遺留分|不動産評価額を交渉して、遺留分侵害額の支払を400万円減額

遺留分侵害額請求の解決事例:請求された側でセットバックの減価を主張し、400万円を減額

遺留分|不動産評価額を交渉して、遺留分侵害額の支払を400万円減額

公開日:2025年10月31日/最終更新日:2026年9月28日(事例の要点表とよくあるご質問を追加)

この事例の要点

事件の種類 遺留分侵害額請求(請求された側・交渉)
ご依頼者 遺言で実家の不動産を相続した子
相手方 兄(代理人弁護士あり)
主な遺産 被相続人と同居していた実家の不動産
主な争点 セットバックによる減価の有無、相手方が受けた生前贈与(特別受益)
当事務所の対応 一般的な査定書に反映されていない減価要因と、相手方への生前贈与を主張して交渉
結果 調停・訴訟に至らず、当初の請求額から約400万円を減額して合意

※個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。

 

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事案のサマリー

  • ご相談者: 遺産(実家の不動産)を相続した方(遺留分を請求された側)
  • 相手方: 法定相続人である兄(代理人弁護士あり)
  • 主な遺産: 被相続人と同居していた実家の不動産
  • 主な争点: 1. 不動産の適正な評価額(セットバックによる減価要因の有無) 2. 相手方が受けていた生前贈与(特別受益)の有無
  • 結果: 調停・訴訟に至らず、相手方の当初請求額から約400万円の減額で交渉妥結

依頼前の状況とご相談内容

ご相談者様のお母様(被相続人)が遺言を遺されており、ご相談者様と同居していた不動産を相続させるという内容でした。 しかし、法定相続人であるお兄様から遺留分侵害額請求を受け、当事務所へご相談に来られました。いわゆる「遺留分侵害額を請求された側」の事件です。 できるだけ相手方に対する支払いを適正な範囲に抑えたい(減らしたい)というご依頼でした。

弁護士の対応と解決へのアプローチ

相手方にはすでに代理人弁護士が就いており、一般的な不動産査定書をベースに高い評価額で請求をしてきていました。当事務所は以下の2点を軸に反論と交渉を行いました。

争点1:セットバック(私道負担)による不動産評価額の減価要因の主張

被相続人の遺産の大半は、ご相談者様と同居していた不動産でした。立地が良く資産価値が見込める一方、建築基準法上の「セットバック」を余儀なくされ、将来建替え等を行う際に有効面積が登記簿上の面積より狭くなるという問題がありました。

相手方はこの減価要因に気づいておらず、評価額の認識に大きな乖離があったため、当事務所から対象不動産の特殊な事情を丁寧に説明し、理解を求めました。

争点2:相手方への生前贈与(特別受益)の主張

被相続人から相手方(お兄様)に対して、特別受益となる生前贈与が存在する可能性が高い案件でした。そのため、遺留分算定の基礎となる財産からこの特別受益分を考慮するよう併せて主張しました。

解決の結果(約400万円の減額で妥結)

相手方の代理人弁護士と早期にコミュニケーションを取り、対象不動産の減価要因と特別受益について客観的な事実をもとに粘り強く交渉しました。 その結果、法的手続き(調停や訴訟)に移行することなく、当初相手方が主張していた請求額から400万円ほど減額して早期に交渉妥結することができました。

当事務所からのコメント(早期解決に至ったポイント)

遺産の評価額の大半を不動産が占めるケースでは、不動産の「適正な評価」が交渉の鍵を握ります。

本件は、一般的な机上査定では見落とされがちな「セットバックによる有効面積の減少」という不動産特有の事情を早期に把握し、論理的に主張できたことが成功の要因です。 不動産や非上場株式など、評価が分かれやすい財産が含まれる相続においては、それらの算定に精通した弁護士が介入することで、不当な過大請求を防ぐことが可能です。

不動産・非上場株式の複雑な相続トラブル
相手の言い値で合意する前に、まずは適正評価を。

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【解説】遺留分請求において不動産の「評価額」が争点になる理由

遺留分侵害額請求における不動産の評価額とは、原則として「相続開始時(被相続人が亡くなった時)の客観的交換価値(時価)」を基準とします。

しかし、不動産には定価が存在しません。固定資産税評価額や路線価、不動産業者の査定額など複数の基準があり、さらに本件のような「セットバック(私道負担)」「不整形地」「借地権」といった個別事情によって価値は大きく変動します。

請求する側は「できるだけ高い評価額」を、請求される側は「できるだけ低い評価額」を主張するため、実態に即した適正な評価を法的根拠をもって提示できるかが、遺留分交渉において極めて重要となります。

 

FAQ(よくある質問)

Q1. 遺留分を請求されましたが、相手が提示した不動産の査定額が高すぎると感じます。どう反論すべきですか?

A. 遺留分の計算では、不動産を相続開始時の時価で評価します(民法1043条1項)。一般的な査定書には、セットバックや不整形地などの個別の減価要因が反映されていないことがあります。そのまま受け入れず、実態に即した時価を資料で示して再評価を求めることが重要です。

Q2. 相手方(請求者)が過去に親から多額の援助を受けていた場合、支払う遺留分を減らせますか?

A. 減らせる可能性があります。請求者自身が受けた特別受益にあたる贈与は、遺留分侵害額を計算するときに請求者の取り分から差し引かれます(民法1046条2項1号)。なお、相続人に対する贈与は、相続開始前10年以内の特別受益にあたるものが、遺留分を算定する財産にも加えられます(民法1044条1項・3項)。

Q3. セットバックとは何ですか?不動産の評価にどう影響しますか?

A. 幅4m未満の道路に面した土地では、建物を建て替える際に道路の中心線から2mまで敷地を後退させる必要があり(建築基準法42条2項)、その部分には建物を建てられません。実際に使える面積が登記簿の面積より小さくなるため、評価を下げる要因になります。

Q4. 遺留分を請求されても、すぐに支払えない場合はどうなりますか?

A. 分割払いなど支払方法を交渉するほか、裁判所に支払期限の猶予(期限の許与)を求めることもできます(民法1047条5項)。本件は、相手方の代理人と早期に協議し、調停・訴訟に進まずに合意できました。

関連ページのご案内

※ 本ページは、最終更新日(2026年9月28日)時点の法令・判例・実務に基づいて作成しています。解決の結果は個別の事情を前提としたもので、同様の結果をお約束するものではありません。

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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