共有物分割のよくある質問20問|請求の可否から訴訟・評価・税金まで弁護士が一問一答で解説
共有名義の不動産を丸ごと売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。修繕や賃貸に必要な同意は行為の内容によって異なりますが(保存行為は各共有者が単独で、管理行為は持分の過半数で決められます)、共有者の意見が割れると活用が進まないまま、固定資産税だけがかかり続けることになりがちです。相続で兄弟姉妹の共有になった実家、離婚後もそのままの自宅など入口はさまざまですが、行き着く論点は共通しています。本コラムでは、当事務所に寄せられる代表的なご質問20問を一問一答で整理しました。令和3年民法改正(令和5年4月1日施行)で共有のルールは大きく変わっています。
結論:共有は「相手の同意がなくても」終わらせられます
- 共有物分割請求は、共有者の1人が単独で、他の共有者全員に対していつでもすることができます(民法256条1項)。
- 分割方法は現物分割・賠償分割(1人が取得し、他の共有者に代償金=精算のお金を払う方法)・換価分割(売却して代金を分ける方法。裁判では競売(けいばい)=裁判所を通じた強制売却になります)の3つで、裁判所は現物分割と賠償分割のいずれかを選び、どちらも相当でないときに競売を命じます(民法258条2項・3項)。
- 協議が調わなければ、家庭裁判所の調停ではなく地方裁判所の共有物分割訴訟になります。早ければ6か月、長ければ1〜2年程度が目安です。
- 相続で生じた共有は原則として遺産分割で解決しますが、相続開始から10年を経過すると共有物分割訴訟で処理できる場合があります(民法258条の2)。
- 結論を分ける最大の要素は「いくらと評価するか」です。詰めを誤ると代償金が数百万円単位で変わります。
共有不動産のトラブルへの当事務所の取り組みは共有不動産のトラブルを弁護士に相談する(共有物分割の専門ページ)にまとめています。初回60分は無料です。
1. 基礎編
Q1. そもそも共有物分割請求とは何ですか。
A. 1つの不動産を複数人で共有する状態を解消し、単独所有または金銭に変える手続です。民法256条1項は「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定めています。まず共有者間の協議で行い、調わないときに裁判所へ分割を求めます(民法258条1項)。一方の意思だけで手続を始められる点が特徴です。
Q2. 他の共有者が反対していても請求できますか。期限はありますか。
A. 反対されていても請求できます。分割請求は共有者が単独で行使でき、他の共有者の同意は要件ではありません。共有関係が続く限りいつでも行使でき、時効で消滅する性質のものではないと解されています。ただし、権利があることと有利な条件で解決できることは別です。相手が居住している、評価に争いがあるといった事情があるほど、交渉の設計が結論を左右します。
Q3. 分割の方法にはどのような種類がありますか。
A. 大きく3つです。現物分割(分筆などで物理的に分ける)、賠償分割(1人が取得し他の共有者に代償金を払う)、換価分割(売却して代金を分ける。裁判手続では競売)です。民法258条2項は現物分割と賠償分割を明文で並べ、同条3項は、これらで分割できないときや著しく価値を減少させるおそれがあるときに競売を命じられるとしています。建物や狭い土地は賠償分割か競売になる例が多く見られます。
Q4. 分割を請求できないケースはありますか。
A. あります。民法256条1項ただし書は、「当面は分割しない」という共有者間の約束(不分割特約)を5年を超えない期間で認めており、更新もできます(同条2項)。この特約は登記でき、登記されていれば持分を取得した第三者にも対抗できます。ほかに、被相続人が遺言で5年以内の分割を禁じている場合(民法908条)などもあります。登記簿と遺言書の確認が出発点です。
2. 日常のトラブル編
Q5. 共有者の1人が独占して住んでいます。家賃相当額を請求できますか。
A. 民法249条2項は、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うと定めています(令和3年改正で明文化)。持分に応じた対価を請求できる余地があります。ただし相続では、被相続人と同居していた相続人には無償で貸す合意(使用貸借)があったと推認され、無償使用が認められた最高裁判例(最判平成8年12月17日)があり、請求が認められないこともあります。
Q6. 固定資産税や修繕費を自分だけが負担しています。取り戻せますか。
A. 民法253条1項は各共有者が持分に応じて管理費用その他の負担を負うと定めており、立て替えた分は持分割合に応じて返還を求める(求償する)ことができると考えられます。固定資産税は共有者が連帯して納税義務を負い、代表者に一括請求される運用のため、立替えが生じやすい構造です。同条2項は、1年以内に負担義務を履行しない共有者がいるとき、他の共有者が相当の償金を支払って持分を取得できるとしています。
Q7. 共有不動産を賃貸に出したい、リフォームしたいのですが、全員の同意が必要ですか。
A. 行為の性質で変わります。形状または効用の著しい変更を伴う行為(建替え、大規模改修、売却)は変更行為として全員の同意が必要です(民法251条1項)。管理に関する事項は持分価格の過半数で決められます(同252条1項)。改正法は同条4項で、建物3年、土地5年、山林10年、動産6か月を超えない賃借権等の設定は過半数で足りるとしました。ただし、借地借家法が適用される普通の建物賃貸借や借地は法定更新があり期間内に終わることが確実とはいえないため、原則として全員の同意が必要と解されています(過半数で足りるのは一時使用目的や定期建物賃貸借など)。長期の賃貸借は全員同意が必要となる可能性が高い点に注意してください。
Q8. このまま共有で放置すると、どのようなリスクがありますか。
A. 時間の経過とともに解決が難しくなります。共有者が亡くなれば持分は相続人に承継され、相続が次々と発生する「数次相続」が重なると共有者は十数人、数十人に膨らみます。連絡先の把握自体が困難になり、所在不明者が現れれば手続はさらに重くなります。その間も固定資産税と維持費は発生し続けます。共有者の1人が持分を買取業者に売却し、見知らぬ第三者と共有関係に入る例も少なくありません。
3. 手続編
Q9. 何から始めればよいですか。いきなり訴訟を起こせますか。
A. 登記簿等で共有者と持分を確定し、価値の見立てを立てたうえで、分割の協議を申し入れることから始めます。民法258条1項は「協議が調わないとき、又は協議をすることができないとき」に裁判上の分割を認めているため、相手が応じないことが明らかであれば協議を重ねなくても提訴できます。訴訟の前に必ず調停を経なければならない制度(調停前置)でもありません(離婚などの人事訴訟と異なります)。実務では内容証明郵便で申入れと回答期限を示し、協議不調の段階で提訴します。
Q10. 相手が話し合いに応じない、手紙を無視する場合はどうすればよいですか。
A. 放置しても状況は改善しません。回答がないこと自体が協議不調の裏づけになり得ますので、通知の到達を記録に残したうえで共有物分割訴訟に進む判断になります。訴訟になれば相手が欠席しても手続は進行し、相手の非協力が結論を止めることはありません。詳しくは共有物分割請求を無視されたら?訴訟への踏み切り方をご覧ください。
Q11. 共有者と連絡が取れない、所在がわからない場合でも分割できますか。
A. できる場合があります。民法262条の2は、必要な調査を尽くしても氏名や所在がわからない共有者について、裁判所の決定により時価相当額を法務局に預けて(供託して)持分を取得できる仕組みを設けました。第三者への売却を進めたい場合には、持分の譲渡権限を付与してもらう制度(同262条の3)もあります。ただし遺産共有持分は相続開始から10年の経過が要件とされる等の制約があります(所在不明の共有者がいる場合の手続)。
Q12. 共有者に認知症の方や未成年者がいる場合はどうなりますか。
A. 判断能力が不十分な方は単独で有効に分割の合意ができません。成年後見人等を選任し、後見人等が本人に代わって手続に加わるのが原則です。未成年者は親権者が代理しますが、親権者自身も共有者であるなど利益が相反する場合には、特別代理人の選任申立てが必要です(民法826条)。いずれも数か月を要することがあり、スケジュールに織り込む必要があります。
Q13. 共有物分割訴訟は誰を相手に、どこに起こすのですか。期間はどのくらいですか。
A. 共有物分割訴訟は、自分以外の共有者全員を被告として起こす必要があります(共有者全員が当事者となる必要がある「固有必要的共同訴訟」とされているためです)。1人でも欠けると訴えが不適法とされる可能性があります。管轄は通常、不動産所在地の地方裁判所です。期間は、争点が評価額に絞られていれば1年前後、鑑定を実施したり分割方法を激しく争ったりすると2年程度に及ぶこともあります。
4. 分割方法と評価編
Q14. 裁判所はどの分割方法を選ぶのですか。自分が取得することはできますか。
A. 裁判所は、事案に応じて現物分割か賠償分割かを選び、いずれも相当でない場合に競売を命じます(民法258条2項・3項。改正後は現物分割と賠償分割の間に優先順位はありません)。共有者の1人が不動産全体を取得し、他の共有者には金銭を支払う方法(全面的価格賠償)について、最判平成8年10月31日は、その者に取得させるのが相当で、価格が適正に評価され、取得者に支払能力があり、共有者間の実質的公平を害しないといった事情があるときに認められるとしました。取得を望むなら、その事情と資金の裏づけを資料で示す必要があります。
なお、競売を命じられると、民事執行法に基づき、裁判所が不動産を強制的に売却する手続(形式的競売)が進みます。競売市場での売却価額は通常の市場売却より低くなる傾向があるとされ、結果として共有者全員の取り分が減りかねないため、訴訟の中でも任意売却や賠償分割による解決を模索することが課題になります(共有物分割請求と形式的競売)。
Q15. 不動産の評価額はどのように決まりますか。
A. 共有物分割で最も争いになるのが評価です。固定資産税評価額や相続税路線価は公的な指標として参照されますが、実勢価格とはずれが生じます。裁判手続では、当事者の査定書や私的鑑定に加え、争いが解けなければ裁判所が選任する不動産鑑定士の鑑定が行われることがあります。鑑定費用は数十万円規模が一般的です。評価は代償金の額に直結します。
評価をめぐる争いは、当事務所が最も力を入れている領域です。解決の進め方は共有物分割の専門ページをご覧ください。
5. 相続がからむ場合
Q16. 相続した不動産が共有です。遺産分割と共有物分割のどちらの手続になりますか。
A. 相続で生じた共有(遺産共有)の解消は、原則として家庭裁判所の遺産分割です。民法258条の2第1項は、共有物やその持分が相続財産に属し共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、共有物分割の訴えによることはできないと定めています。他方、第三者との共有で遺産共有持分と通常の共有持分が併存する場合には手続が交錯します。整理を誤ると、時間と費用を無駄にしかねません。
Q17. 相続開始から10年が経過すると、何が変わりますか。
A. 2つの変化があります。第1に、民法258条の2第2項により、相続開始から10年を経過すると、遺産共有持分についても共有物分割の訴えで分割できます。ただし、その持分について遺産分割の請求(家庭裁判所への調停・審判の申立て)がされている場合に、相続人が、共有物分割の訴えを受けた裁判所からその訴えがあった旨の通知を受けた日から2か月以内に、その裁判所へ異議を申し出たときは別です(同条2項ただし書・3項)。第2に、民法904条の3により、10年経過後の遺産分割では原則として特別受益(生前贈与などを踏まえた取り分の調整)や寄与分(被相続人への貢献による上乗せ)を主張できず、法定相続分等による分割となります(数次相続で共有者が数十人になった場合)。
6. お金・税金・費用編
Q18. 共有物分割をすると税金はかかりますか。
A. 場面によって分かれます。国税庁は、個人が共有する一筆の土地について持分に応ずる現物分割があった場合、その分割による取得は資産の譲渡に該当しないとの考え方を示しています(質疑応答事例「共有物の分割」)。他方、代償金を受け取って持分を手放す場合や、売却・競売で換価する場合には譲渡所得として課税される可能性があり、居住用財産なら3000万円特別控除の余地もあります。登記面では、共有物の分割による所有権移転登記の登録免許税は不動産の価額の1000分の4、不動産取得税も分割前の持分の割合を超えない部分は非課税とされています。実際の申告は税理士のご確認をお願いしています。
Q19. 自分の持分だけを買取業者に売るのはどうでしょうか。
A. 持分を単独で売ること自体は可能です。ただし、持分だけでは不動産を自由に使えないため、買取価格は市場価格の持分相当額を大きく下回るのが通常です。また、残された共有者は見知らぬ業者と共有関係に入ることになり、新たなトラブルの入口にもなりかねません(共有持分だけを業者に売却する場合の注意点)。売却を決める前に、共有物分割請求によって適正な価格での解決ができないか、比較検討する価値があります。
Q20. 共有物分割を弁護士に依頼すると、費用はどのくらいかかりますか。
A. 当事務所は初回60分の相談を無料としています。ご依頼いただく場合の弁護士費用は、ご依頼時にお支払いいただく着手金と、解決時の成果に応じた報酬金で構成するのが一般的で、当事務所の考え方は共有物分割の専門ページと弁護士費用のご案内に掲載しています。このほか、訴訟では裁判所に納める印紙代や、不動産鑑定を行う場合の鑑定費用などの実費が別途かかります。
まとめ:共有の出口は「評価」と「順序」で決まります
共有物分割は、権利としてはいつでも行使できる一方、実際にいくらを、どれだけの期間で手にできるかは、評価をどう組み立てるか、協議・通知・提訴という順序をどう設計するかに左右されます。当事務所は、不動産や非上場株式の評価が正面から問題となる相続案件を中心に取り扱い、共有物分割でも、競売を避けて適正な代償金や売却代金を確保する解決を目指しています。なお、本記事は共有物分割を請求する側の視点で整理しています。共有物分割の通知や訴状を受け取った側の対応は、相手方に弁護士がついて共有物分割請求をされたら|通知・訴状が届いた側の対応マニュアルで解説しています。共有不動産のトラブルを弁護士に相談する(共有物分割の専門ページ)から、初回60分の無料相談をご利用ください。
参考一次情報
- e-Gov法令検索「民法」(249条・251条〜253条・256条・258条・258条の2・262条の2・262条の3・904条の3・908条。e-Gov)
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」(法務省)
- 最高裁判所判例(最判平成8年10月31日、最判平成8年12月17日。裁判所)
- 国税庁 質疑応答事例「共有物の分割」(国税庁)
関連コラム・解決事例
- 共有物分割請求の総合ガイド
- 共有物分割請求とは?解決までの流れ・費用・3つの分割方法
- 相手方に弁護士がついて共有物分割請求をされたら|通知・訴状が届いた側の対応マニュアル
- 共有名義の不動産を売りたいが反対されている方へ
- 賃貸中・テナントありの共有不動産を分割するには
- 不動産の相続の解決事例集
【この記事の執筆者】
執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)
弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
▶ 弁護士小林洋介のプロフィール詳細 / ▶ 初回60分無料相談のご予約はこちら
ご相談はこちらへ
▶ 弁護士への初回60分無料相談はこちらへ。
相続のご相談は弁護士法人IGT法律事務所の相続相談サイトへ
| サイト名 | 弁護士法人IGT法律事務所の相続相談サイト |
|---|---|
| 事務所名 | 弁護士法人IGT法律事務所 |
| 住所 | 〒102-0083 東京都千代田区麹町4-3-3新麹町ビル6階 |
| TEL | 03-6265-6770(予約専用) |
| FAX | 03-6265-4994 |
| URL | https://souzokusoudan-bengoshi.com/ |
| コーポレートサイト | 弁護士法人IGT法律事務所 公式サイト(企業法務・M&A・事業再生などのご相談も承ります) |
※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。



