評価が進んでいた |
| 主な争点 | 解決金の金額(好立地・好市況で競売でも高値の落札が見込まれ、債権者は、差引納付による共有持分の自己競落と、その後の共有物分割・市場での売却を通じて、市場価格に近い回収を目指しているとみられた) |
| 当事務所の対応 | 債権者の回収スキームにかかる時間・費用・不確実性を整理し、「いま受け取れる解決金」と「将来の獲得見込み額の現在価値」を比べる資料を示して交渉 |
| 結果 | 解決金の支払を条件に、残債務全額の免除と競売申立ての取下げを内容とする和解が成立し、自宅を維持 |
※個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。
■ 本事例の結論と解決のポイント
結論:ご依頼者様(債務者)が共有持分を持つ自宅不動産について、債権者(サービサー)からその共有持分の競売の申立てを受けた事案です。
競売開始決定がなされ、執行官による現況調査・評価人による評価の手続も進行する局面にあり、そのまま放置すれば入札・売却に至ることが避けられない状況でした。
当事務所では、競売手続の進行に受動的に対応するのではなく、債権者との任意交渉を早期に開始し、相応の解決金を支払うことを条件として、残債務全額の免除および競売申立ての取下げを実現しました。
結果として、ご依頼者様は自宅を失うことなく、残債務からも解放され、生活基盤を維持することができました。
解決のポイント
本件は、「競売になれば安く落札されるから債権者にとって不利」という通常パターンとは状況を異にしていました。
対象不動産は好立地に所在し不動産市況も好調であったため、競売段階でも比較的高値での落札が見込まれる物件でした。
また、債権者はサービサーであり、差引納付による自己競落→共有物分割→市場での売却という多段階のスキームを通じて市場価格に近い水準での回収を「真の獲得目標」として描いていることが見て取れました。
こうした状況では、単に「競売は安いから任意で支払う方が得です」と主張するだけでは、債権者を動かすことはできません。
本件の解決のカギは、債権者が描く回収スキームを正確に読み解いたうえで、そのスキームを完成させるまでに要する時間・費用・不確実性を一つひとつ整理し、「いま確実に受領できる解決金」と「将来時点で見込まれる最終獲得額(現在価値)」とを客観的に比較できる交渉の枠組みを設定したことにあります。
対象不動産の市場価格を多角的なアプローチで把握し、提示する解決金額が債権者にとっても経済合理性のある水準であることを根拠とともに示した結果、無理のない金額での合意につながりました。
■ ご相談時の状況とお客様のお悩み
ご依頼者様は、長年ご家族とともに暮らしてきた自宅不動産の共有持分を持たれていましたが、過去に負担した債務をめぐって債権者との関係が悪化し、最終的にはその共有持分に対する競売の申立てを受けるに至りました。
ご相談の段階では、すでに裁判所から競売開始決定正本が送達され、執行官による現況調査や評価人による評価が進行する局面にありました。本件は好立地・好市況の物件であり、競売段階でも相応に高値での落札が想定される状況でした。加えて問題だったのは、債権者がサービサーであり、差引納付による自己競落で共有持分を取得したうえで、共有物分割・市場売却を通じて市場価格に近い回収を目指す可能性が高かった点です。仮にそのスキームが進行すれば、ご依頼者様は自宅を失うだけでなく、長期間にわたって対象不動産の処遇をめぐる紛争に巻き込まれることも予想されました。
ご依頼者様にとって、本件不動産は単なる「資産」ではなく、ご家族の生活の本拠であり、長年にわたって積み重ねてきた大切な住まいでした。「何とか競売を止めて自宅を残したい」「家族の住環境を変えずに済む方法はないか」というお気持ちは切実でした。一方で、債務全額を一括で弁済できるだけの資力はなく、「そもそも交渉の余地があるのか」「どの程度の金額を提示すれば応じてもらえるのか」「相手の本当の狙いはどこにあるのか」という強い不安をお持ちでした。
また、競売手続は段階的に進行し、対応が遅れるほど取り得る選択肢は狭まっていきます。「時間との戦い」であることをご認識のうえで、ご家族とともに当事務所にご相談にいらっしゃいました。
■ 弁護士の対応・解決策
債権者(サービサー)の回収スキームの分析と交渉戦略の構築:
まず、本件で見据えるべきは単純な「競売による落札価額」ではないと判断しました。対象不動産は好立地・好市況であり、通常の「競売は市場価格より下回る」という前提が当てはまりにくく、競売段階でも比較的高水準の落札が想定されました。
加えて、債権者であるサービサーの属性・行動様式を踏まえれば、差引納付の方法で本件の共有持分を自己競落し、その後、共有物分割を経て市場で売却することにより市場価格に近い回収を実現するという、計画的な回収スキームを描いている蓋然性が高いと判断されました。この「真の獲得目標」を見定めたうえで、スキームを完成させるまでに要する時間・費用・不確実性を一つひとつ洗い出しました。
競売手続の期間、競合入札者が現れるリスク、共有物分割に要する期間と費用、市場売却の諸経費、市況変動による価格ブレなど、各段階のリスクを総合的に整理したうえで、債権者にとっての「目論見完成時の最終獲得額」を現在価値に割り引き、「いま確実に受領できる解決金」と比較できる交渉の枠組みを構築しました。
対象不動産の適正評価の確立:
価格交渉で重要になるのは、対象不動産の客観的な評価です。当事務所では、固定資産税評価額・路線価・近隣の取引事例・収益還元的な観点・競売評価書の内容など、複数の評価アプローチを多角的に検討し、当該物件の市場価格レンジを整理しました。債権者の獲得目標が「市場価格に近い水準」である以上、獲得目標を高めに想定したうえでスキーム完成までの時間・費用・不確実性を控除した「現在価値ベースの目論見額」を算定し、これを基準としてこちらが提示する解決金額の合理性を組み立てました。
こうした評価ロジックを根拠資料とともに体系的に整理・提示したことで、債権者側にも「現時点で任意の解決金を受領するほうが、スキームを追求するよりトータルで経済的合理性が高い」と判断する材料を与えることができました。
債権者との粘り強い任意交渉:
当初、債権者は強気の姿勢を崩さず、任意解決の前提として提示してきた金額も極めて高い水準のものでした。
これに対し当事務所は、スキームを完成させるまでに要する時間・費用・不確実性を体系的に整理したシミュレーションを提示し、「スキーム完成を待つことに伴う機会費用・遂行リスク」と「いま確実な解決金を受領することのメリット」を客観的な数値とロジックで対比しました。
単に「もっと譲歩してほしい」と主張するのではなく、債権者自身の経済合理性に照らして任意解決の方が合理的であるとの判断を引き出すという手法を貫きました。
また、債権者側の意思決定ラインの存在も意識し、現場担当者だけでなく上位の決裁者の判断にも耐え得る説明資料を整えました。複数回にわたる協議の結果、最終的にはご依頼者様が支払可能な範囲内で双方が納得できる解決金額に着地し、残債務全額の免除および競売申立ての取下げを内容とする和解合意が成立しました。
和解契約書の作成と履行管理:
合意内容については、解決金の支払時期・方法、債務免除条項、競売申立て取下げの時期・方法、清算条項、守秘条項などを盛り込んだ和解契約書として整備しました。
特に、解決金の支払と競売取下げが確実に連動するよう、支払と取下げの順序・タイミング・未履行時の取扱いを慎重に設計し、ご依頼者様が一方的に不利益を負うことのない条項構成としました。
抵当権等の登記抹消手続との関係、配当要求債権者等の処理についても漏れなく整理しました。
合意成立後も、解決金の入金確認・取下書提出・執行手続の終結確認・関連登記の処理に至るまで当事務所が進捗を一元的に管理し、伴走型のサポートを行いました。
■ IGTからのコメント
競売の申立てを受けた段階で、「もう自宅は失われてしまうのではないか」と諦めてしまう方は少なくありません。しかし、債権者にとっても、競売手続そのものが「最終ゴール」であるとは限りません。
本件のように、好立地・好市況の物件で、かつ債権者がサービサーである場合、その「真の獲得目標」は差引納付による自己競落・共有物分割・市場売却という多段階スキームを通じた市場価格水準での回収にあり、競売評価書や買受可能価額をはるかに超える水準に位置していることがあります。このような場面では、「競売だと安く落札されるから債権者は損をする」という一般的な議論だけでは、債権者を任意解決に動かすことはできません。
もっとも、債権者の獲得目標が高水準であるほど、それを実現するまでに要する時間・費用・不確実性も比例して大きくなります。本件で特に重要だったのは、価格交渉を「不動産の値踏み」としてではなく、「債権者が描く回収スキーム全体のシミュレーション比較」として組み立てた点です。債権者自身の経済合理性に照らして任意解決の方が合理的であるとの判断を引き出す——それが本件解決の本質です。
弁護士法人IGT法律事務所では、不動産の評価と債権法務の双方を扱う弁護士が、債権者の立場・経済合理性・回収戦略の構造を踏まえて交渉を組み立て、大切な自宅と生活基盤を守るための解決をご提案しています。競売の申立てを受けてしまった方、手続の進行が迫っている方も、決して諦めず、まずはご相談ください。
不動産・自宅をめぐる競売・債務トラブル、まずは専門家にご相談ください
「競売申立てを受けてしまった」「どんな交渉の余地があるか分からない」など、切迫した状況でのご相談も承ります。
弁護士法人IGT法律事務所では、初回60分の無料相談を実施しております。弁護士が、ご依頼者様の状況に応じた解決策をご提案します。
ご相談内容がまとまっていなくても構いません。
不動産・非上場株式の複雑な相続トラブル、
まずは適正な「評価」から始めませんか?
「提示された代償金に納得がいかない」「競売の申立てを受けた」など、不公平な権利関係でお悩みの方は、一人で抱え込まず専門家にご相談ください。
弁護士法人IGT法律事務所では、初回60分の無料相談を実施しております。相続と財産評価の実務を扱う弁護士が、解決策を一緒に検討します。
ご相談内容がまとまっていなくても構いません
■ 【FAQ】競売・任意交渉に関するよくあるご質問
Q. 競売の申立てを受けましたが、まだ間に合いますか?
A. 競売手続は、競売開始決定の後、執行官による現況調査(民事執行法57条)、評価人による評価(同法58条)、売却基準価額の決定(同法60条)、入札の順に進みます。どの段階でも、債権者と任意の交渉を始めることはできます。ただし、入札で買受けの申出があった後に債権者が申立てを取り下げるには、最高価買受申出人などの同意が必要になります(同法76条1項)。時間が経つほど取れる手段は狭まるため、早めにご相談いただくことが大切です。
Q. サービサーが相手の場合でも、任意の交渉はできますか?
A. できます。サービサーは、法務大臣の許可を受けて債権の管理・回収を行う会社で(債権管理回収業に関する特別措置法)、回収の方針や社内の決裁の仕組みに特有の傾向があります。本件のように、市場価格に近い水準での回収を目指しているとみられる場合でも、その回収方法にかかる時間・費用・不確実性を整理して示すことで、任意の解決に応じてもらえることがあります。
Q. 解決金の金額はどのくらいになりますか?
A. 対象不動産の市場価格、競売での落札見込み額、債権者が目指す回収額、回収までにかかる時間・費用・リスクなど、個別の事情によって異なり、単純に「残債務の何割」とは言えません。債権者にとっても経済的に合理的な水準であることを、根拠とともに示すことが重要です。本件では、ご依頼者様が支払える範囲の解決金で、残債務全額の免除と競売申立ての取下げを内容とする和解が成立しました。
Q. 「競売は安く落札されるから、債権者は任意解決に応じるはず」と聞きましたが、本当ですか?
A. 落札額が市場価格を大きく下回ると見込まれる場合には、この考え方が当てはまることがあります。しかし、好立地・好市況の物件では競売でも高値での落札が見込まれるため、前提が当てはまらないことがあります。また、債権者自身が買受人となる場合には、配当を受けるべき額を差し引いて代金を納付する方法(差引納付)も認められています(民事執行法78条4項)。債権者の立場や回収方法を、事案ごとに分析することが欠かせません。
Q. 債権者と合意した後、競売手続はどうなりますか?
A. 合意の内容に従って債権者が競売の申立てを取り下げることで、手続は終わります。取下げが確実に行われるよう、解決金の支払時期と取下げの時期・順序、支払ができなかった場合の扱いなどを和解契約書で定めておくことが大切です。本件でも、債務免除条項や清算条項などを盛り込んだ和解契約書を作成し、解決金の入金確認、取下書の提出、関連登記の処理まで進捗を管理しました。
Q. 自宅の共有持分だけが競売にかけられた場合、どうなりますか?
A. 共有持分も、単独で差押え・競売の対象になります。競売で共有持分を買い受けた人は、他の共有者と共有関係になり、その後、共有物分割請求(民法258条)によって共有状態の解消を求めることがあります。本件でも、債権者が差引納付によって共有持分を自己競落し、その後の共有物分割と市場での売却を通じて回収を図る可能性が高いと考えられたため、その時間・費用・不確実性を踏まえて任意の解決を提案しました。
(※法律上の見解は一般的な事例に基づくものであり、具体的な状況により結論は異なります。詳しくは弁護士法人IGT法律事務所の初回無料相談をご利用ください。)
関連ページのご案内
※ 本ページは、最終更新日(2026年9月28日)時点の法令・判例・実務に基づいて作成しています。解決の結果は個別の事情を前提としたもので、同様の結果をお約束するものではありません。
【この記事の執筆者】
執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)
弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
▶ 弁護士小林洋介のプロフィール詳細 / ▶ 初回60分無料相談のご予約はこちら
ご相談はこちらへ
事務所概要(本サイトの運営者)
| サイト名 | 弁護士法人IGT法律事務所の相続相談サイト |
|---|---|
| 事務所名 | 弁護士法人IGT法律事務所 |
| 住所 | 〒102-0083 東京都千代田区麹町4-3-3新麹町ビル6階 |
| TEL | 03-6265-6770(予約専用) |
| FAX | 03-6265-4994 |
| URL | https://souzokusoudan-bengoshi.com/ |
| コーポレートサイト | 弁護士法人IGT法律事務所 公式サイト(企業法務・M&A・事業再生などのご相談も承ります) |
※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。



