不動産・非上場株式がある相続は要注意!遺留分侵害額請求で損をしないための弁護士選び

遺留分侵害額請求で損をしないために|不動産・非上場株式がある相続は適正な評価が鍵

不動産・非上場株式がある相続は要注意!遺留分侵害額請求で損をしないための弁護士選び

 

公開日:2025年12月29日/最終更新日:2026年9月27日(よくあるご質問を9問に拡充・関連ページを追加)

「亡くなった父の遺言書を見たら、すべての遺産を長男に譲ると書いてあった」「自分には最低限の遺留分があるはずだが、遺産に含まれる不動産や自社株の価値がわからない」

もしあなたがこのような状況に直面しているなら、この記事はあなたのためのものです。相続において、兄弟姉妹間や親子間で最もトラブルになりやすいのが、この「遺留分」の問題です。特に、遺産の中に現金だけでなく「不動産」や「非上場株式(同族会社の株)」が含まれている場合、問題は一気に複雑化します。

なぜなら、これらの財産は「いくらと評価するか」によって、あなたが受け取れる金額が数百万円、場合によっては数千万円単位で変わってしまうからです。

【本記事のポイント(結論)】

  • 遺留分とは:兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に保障された最低限の遺産取得分です。割合は、直系尊属のみが相続人である場合が3分の1、それ以外の場合が2分の1です(民法1042条)。
  • 法改正のポイント:2019年7月1日以後に開始した相続では、「不動産や株そのもの」を取り戻すのではなく、「侵害された遺留分に相当する金銭」を請求する権利に一本化されています(民法1046条)。それより前に開始した相続には旧法(遺留分減殺請求)が適用されます。
  • 最大の罠(評価額):不動産の価値を「固定資産税評価額」で計算してはいけません。遺留分の算定基礎は原則として「時価(実勢価格)」であり、2〜3倍の差が出ることがあります。テナントビルや一棟アパートなどの収益物件は、この差が最も大きく開く資産です。
  • 非上場株式の罠:相続税の申告書に書かれた株価(財産評価基本通達による評価額)は、遺留分の算定基礎となる民事上の時価とは別のものです。申告書の金額をそのまま前提にすると、請求できた金額を取り逃がします。
  • 期限は二本立て:①相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、②相続開始の時から10年(民法1048条)。さらに、1年内に意思表示をして発生した金銭債権には、その後5年の時効管理が必要です(民法166条1項)。

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本記事では、遺留分侵害額請求の基礎知識と計算方法から、複雑な財産評価のポイント、そして弁護士法人IGT法律事務所の取り組みまでを解説します。

1. 遺留分侵害額請求とは?(法改正による変化)

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に保障された、遺言でも奪うことのできない最低限の取得分です(民法1042条)。割合は、直系尊属のみが相続人である場合が遺産の3分の1、それ以外の場合が2分の1です。

たとえ遺言書に「愛人に全財産を譲る」「長男にすべて相続させる」と書かれていても、あなたは法的に守られた「遺留分」を主張することができます。

「物」を取り戻すのではなく「お金」を請求する権利へ

2019年7月1日施行の改正民法により、遺留分の請求は「金銭の支払を求める権利」に一本化されました。従来の「遺留分減殺請求(げんさいせいきゅう)」から「遺留分侵害額請求(しんがいがくせいきゅう)」へと制度が変わったものです(民法1046条)。

以前は、遺留分を行使すると、不動産や株式そのものを「共有状態」として取り戻すことが原則でした。しかし、これでは不動産が共有になり、売却も活用もできないというトラブルが多発しました。改正により、現在は「侵害された遺留分に相当する金銭」を請求する権利になっています。

ここで必ず確認していただきたいのが、お亡くなりになった日です。新しい制度が適用されるのは2019年(令和元年)7月1日以後に開始した相続に限られます。それより前に亡くなられた方の相続には旧法が適用され、家庭裁判所の手続も「遺留分減殺による物件返還請求調停」という別の手続になります(改正法の経過措置については法務省「相続法の改正」をご参照ください)。

つまり、今の遺留分請求は「遺産の価値を正確に計算し、現金で支払わせる」という、純粋な金銭交渉の場になったのです。だからこそ、「遺産の評価額」が何よりも重要になります。

遺留分の割合と、いくら請求できるかの計算

遺留分の額は「算定基礎財産 × 遺留分の割合」で求めます。割合は、相続人の組み合わせによって次のとおりです(民法1042条)。

相続人 全体の遺留分 各人の遺留分
配偶者のみ 2分の1 配偶者 2分の1
子のみ(1人) 2分の1 子 2分の1
子のみ(2人) 2分の1 子 各4分の1
配偶者+子1人 2分の1 配偶者 4分の1/子 4分の1
配偶者+子2人 2分の1 配偶者 4分の1/子 各8分の1
配偶者+直系尊属 2分の1 配偶者 3分の1/直系尊属 6分の1
配偶者+兄弟姉妹 2分の1 配偶者 2分の1/兄弟姉妹はなし
直系尊属のみ(父母2人) 3分の1 父母 各6分の1
兄弟姉妹のみ なし なし

ここは間違いが多いところです。相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者の遺留分は2分の1です。「全体の遺留分2分の1×配偶者の法定相続分4分の3=8分の3」と計算してしまう誤りをしばしば見かけますが、民法1042条2項は遺留分権利者が複数いるときの配分を定めた規定です。兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者が唯一の遺留分権利者となり、全体の遺留分2分の1をそのまま取得します。

算定基礎財産は、被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額に、算入される贈与の価額を加え、債務の全額を控除して求めます(民法1043条)。そして実際に請求できる金額(遺留分侵害額)は、この遺留分額から、すでに受け取った遺贈や特別受益にあたる贈与、遺産分割で取得すべき遺産の価額を差し引き、承継する相続債務の額を加えて算出します(民法1046条2項)。

計算例|評価方法だけで3,000万円変わるケース

父が亡くなり、相続人は長男と二男の2人。遺言で「全財産を長男に相続させる」とされていた。遺産はテナントビル1棟(固定資産税評価額8,000万円/実勢価格2億円)と預金2,000万円、債務はなし。

二男の遺留分の割合は、2分の1 × 法定相続分2分の1 = 4分の1。

  • 長男の主張(固定資産税評価額を採用):算定基礎財産 1億円 × 4分の1 = 2,500万円
  • 適正な時価(収益還元法による2億円を採用):算定基礎財産 2億2,000万円 × 4分の1 = 5,500万円

同じ遺産・同じ相続人でも、採用する評価方法だけで3,000万円の差が生じます。

2. 【最重要】遺産に「不動産」「非上場株式」がある場合の注意点

遺留分の交渉が難航する原因は、法律論ではなく、ほぼ例外なく「評価額の不一致」です。遺産がすべて「預貯金」であれば、計算は簡単です。通帳の残高を見れば明らかだからです。しかし、日本の相続において資産の多くを占めるのは「不動産」であり、事業主の場合は「非上場株式」です。これらが含まれる場合、遺留分請求は一気にプロフェッショナルの領域になります。

① 不動産評価の落とし穴:相手方は「安く」提示してくる

遺留分を請求される側は、支払う現金を減らすため、最も低い評価額である「固定資産税評価額」を持ち出してきます。しかし、遺留分の算定基礎となるべき財産額は、原則として相続開始時の「時価(実勢価格)」です。

都心部の不動産などでは、固定資産税評価額と実勢価格(実際に売れる金額)との間に、2倍〜3倍以上の開きがあることも珍しくありません。

  • 相手方の主張: 固定資産税評価額 2,000万円
  • 本来の時価: 実勢価格 5,000万円

この場合、もし相手の主張を鵜呑みにしてしまうと、遺産総額の前提が3,000万円も低く見積もられ、結果としてあなたの手元に入る遺留分も大幅に減ってしまいます。

不動産の鑑定評価では、原価法・取引事例比較法・収益還元法という3つの手法が使い分けられます(国土交通省「不動産鑑定評価基準」)。どの手法を採用し、どのように補正するかによって結論が動くため、不動産業者の簡易査定だけでなく、場合によっては不動産鑑定士による鑑定が必要になるなど、不動産の「時価」を巡る攻防は非常に専門的です。公示価格・路線価・固定資産税評価額などの違いは、不動産の相続のページの比較表で整理しています。

② 非上場株式の難しさ:ブラックボックス化しやすい資産

ここで最も多い誤解は、「相続税の申告書に書かれた株価が、そのまま遺留分の計算に使える」というものです。これは違います。

相続税の申告では、財産評価基本通達に基づく評価額(類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式)を用います。これは課税のためのルールであり、しかも配当還元方式は同族株主以外の少数株主に適用される特例的な方式です。

これに対して、遺留分の算定基礎となるのは民事上の時価です。実務では、DCF法・修正純資産法・収益還元法・類似会社比準法などのうち、どの手法を採るかが争点になります。会社に多額の内部留保(利益の蓄積)や含み益のある不動産があれば、通達による評価額よりも本来の株価が大幅に高くなることは珍しくありません。

つまり、税理士が相続税申告のために算出した株価をそのまま前提にしてしまうと、本来請求できたはずの金額を取り逃がすことになります。会社の財務諸表(決算書)を正確に読み解き、適切な評価方式を主張できなければ、正当な遺留分を回収することは難しくなります。非上場株式の評価と会社への情報開示請求の方法は、非上場株式の相続のページで詳しく解説しています。

③ 収益不動産(テナントビル・一棟アパート・区分マンション)は差が最も開く

遺産にテナントビルや一棟アパートなどの収益物件が含まれる場合、評価額の開きは自宅よりもさらに大きくなります。賃料収入という「収益」があるため、収益還元法によって評価すると、固定資産税評価額や相続税路線価との差が拡大するからです。

実際の交渉では、次のような対立になります。

立場 主張しやすい評価 狙い
遺留分を請求される側(物件を取得した側) 固定資産税評価額・相続税路線価 支払う金額を抑える
遺留分を請求する側 収益還元法(直接還元法・DCF法)・取引事例比較法 実際の収益力を反映させる

収益還元法では、年間の純収益を還元利回り(キャップレート)で割り戻して価格を求めます。したがって、還元利回りをいくらに設定するか、純収益をどう見るかが勝負どころになります。具体的には次の点が争いになります。

  • 空室率と稼働率:相続開始時点の空室をどこまで織り込むか。一時的な空室を恒常的なものとして扱われると、評価が不当に下がります。
  • サブリース・定期借家:サブリース契約による賃料が相場より低い場合、それを前提に評価すべきかどうか。
  • 大規模修繕の未実施:修繕積立の不足や近い将来の修繕費を、どの程度減価要因として見るか。
  • テナントの属性と契約残存期間:優良テナントの長期契約は収益の安定性を高め、評価を押し上げる要素になります。

また、相続開始後に発生した賃料は、遺留分の算定基礎財産には含まれません。算定の基礎となるのは相続開始時に存在した財産だからです(民法1043条)。もっとも、その賃料を誰が取得すべきかは別途の問題として残ります。収益物件が絡む事案では、「算定基礎財産の評価」と「相続開始後の賃料の清算」を分けて整理しないと、交渉が噛み合いません。

相手の提示額が「固定資産税評価額」なら、それは適正額ではありません。

評価方法をひとつ変えるだけで、受け取れる金額は数百万円から数千万円動きます。いったん合意書に署名してしまうと、後から評価をやり直すことは極めて困難です。合意する前に、一度ご相談ください。

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3. 弁護士法人IGT法律事務所の遺留分事件への取り組み

遺留分侵害額請求は、単に「請求通知を送れば終わり」ではありません。「財産評価」という数字の戦いであり、「交渉」という心理戦です。当事務所では、次の3点を重視して遺留分事件に取り組んでいます。

理由1:適正な「時価」を算出する専門家ネットワークと評価ノウハウ

当事務所の最大の特徴は、「不動産と非上場株式の評価に強い」という点です。私たちは、提携している不動産鑑定士や税理士・公認会計士と連携し、相手方が提示してくる不当に低い評価額を鵜呑みにしません。

  • 路線価や固定資産税評価額ではなく、各種補正率や市場動向を加味した「実勢価格」を算出。収益物件については、還元利回り・空室率・修繕負担まで踏み込んで検証します。
  • 非上場株式においては、直近の決算書だけでなく過去の推移や保有資産を精査し、会社の実態に即した株価を算定。

「少しでも高く評価して、遺留分を最大化したい」という請求側のニーズに対し、論理的かつ客観的なデータを用いて、裁判所でも通用するレベルの反論を構築します。逆に請求を受けた側であれば、同じ手法で「不当に高い評価」を崩します。

理由2:感情的な対立を抑制し、最短での解決を目指す交渉力

遺留分を請求するということは、多くの場合、親族間での争いです。当事者同士で話し合うと、過去の確執が再燃し、「絶対に払わない」「顔も見たくない」と泥沼化しがちです。

弁護士法人IGT法律事務所が代理人として間に入ることで、感情的な対立を物理的に遮断します。私たちは、法的根拠に基づいたドライかつ冷静な交渉を行います。相手方に対しても、「裁判になればこれだけのコストと時間がかかり、結果的に支払う額が増える可能性が高い」というリスクを的確に説明し、早期の任意交渉での解決(和解)を目指します。

理由3:豊富な解決実績に基づく、見通しの正確さと戦略

当ウェブサイトの解決事例をご覧いただければお分かりのとおり、当事務所は多数の遺留分侵害額請求を解決に導いてきました。「このケースなら、最終的にいくらくらい回収できるか」「裁判までやるべきか、交渉でまとめるべきか」という解決の見通し(着地点)を、初期段階で精度高く予測できることが強みです。

無理な裁判をお勧めして弁護士費用を無駄にさせることはありません。依頼者様の経済的利益(手元に残るお金)を最大化することを最優先に、最適な戦略を提案します。

実際の遺留分トラブルは、どのように解決されるのでしょうか?

遺留分の計算式はシンプルですが、実際の遺産に「不動産」や「非上場株式(自社株)」が含まれる場合、その評価額をめぐって相手方と激しく対立するケースが少なくありません。ご自身の状況と似たケースがどのように解決し、適正な金額を獲得できたのか、当事務所の実際の解決実績をご覧ください。

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あなたのケースで、いくら請求できるのか。
初回相談で、金額の目線と期限の残りをお伝えします。

「遺言書はあるが遺産の中身がわからない」「決算書が手に入らない」という段階でも構いません。ご依頼前には必ず、費用の見積りと回収できる見込み額のシミュレーションをお示しし、費用倒れのリスクが高い場合は正直にお伝えします。その場での契約は求めません。

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4. 遺留分侵害額請求の流れと期限

遺留分の請求には期限があり、しかも二段構えの管理が必要です。迅速な行動が必要なので、まずは期限からご確認ください。

① 時効は「知ってから1年」

遺留分侵害額請求権には、非常に短い期間制限があります。正確には、次のいずれかが経過すると権利は消滅します(民法1048条)。

  • ①相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年
  • ②相続開始の時から10年(知らなかった場合でも進行します)

まだ話し合いの途中だからといって安心していてはいけません。1年を経過する前に、必ず内容証明郵便などで「請求の意思表示」を行う必要があります。

そして、見落とされがちなのがその先です。1年内に意思表示をすると、遺留分侵害額に相当する金銭債権が発生します。この金銭債権それ自体は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で時効消滅します(民法166条1項)。つまり実務は、「1年内に意思表示を済ませ、その後は5年で時効管理する」という二段構えになります。「1年以内に通知を出したから、あとはいつでも大丈夫」ではありません。

② 具体的な手続きのステップ

  1. ご相談・調査:遺言書の確認、相続人の確定、遺産(不動産・非上場株式・預貯金・生前贈与)の調査を行い、評価方針を決めます。
  2. 意思表示(内容証明郵便):1年の期間内に、相手方に請求の通知を送ります。
  3. 交渉:遺産の評価額や支払い方法(一括か分割かなど)について交渉します。
  4. 調停:話し合いでまとまらない場合、相手方の住所地の家庭裁判所(または当事者が合意で定める家庭裁判所)に遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。
  5. 訴訟・強制執行:調停でも決着しなければ訴訟へ移行し、判決後は必要に応じて強制執行を行います。

ここは特に注意してください。裁判所も明記しているとおり、「家庭裁判所の調停を申し立てただけでは相手方に対する意思表示にはなりません」。調停の申立てとは別に、内容証明郵便等によって意思表示を行う必要があります(裁判所「遺留分侵害額の請求調停」)。「とりあえず調停を申し立てたから期限は大丈夫」と考えて1年を過ごしてしまうと、権利そのものを失います。

当事務所にご依頼いただければ、このすべてのプロセスを弁護士が代行します。

遺留分事件の解決事例(請求する側・請求される側)

弁護士法人IGT法律事務所では、税理士や不動産鑑定士と連携した「適正な遺産評価」と、粘り強い交渉力により、数千万円規模の遺留分獲得や、不当な請求の減額に成功してまいりました。請求する側・請求される側のどちらの立場でも実績があります。

▶ 当事務所の遺留分トラブル解決実績一覧はこちら

5. よくあるご質問(FAQ)

遺留分侵害額請求に関して、当事務所に多く寄せられるご質問にお答えします。

Q1. 相手がお金がないと言って支払いに応じません。どうすればいいですか?

A. 相手方に手元現金がない場合でも、回収の方法はあります。相手が相続した不動産を売却させたり、場合によっては相手方の給与や預金などの財産を差し押さえたりすることが可能です。

また、支払う側が資金を用意できない場合には、当事者間の合意で分割払いとする方法のほか、裁判所が支払期限を猶予する制度が使われることもあります。これは「期限の許与」といい、受遺者・受贈者(支払う側)の請求により、裁判所が支払の全部または一部について相当の期限を許与できるものです(民法1047条5項)。当事者間で分割払いを合意すること自体に、裁判所の許可は必要ありません。

いずれにしても、相手方の資産と支払能力の調査、担保や支払期限の設計が回収の決め手になります。諦めずにご相談ください。

Q2. 生前に兄だけが多額の資金援助を受けていました。これは考慮されますか?

A. はい、考慮されます。「特別受益(とくべつじゅえき)」として、生前の贈与を算定基礎財産に持ち戻して計算できる場合があります。

対象となる期間は、贈与の相手方によって次のように異なります(民法1044条)。

  • 相続人に対する贈与:相続開始前の10年間(婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与に限る)
  • 相続人以外(第三者)に対する贈与:相続開始前の1年間
  • 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与:期間の制限なし

つまり、10年より前の贈与であっても、「害意」を立証できれば算入できる場合があります。ここは請求する側にとって大きな武器になりますが、その分、証拠集めと法的な主張の組み立てが結果を左右します。

Q3. 弁護士費用で赤字になりませんか?

A. 当事務所では、ご依頼前に必ず費用の見積もりと、回収できる見込み額(経済的利益)のシミュレーションをご提示します。費用倒れになるリスクが高いと判断される場合は、正直にその旨をお伝えします。納得いただいた上で契約となりますので、ご安心ください。

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Q4. 亡くなった親の会社(非上場株式)の価値が全くわかりません。

A. ご安心ください。会社の決算書(過去3期分程度)が入手できれば、概算の評価額を算出することが可能です。相手方が資料開示に応じない場合でも、株主の権利として計算書類の閲覧(株式数の要件なし)や、議決権等の3%以上を持つ場合は会計帳簿の閲覧謄写(会社法433条1項)を請求するなどの法的手段を用いて調査することができます。遺産分割前の株式で権利を行使するには、原則として権利行使者を定めて会社に通知する必要があります(会社法106条)。

なお、相続税の申告書に記載された株価は財産評価基本通達に基づく評価額であり、遺留分の算定基礎となる民事上の時価とは別のものです。申告書の金額をそのまま前提にすると請求できる金額を取り逃がすおそれがあるため、まず評価方法の検討から着手します。

Q5. 遺留分を請求された側です。まず何を確認すればよいですか?

A. 次の4点を確認します。①期間:相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年、または相続開始から10年を過ぎていないか(民法1048条)。②算入される贈与の範囲:相続人に対する贈与は相続開始前10年以内の特別受益にあたるもの、第三者に対する贈与は1年以内のものが原則です(民法1044条)。③財産の評価:相手方が不動産や株式を高く評価していないか。④負担の順序と支払方法:受遺者と受贈者がいる場合は受遺者が先に負担し、贈与が複数あるときは新しい贈与から負担します(民法1047条1項)。すぐに支払えない場合は、裁判所に支払期限の猶予(期限の許与)を求めることもできます(同条5項)。

Q6. 父の生命保険金を兄が受け取りました。遺留分の計算に含まれますか?

A. 死亡保険金は受取人の固有の権利とされ、原則として遺留分の算定基礎財産には含まれません(最高裁平成14年11月5日判決)。ただし、遺産分割の事案では、保険金の額や遺産総額との比率などから相続人間の不公平が著しい「特段の事情」がある場合に、特別受益に準じて持戻しの対象とした決定があります(最高裁平成16年10月29日決定)。遺留分でも同じ考え方で算入を主張することがあるため、保険金の額が遺産に比べて大きい場合はご相談ください。

Q7. 遺言は無効だと考えています。遺留分の請求はどうすればよいですか?

A. 遺言の無効を主張する場合でも、遺留分侵害額請求の意思表示は1年の期間内にしておくべきです。遺言の無効を争っていても、原則として1年の期間は進むと考えられているためです(最高裁昭和57年11月12日判決・旧法の遺留分減殺請求の事案)。実務では、遺言の無効を主張しつつ、予備的に遺留分侵害額を請求する旨を内容証明郵便で通知しておきます。

Q8. 生前に「遺留分を放棄する」という念書を書かされました。有効ですか?

A. 相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り効力を生じます(民法1049条1項)。許可を受けていない念書や口約束だけでは、相続開始前の放棄としての効力はありません。相続開始後であれば、家庭裁判所の許可なく放棄できます。なお、共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分は増えません(同条2項)。遺留分の放棄は相続放棄とは別の制度で、遺留分を放棄しても相続人の地位は失いません。

Q9. 遺留分の計算では、不動産や株式をいつの時点の価格で評価しますか?

A. 相続開始時(亡くなった時点)の時価で評価します(民法1043条1項)。生前に贈与された不動産も、贈与時ではなく相続開始時の価格に引き直して評価します(民法1044条2項・904条)。金銭の贈与は、贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算します(最高裁昭和51年3月18日判決)。遺産分割(原則として分割時の時価)とは基準時が異なるため、遺産分割と遺留分の問題が並行する事案では注意が必要です。価格指標ごとの違いは不動産の相続のページの比較表で整理しています。

用語の整理

遺留分
兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された、遺言でも奪えない最低限の遺産取得分。全体の割合は、直系尊属のみが相続人の場合が3分の1、それ以外は2分の1(民法1042条)。
遺留分侵害額請求
遺留分を侵害された相続人が、受遺者・受贈者に対して侵害額に相当する金銭の支払を請求する権利(民法1046条)。2019年7月1日以後に開始した相続に適用される。
算定基礎財産(遺留分を算定するための財産の価額)
相続開始時に被相続人が有していた財産の価額に、算入される贈与の価額を加え、債務の全額を控除した額(民法1043条)。評価の基準時は相続開始時。
特別受益
相続人が被相続人から受けた遺贈や、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としての贈与による利益(民法903条)。遺留分の算定では、相続人に対する特別受益にあたる贈与は相続開始前10年間、相続人以外の第三者に対する贈与は1年間が算入対象となり、害意ある贈与には期間の制限がない(民法1044条)。
持戻し免除の意思表示
被相続人が生前贈与について持戻しを免除する意思を表示すること。遺産分割における相続分の算定では効力を持つが、遺留分の算定には及ばないと解されている。遺産分割と遺留分で扱いが異なる点に注意を要する。
期限の許与
支払義務を負う受遺者・受贈者の請求により、裁判所が支払の全部または一部について相当の期限を許与する制度(民法1047条5項)。当事者間の分割払いの合意とは別のもの。
収益還元法
不動産が将来生み出す純収益を還元利回り(キャップレート)で割り戻して価格を求める鑑定手法。テナントビル・一棟アパート等の収益物件では、この手法による価格と固定資産税評価額との差が大きく開く。

6. 【まとめ】正当な権利を取り戻すために、まずは無料相談へ

遺留分は、法律があなたに保障した大切な権利です。「兄弟と揉めたくないから」と遠慮したり、「計算が難しそうだから」と諦めたりする必要はありません。

特に、不動産や非上場株式が含まれる相続では、「誰に相談するか」が結果を大きく左右します。相手方の提示する低い評価額をそのまま受け入れ、本来受け取れるはずだった数百万円、数千万円を失うことは避けてください。

弁護士法人IGT法律事務所は、あなたの正当な権利を守り、経済的利益を最大化するために全力を尽くします。遺留分の期限は、知った時から1年・相続開始から10年です。手遅れになる前に、まずは当事務所の初回無料法律相談をご利用ください。期限の残りと、請求できる金額の目線を一緒に確認します。

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    参照法令・一次情報

    本記事の記述は、次の法令および公的機関の公表資料に基づいています。

    法令(e-Gov法令検索)

    法務省

    裁判所

    国税庁・国土交通省

    ※ 本記事は、最終更新日(2026年9月27日)時点の法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。個別の事案の結論は事実関係により異なりますので、具体的なご判断は弁護士にご相談ください。

    【この記事の執筆者】

    弁護士 小林洋介

    執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

    弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
    慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
    東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
    相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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