相続した不動産は遺産分割と共有物分割のどちら?共有登記・第三者の持分・10年経過で整理

相続した不動産は遺産分割と共有物分割のどちら?共有登記・第三者の持分・10年経過で整理

相続した不動産は遺産分割と共有物分割のどちら?共有登記・第三者の持分・10年経過で整理

親から相続した不動産をきょうだいなどで共有していて話合いがまとまらないとき、使う手続は、家庭裁判所の「遺産分割」か、共有物分割請求(協議や地方裁判所等の訴訟)かに分かれます。どちらになるかは登記簿の名義だけでは決まらず、遺産分割が済んでいるか、共有になった経緯、遺産でない持分があるか、相続開始から何年たったかで判定します。本コラムでは、この分かれ目と確認する書類に絞って整理します(執筆時点は令和8年11月です)。

結論:「遺産分割が済んでいるか」と「遺産でない持分があるか」で手続が決まります

  • 遺産分割が済んでいない共有(遺産共有)は、原則として遺産分割(相続人間の協議、家庭裁判所の調停・審判)で解消します。この段階では共有物分割はできません(民法258条の2第1項)。
  • 遺産分割で「共有で取得する」と決めた後の共有(通常共有)は、共有物分割で解消します(民法256条1項・258条1項)。
  • 相続人以外の人の持分など、遺産でない持分と遺産共有の持分が併存する場合は、共有関係の解消は共有物分割、相続人どうしの分け方は遺産分割が原則です(最判平成25年11月29日)。
  • 相続開始から10年を経過すると、併存の場合に限り、遺産共有の持分も共有物分割でまとめて分割できます。相続人の異議による例外があります(民法258条の2第2項・3項)。相続人だけで共有している場合は、10年を経過しても原則は遺産分割です。
  • 登記簿の記載だけでは判断できません。遺産分割の前でも、法定相続分による相続登記はできるためです。

どちらの手続になるか、書類を見ながら一緒に確認します

弁護士法人IGT法律事務所は、遺産分割と共有物分割の双方を取り扱っています。登記事項証明書や遺産分割協議書などをお持ちいただければ、手続の判定から評価・分け方の検討まで続けてご相談いただけます。

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1. 手続の分かれ目(一覧)

次の4点を上から順に確認します。

確認すること 状況 手続の方向
① 遺産分割は成立しているか 協議・調停・審判で、その不動産を共有で取得すると決めた 共有物分割
まだ決めていない(不動産を後回しにした一部分割を含む) 原則として遺産分割(②以下も確認)
② 共有になった経緯 親の単独名義の不動産を相続した 遺産共有:遺産分割
親が生前に子や親族と共有していた 併存(③と同じ)
遺言で特定の相続人らに共有で承継させた 遺言の文言による
③ 遺産でない持分があるか 相続人の一人が持分を第三者に売った、共有者の一人が亡くなった等 共有関係の解消は共有物分割、相続人間は遺産分割
④ 相続開始からの年数 10年経過、かつ③の併存 共有物分割でまとめて分割できる場合あり(異議の例外)
10年経過、相続人だけの遺産共有 遺産分割のまま(分割の基準が原則として法定相続分に)

2. 分かれ目ごとの確認ポイント

(1)遺産分割は成立しているか

遺産分割協議書、調停調書または審判書で、その不動産を「誰がどの割合で取得するか」が決まっていれば、遺産分割は済んでいます。その後の共有は通常の共有で、各共有者はいつでも分割を請求でき、協議が調わなければ裁判所に共有物分割を請求できます。

注意したいのは、遺産分割は一部だけ行うこともできる点です(民法907条1項)。預貯金だけを分けて不動産を後回しにした場合、その不動産はまだ遺産共有です。協議書に相続人全員が加わっているかも確認します。

(2)共有になった経緯

親の単独名義だった不動産は、遺産分割までの間、相続人全員の遺産共有になります(民法898条1項)。

親が生前に子や親族と共有していた不動産(親子で購入した自宅など)は、親の持分だけが遺産で、ほかの持分は遺産ではありません。相続人の一人が自分の持分を持っていた場合も含め、(3)と同じ併存の形になると考えられます。

遺言がある場合は文言を確認します。特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」遺言(特定財産承継遺言)は、特段の事情がない限り、遺産分割を経ずに相続開始と同時に承継されるとされています(最判平成3年4月19日)。複数の相続人に共有で承継させる遺言であれば、その後の共有の解消は共有物分割で考えるのが一般的です。他方、「遺産の2分の1ずつ」のように割合だけを定める遺言(相続分の指定)では、遺産分割が必要です。

(3)遺産でない持分があるか

遺産分割の前に相続人の一人が自分の持分を買取業者などに売った場合や、共有者の一人が亡くなりその持分だけが相続された場合は、遺産共有の持分とそれ以外の持分が併存します。併存する共有関係を裁判で解消する手続は共有物分割訴訟で、それによって相続人側に分与された財産は遺産分割の対象となり、相続人どうしの分け方は遺産分割で決めるとされています(最判平成25年11月29日)。

なお、特定の不動産の持分ではなく「相続分」(遺産全体に対する相続人の取り分)を譲り受けた人は、遺産分割の当事者になります。裁判所も、遺産分割調停を申し立てられる人に「相続分譲受人」を挙げています。何を譲り受けたのかは、譲渡の契約書で確認します。

(4)相続開始から何年たったか

(3)の併存の場合、相続開始から10年を経過すると、遺産共有の持分も共有物分割の手続でまとめて分割できます(民法258条の2第2項本文)。ただし、その持分について遺産分割の請求があり、相続人が、共有物分割の請求を受けた裁判所から通知を受けた日から2か月以内に、その裁判所に異議を申し出たときは除かれます(同項ただし書・3項)。10年を経過する前は、共有物分割と遺産分割を別々に行います。

一方、不動産全体が遺産のまま相続人だけで共有している場合は、10年を経過しても分割の方法は基本的に遺産分割です(法務省の解説資料)。変わるのは分割の基準で、10年経過後は原則として、特別受益や寄与分を考慮しない法定相続分(遺言の指定があれば指定相続分)によります(民法904条の3)。令和5年4月1日より前に開始した相続では、相続開始から10年の経過時と令和10年3月31日のいずれか遅い時が基準です(令和3年法律第24号附則3条)。生前贈与や介護の貢献を主張したい場合は、原則として、それまでに家庭裁判所へ遺産分割を請求しておく必要があります。

所在の分からない相続人がいる場合は、相続開始から10年を経過した後、裁判所の決定を得てその持分を取得・譲渡する制度(民法262条の2・262条の3)を使える場合があります。詳しくは共有者と連絡が取れない/所在不明でも可能?共有物分割の手続と注意点をご覧ください。

3. 登記の名義だけで決めない

登記簿で兄弟が「持分2分の1ずつ」となっていても、遺産分割が済んでいるとは限りません。

  • 相続登記の申請義務(3年以内)を果たす方法として、遺産分割の前に法定相続分で相続登記をすることも認められています(法務省の解説資料)。
  • 遺産分割協議に基づいて登記した場合も、登記原因は「○年○月○日相続」(被相続人の死亡日)と記載されます(法務局の申請書記載例)。原因が「相続」というだけでは、遺産分割の前か後かは区別できません。
  • 持分が法定相続分と異なる場合は、遺産分割や遺言に基づく登記の可能性があります。法定相続分で登記した後に遺産分割をした場合は、その結果を反映する登記が後に続いているかを確認します。
  • 相続人申告登記は相続人であることを申し出るもので、持分は登記されません(法務省の解説資料)。

登記は判定の手がかりにとどめ、遺産分割協議書などの書類で確認してから手続を選びます。

4. 確認する書類

書類 主な取得先 確認すること
登記事項証明書 法務局 名義人と持分、登記原因と日付、第三者への持分移転の有無
遺産分割協議書・調停調書・審判書 手元、家庭裁判所 遺産分割の成否、その不動産の取得者と持分、一部分割かどうか
遺言書 手元、公証役場、法務局(遺言書保管制度) 特定財産承継遺言か、相続分の指定か
戸籍(除籍・改製原戸籍を含む) 市区町村 相続開始日(10年の起算点)、相続人の範囲、相続が重なっていないか
固定資産評価証明書 市区町村(東京23区は都税事務所) 評価額の目安(遺産分割調停の申立てでも提出を求められます)
持分・相続分の譲渡契約書 当事者 譲り受けたのが不動産の持分か、相続分か

固定資産税評価額は時価そのものではありません。分ける際の評価の考え方は共有不動産の分割で損をしない評価額の決め方で解説しています。

5. 判定の後に読んでいただきたい記事

よくあるご質問

Q1. 登記簿で兄弟が2分の1ずつの共有になっています。遺産分割は済んでいると考えてよいですか。

A. 登記だけでは判断できません。遺産分割の前でも法定相続分で相続登記をすることができ、遺産分割協議に基づく登記でも登記原因は「相続」と記載されるためです。遺産分割協議書、調停調書または審判書があり、その不動産の取得者と持分が定められているかを確認してください。

Q2. 相続開始から10年が過ぎれば、相続人だけで共有している不動産も共有物分割で分けられますか。

A. 原則として分けられません。10年経過後に遺産共有の持分も共有物分割で分割できるのは、遺産共有の持分と、相続人以外の人の持分など遺産でない持分が併存する場合です(民法258条の2第2項)。不動産全体が遺産のままであれば、10年経過後も原則は遺産分割で、分割の基準が原則として法定相続分(遺言の指定があれば指定相続分)になります(民法904条の3)。

Q3. 預貯金だけ遺産分割協議をして、不動産は共有のままにしています。どちらの手続になりますか。

A. 協議書でその不動産の取得者と持分を決めていなければ、その不動産は遺産分割が済んでいない遺産共有と考えられ、原則として遺産分割で解消します(民法907条1項・258条の2第1項)。協議書で「不動産は相続人の共有とする」と持分まで定めていれば、その不動産の遺産分割は済んでおり、共有の解消は共有物分割によります。

Q4. 親と私が共同で購入した自宅を、親の死亡後に兄弟で共有しています。どの手続になりますか。

A. 親の持分は遺産、あなたがもともと持っていた持分は遺産ではないため、遺産共有と通常共有が併存する形になると考えられます。この場合、共有関係の解消は共有物分割、親の持分を相続人の間でどう分けるかは遺産分割で決めるのが原則です。相続開始から10年を経過していれば、共有物分割でまとめて分割できる場合がありますが、相続人の異議による例外があります(民法258条の2第2項・3項)。

まとめ:登記ではなく、書類と共有の経緯で手続を判定します

相続した不動産の共有を解消する手続は、遺産分割の成否、共有になった経緯、遺産でない持分の有無、相続開始からの年数で決まります。判定を誤ると手続を選び直すことになり、解決が遅れることがあります。

弁護士法人IGT法律事務所は、遺産分割と共有物分割の双方を取り扱い、どの手続によるかの判定から、不動産の評価、分け方の検討まで一体でご相談をお受けしています。共有物分割については共有物分割請求の弁護士相談(初回60分無料)、遺産分割については遺産分割でもめたら|不動産・非上場株式の評価実務に強い相続弁護士をご覧のうえ、初回60分の無料相談をご利用ください。

参考一次情報

  • e-Gov法令検索「民法」(256条、258条、258条の2、262条の2、262条の3、898条、904条の3、907条、令和3年法律第24号附則3条。e-Gov)
  • 法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」(相続登記の申請義務化と相続人申告登記、具体的相続分による遺産分割の時的限界、遺産共有と通常共有が併存している場合の特則、不明相続人の不動産の持分取得・譲渡。法務省)
  • 法務局「不動産登記の申請書様式について」(所有権移転登記申請書〔相続・遺産分割〕の記載例。法務局)
  • 裁判所「遺産分割調停」(申立人、申立てに必要な書類。裁判所)
  • 最高裁判所第二小法廷 平成25年11月29日判決(民集67巻8号1736頁。裁判所)
  • 最高裁判所第二小法廷 平成3年4月19日判決(民集45巻4号477頁)

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。