遺産分割|相手方相続人11名・海外居住・借地権が絡む数次相続

数次相続で借地上の建物をめぐり対立する相続人と、借地・遺産分割協議書・借地権のイメージ

【解決事例】相手方相続人11名・海外居住・行方不明が絡む数次相続|借地権の法理を駆使し、僅少な代償金で建物を取得

公開日:2026年3月28日/最終更新日:2026年9月28日(事例の要点表とよくあるご質問を追加)

この事例の要点

事件の種類 遺産分割(調停→調停に代わる審判)
ご依頼者 遺産建物の底地に借地権を持つ相続人
相手方 相続分の譲渡に応じなかった相続人11名(行方不明者・オーストラリア在住者を含む)
主な遺産 借地上の建物
主な争点 数次相続で増えた相続人への手続の進め方と、建物の敷地利用権の評価
当事務所の対応 相続分譲渡で当事者を整理し、所在調査・外国送達を経て調停を申立て。敷地の利用権限を「借地権上の使用貸借」と整理して主張
結果 代償金約36万円で建物を取得する内容の調停に代わる審判が確定し、借地権を売却・換価できる状態に

※個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。

■本事例の結論と解決のポイント

  • 結論: 被相続人が亡くなった後、手続きが放置されたことで「数次相続」が発生し、法定相続人が多数に膨れ上がってしまった事案です 。中には行方不明の相続人やオーストラリアに居住する相続人も含まれていました 。当事務所が代理人として介入し、現地調査や「外国送達」などのあらゆる法的手続きを駆使して遺産分割調停を進行 。結果として「調停に代わる審判」を確定させ、ご依頼者様が遺産建物の所有権を取得し、借地権を売却・換価できる状態を無事に実現しました 。
  • 解決のポイント: 本件の最大の勝因は2つあります。1つ目は、海外送達や行方不明者への送達という、一般の方では到底不可能なハードルを弁護士の泥臭い実務対応で突破したこと 。2つ目は、遺産建物の底地の利用権限について、当事務所が「借地権上の使用貸借」という法的な見解を的確に主張し、他の相続人に支払うべき代償金を約36万円という極めて僅少な額に抑制(ご依頼者様の持ち出しを最小化)できた点です 。

■ご相談時の状況とお客様の悩み

ご依頼者様は、遺産である建物の底地について借地権を保有していましたが、遺産建物の遺産分割が終わっていないため権利者が確定せず、底地所有者(地主様)と協力して底地を売却・換価できないという重い課題を抱えてご相談にいらっしゃいました 。 しかし、いざ手続きを進めようにも、過去の相続が放置されていたため(数次相続)、法定相続人が多数に膨れ上がっていました 。さらに悪いことに、長年連絡をとっていない行方不明の親族や、海外(オーストラリア)に移住してしまった親族も含まれており、ご自身だけでは誰とどう交渉し、どのように遺産分割を進めればよいか全く手立てがない状態でした。

■弁護士の対応・解決策

当事務所は、この複雑に絡み合った糸を解きほぐすため、以下のステップで迅速に法的手続きを実行しました。

相続分譲渡による当事者のスリム化:

まずは多数の相続人へアプローチと交渉を行い、一部の相続人から「相続分譲渡」を受けることで、当事者の数を減らす(スリム化する)ことに成功しました 。

遺産分割調停と「行方不明者・海外居住者」への送達:

譲渡に応じなかった11名を相手方として家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てました 。連絡不能な相続人には、現地調査業者の手配や不動産管理会社への聞き取りを駆使して裁判所の書類(送達)を届けました 。オーストラリア居住の相続人に対しては、弁護士会照会で住所を特定し、外務省や領事館を経由する「外国送達」という特殊な手続きを実行し、手続進行を阻む要因を突破しました 。

借地権の適切な法的評価と「調停に代わる審判」の確定:

建物の評価額(代償金)を巡る争いにおいて、底地の利用権限を「借地権上の使用貸借」と法的に整理して主張 。これにより、他の相続人に支払う代償金を極限まで抑える内容で裁判官・調停委員を調整し、「調停に代わる審判」を出させ、無事に確定させることに成功しました 。

■IGTからのコメント

相続手続きを長年放置すると「数次相続」が発生し、会ったこともない親族や海外居住者が相続人となり、遺産分割協議が完全にストップしてしまいます。このような場合、戸籍の収集だけでも困難を極め、さらに裁判所を通じた「外国送達」や不在者財産管理人の選任申立てといった専門的な手続きが必要になります 。 また、本件のように借地権や使用貸借が絡む不動産の評価は、弁護士の法的な構成力によって、支払うべき代償金の額が数百万〜数千万円単位で変わってきます。相続人が多くて話が進まない、あるいは複雑な不動産の権利関係でお悩みの方は、決して放置せず、お早めに当事務所までご相談ください。

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■【FAQ】数次相続・行方不明・海外在住の相続に関するよくある質問

Q. 相続人の中に、行方が分からない人がいます。手続は進められますか?

A. 進められます。弁護士が職務上の請求で戸籍や戸籍の附票を取り寄せて住所を調べ、それでも所在が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て(民法25条)、管理人を相手方として遺産分割の手続を進めるのが一般的です。本件では、現地調査や不動産管理会社への聞き取りで所在を確認し、裁判所の書類を届けました。

Q. 海外に住んでいる相続人がいる場合、日本の裁判手続はどうなりますか?

A. 海外に住む相続人にも、遺産分割調停の書類を届ける必要があります。国内のように郵便で送ることはできず、外務省や現地の日本領事館を経由する外国送達の手続が必要になり、時間がかかります。本件では、弁護士会照会で住所を特定したうえで外国送達を行いました。

Q. 「調停に代わる審判」とは何ですか?

A. 調停で合意が成立しない場合に、家庭裁判所が一切の事情を考慮して、事件の解決のために必要な審判をするものです(家事事件手続法284条)。当事者が審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てなければ確定し(同法286条2項)、確定した審判と同じ効力を持ちます(同法287条)。多数の相続人がいて全員が期日に出席できない事案で、よく使われます。

Q. 相続人が多い場合、人数を減らす方法はありますか?

A. 相続分の譲渡を受ける方法があります。相続分を譲り渡した相続人は遺産分割の当事者から外れるため、手続に関わる人数を減らせます。本件でも、一部の相続人から相続分の譲渡を受けて当事者を整理したうえで、残る11名を相手方として調停を申し立てました。

Q. 相続登記を放置すると、どのような問題がありますか?

A. 相続人が亡くなるたびに相続が重なり(数次相続)、関係者がねずみ算式に増えて協議が難しくなります。また、2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2)。

(※法律上の見解は一般的な事例に基づくものであり、具体的な状況により結論は異なります。)

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※ 本ページは、最終更新日(2026年9月28日)時点の法令・判例・実務に基づいて作成しています。解決の結果は個別の事情を前提としたもので、同様の結果をお約束するものではありません。

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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