非上場株式の相続税評価、60年ぶり見直しへ|国税庁有識者会議が2026年4月に初会合

非上場株式の相続税評価、60年ぶり見直しへ|国税庁有識者会議が2026年4月に初会合

非上場株式の相続税評価が変わる——国税庁有識者会議の初会合を弁護士が解説

最新状況(2026年10月10日更新):有識者会議は第6回(2026年9月16日)まで開催され、国税庁が1,378社での評価水準の試算を公表しています。最新の状況は、まとめ記事非上場株式の相続税評価見直し【最新状況】で随時更新しています。

この記事でわかること

  • 2026年4月20日、国税庁が非上場株式の相続税評価に関する有識者会議の第1回会合を開催した
  • 評価ルールの抜本見直しは1964年(昭和39年)以来初めてであり、適用時期は報道ベースで2028年1月以降の相続とされているが未確定
  • 規模の大きな非上場会社の株式については評価額が上がる方向で議論が進む見込みであり、早期の状況確認と対策の検討が求められる
  • 税務は税理士の領域だが、相続人間の株式評価をめぐる紛争・事業承継の法的設計は弁護士が担う。両者の連携が不可欠である

1. はじめに:なぜ今、非上場株式の評価が問題になっているのか

「父が中小企業のオーナーで、株式を大量に保有していた。いったいいくらの評価になるのか」

「兄が会社の株式を相続したが、税務上の評価額が実態と大きくかけ離れているのではないか」

このようなご相談は、当事務所に数多く寄せられます。不動産と並んで、非上場株式は相続において最もトラブルが生じやすい財産のひとつです。

その非上場株式の相続税評価をめぐって、2026年4月に重大な動きがありました。国税庁が約60年ぶりの抜本的な評価ルール見直しに向けて有識者会議を設置し、4月20日に第1回会合を開いたのです。

この動きは、中小企業オーナーの相続・事業承継に携わる弁護士として、見過ごすことのできないものです。本記事では、今回の国税庁有識者会議の内容と背景を整理したうえで、弁護士の視点から今後の実務的な影響と留意点を解説します。

非上場株式の相続でトラブルを抱えていませんか?
評価額・遺産分割・少数株主問題など、弁護士法人IGTが初回60分無料で対応します。

【初回60分無料】相談予約はこちら

2. 現行の評価ルールとその問題点

財産評価基本通達とは何か

相続税法第22条は、相続財産を「取得の時における時価」で評価すると定めています。しかし、非上場株式には証券取引所のような公開市場がないため、客観的な「時価」を確認することができません。

そこで国税庁は、「財産評価基本通達」(以下「評価通達」)という内部規程で、非上場株式の評価方法を定めています。評価通達は法律ではなく、国税庁長官が税務職員に向けて発する行政内部の指示文書ですが、実務上はこれに基づいた評価額が税務上の時価として広く使われており、裁判例においても合理性が認められています。

現行の評価通達が定める非上場株式の評価方式は、主に以下の3つです。

  • 類似業種比準方式:業種が類似した上場企業の株価を基に、配当・利益・純資産の3要素を比較して算出する方法。大会社に原則適用。
  • 純資産価額方式:会社の総資産・負債を相続税評価額に洗い替えて算出する方法。小会社に原則適用。
  • 配当還元方式:少数株主(会社経営に関与しない株主)の株式に適用される特例的な評価方法。

この評価通達の基本的な枠組みは、1964年(昭和39年)の制定以来維持されてきました(比準要素や業種目などの個別の改正は重ねられています)。

会計検査院が指摘した「評価の歪み」

2024年11月、会計検査院は「令和5年度決算検査報告」の中で、非上場株式の評価について深刻な問題を指摘しました。

令和2・3年分の申告から無作為に抽出した1,600件を検査したところ、類似業種比準価額と純資産価額の両方が確認できた延べ616社について、純資産価額方式で計算した評価額の合計が約397億円(396億7909万余円)であるのに対し、実際の申告評価額の合計は約169億円(168億9281万余円)と、半分以下にとどまっていました。純資産価額に対する類似業種比準価額の割合は中央値で0.25倍であり、評価方式の違いだけで同じ会社の株式の評価額に約4倍の開きが生じていたのです(会計検査院 令和5年度決算検査報告「相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価について」)。

会計検査院はこの実態について、「評価の公平性が必ずしも確保されているとは言えない」として、事実上、見直しを求める報告を行いました。

横行していた節税スキームの実態

この「評価の歪み」を意図的に利用した節税スキームが、一部の富裕層や大規模オーナー企業の間で横行していたことも、今回の見直しの直接的な引き金となっています。

具体的には、次のような手法が問題視されていました。

  • 相続直前に役員報酬・配当をゼロにして利益比準要素を圧縮し、類似業種比準価額を引き下げる
  • 相続直前に多額の借入・不動産購入を行い、純資産価額を圧縮する
  • 会社規模を意図的に操作して、有利な評価方式が適用されるよう調整する

こうした行為に対しては、評価通達の総則第6項(通達による評価が「著しく不適当」と認められる場合に別の方法で評価できる規定)が適用されるケースも出てきており、2022年の最高裁判決(借入れによる不動産購入を用いた相続税対策に評価通達6項の適用を認めた事案)でもこの趣旨が確認されています。しかし個別対応には限界があり、ルールそのものの見直しが不可欠と判断されるに至ったのです。

3. 2026年4月20日の初会合——何が明らかになったか

有識者会議の構成と座長

2026年4月16日、国税庁は有識者会議の初会合を4月20日に開催すると発表。そして4月20日、第1回会合が実際に開かれました。

会議の座長には、租税法を専門とする慶應義塾大学大学院の佐藤英明教授が就きました。会計学・会社法の専門家のほか、日本商工会議所や日本税理士会連合会の実務家も構成員に名を連ねています。

学術と実務のバランスをとった構成であることは注目に値します。単純な「増税」に傾くのではなく、中小企業の事業承継や経営実態への影響を踏まえた慎重な議論が期待できる体制です。

新ルール適用の目標時期

今回の有識者会議の議論は2026年内に取りまとめられ、2027年度の税制改正大綱への反映を目指します。報道では、新しい評価ルールは2028年1月以降に開始する相続から適用されると見込まれていますが、国税庁は適用時期を公表しておらず、未確定です。

これが実現すれば、現行の評価通達が制定された1964年以来、初めての抜本的な改正となります。

議論される可能性が高い4つの論点(2026年4月時点)

現時点(2026年4月)では確定した情報はなく、以下はあくまで報道ベースおよび実務家の分析を整理したものです。確定的な内容は今後の議論を経て明らかになります。

① 類似業種比準方式の比準要素・ウェイトの見直し

現在は配当・利益・純資産の3要素を用いていますが、要素のウェイト変更や追加が検討される可能性があります。一般に、類似業種比準価額は純資産価額より低く算出されやすい傾向にあり、見直しによって評価額が上昇する方向での議論が予想されます。規模の大きな会社(大会社・中会社)に特に影響が出る可能性があります。

② 配当還元方式の還元率の見直し

現行の還元率は10%ですが、これをより低い水準(5〜8%程度?)に引き下げることで、配当還元価額が上昇する方向での議論が想定されます。少数株主の相続にも影響が及ぶ可能性があります。

③ 会社規模区分(大会社・中会社・小会社)の基準変更

規模区分の境界値が変わることで、これまで「中会社」として有利な方式を使えていた会社が「大会社」扱いになり、評価額が上がるケースも出てくる可能性があります。

④ 節税スキームへの否認規定の明文化

現在は総則6項による個別対応にとどまっているところ、相続直前の操作行為に対する否認規定を通達レベルで明文化することが検討される可能性があります。

上記はいずれも「議論される可能性のある内容」であり、最終的な改正内容は2026年末の検討取りまとめを経て、2027年度税制改正大綱の確定をもって明らかになります。現時点で確定した情報ではありません。

4. 今後のスケジュール——タイムラインで整理

  • 2024年11月:会計検査院が「評価の公平性が必ずしも確保されていない」と報告
  • 2026年4月14日:日経新聞が国税庁の評価見直し方針を報道(第一報)
  • 2026年4月20日:有識者会議 第1回会合開催(座長:慶應大大学院・佐藤英明教授)
  • 2026年内:有識者会議による論点取りまとめ(予定)
  • 2026年12月:2027年度税制改正大綱の決定(予定)
  • 2027年:通達・規則の改正・施行(予定)
  • 2028年1月以降:新評価ルール適用開始(報道ベース・未確定)

ここで押さえておきたいのが、もう一つの重要な期限です。中小企業の後継者が非上場株式を相続・贈与で取得した場合に相続税・贈与税の全額(100%)の納税を猶予できる「事業承継税制の特例措置」は、租税特別措置法上、2027年12月31日までの相続・贈与が対象とされています。期限後の取扱いは今後の税制改正の動向によります。

つまり、2027年末という「特例期限」と2028年1月という「新評価ルール適用開始」が、ほぼ同時に訪れることになります。事業承継を検討しているオーナーにとって、2026年〜2027年は極めて重要な意思決定の時期となります。

5. 弁護士から見た実務上の留意点——今確認しておくべきこと

今回の見直しは税務の領域であり、具体的な評価方法や税額計算については税理士にご相談いただくことが前提です。その上で、弁護士の立場から「法務・紛争予防」の観点で留意いただきたい点を3つ整理します。

① 現在の評価方式と会社規模区分の把握

まず、相続が発生した際に自社株がどの評価方式で計算されるかを、顧問税理士に確認しておくことをお勧めします。類似業種比準方式が適用される規模の会社では、見直し後に評価額が上がる可能性が相対的に高いためです。

現状の評価額がわかることで、「今のうちに贈与を進めるべきか」「事業承継税制の特例を使うべきか」といった判断の材料が整います。

② 事業承継の時期・方法の再検討

評価方式の変更を見据えた場合、2028年1月より前に相続・贈与を行うことが税負担の観点から有利になるケースが出てくる可能性があります。ただし、「新ルール適用前に急いで動く」という判断は、会社規模・家族構成・後継者の意向・現在の事業状況を総合的に考慮したうえで行う必要があります。

税務面の検討と並行して、株式の贈与・譲渡の法的手続き、種類株式の活用、定款変更・株主間協定の締結など、法務面の設計も同時に進めることが重要です。

③ 相続人間の株式評価をめぐる紛争リスクへの備え

評価方法が変わることで、相続人間で「株式の価値」についての認識が変わりやすくなります。特に注意が必要なのは、株式を承継する後継者(経営者)と、株式を受け取らない他の相続人(非経営者)の間での対立です。

税務上の評価額と、遺産分割における「時価」は必ずしも一致しないため、「税務上は1億円の評価だが実態は3億円の価値がある」といった主張をめぐって紛争に発展するケースも少なくありません。

評価方法が変化する過渡期には、こうした紛争が一層起きやすくなります。遺言の作成、生前贈与の計画、相続人間での事前合意形成など、早めの予防的対策が極めて重要です。

非上場株式の相続・事業承継に不安がありますか?
株式評価をめぐる相続人間のトラブル・事業承継の法的設計・少数株主問題など、弁護士法人IGT法律事務所が幅広く対応します。

不動産・非上場株式の複雑な相続トラブル、
まずは適正な「評価」から始めませんか?

「提示された代償金に納得がいかない」「会社が株式を安く買い叩こうとしている」など、不公平な権利関係でお悩みの方は、一人で抱え込まず専門家にご相談ください。
弁護士法人IGT法律事務所では、初回60分の無料相談を実施しております。実績豊富な弁護士が、あなたの正当な権利を守るための最適な解決策をご提案します。

ご相談内容がまとまっていなくても構いません

✉ 24時間受付 | メールで無料相談を予約

6. よくあるご質問(FAQ)

Q. 非上場株式の相続税評価方法はいつ変わるのですか?

A. 現時点(2026年4月)では、報道ベースで2028年1月以降に開始する相続からの新ルール適用が見込まれていますが、国税庁は適用時期を公表しておらず未確定です。確定は2026年末の税制改正大綱を経てからとなります。制度の変化を確認しながら、今後の動向に注目してください。

Q. 評価方法が変わると相続税は必ず増えるのですか?

A. すべての会社で増税が生じるわけではありません。規模の大きな非上場会社(主に大会社・中会社)の株式では評価額が上がる方向での議論が進む見込みですが、小規模な同族会社への影響は現時点では不明な部分が多くあります。自社がどの評価方式を使っているかを確認した上で、顧問税理士に具体的な影響を試算してもらうことをお勧めします。

Q. 今できる対策はありますか?

A. 確定した制度変更の内容がわからない現時点では、具体的な節税対策を実行することは難しい状況です。ただし、①現状の評価方式と評価額の把握、②事業承継計画の見直しと専門家との意見交換、③相続人間の合意形成と遺言の整備、の3点については早期に着手することを推奨します。特に事業承継税制の特例措置の期限(2027年12月末)が迫っているため、この活用可否についても早急に検討が必要です。

Q. 税務の話なので税理士だけに相談すればよいですか?

A. 税額の計算や申告については税理士の領域です。しかし、相続人間での株式評価をめぐる紛争の予防・解決、株式の贈与・譲渡の法的手続き、種類株式・株主間協定を活用した事業承継スキームの設計、少数株主問題の解消などは弁護士の領域です。特に遺産分割において非上場株式が含まれる場合、税務と法務の両方の専門家が連携して対応することが不可欠です。

7. まとめ

今回の国税庁有識者会議の設置は、1964年以来約60年間変わらなかった非上場株式の相続税評価ルールを抜本的に見直す動きです。2027年度税制改正大綱への反映に向けて議論が進んでおり、適用時期は報道ベースで2028年1月以降の相続とされています(未確定)。

規模の大きな非上場会社の株式オーナーにとっては、評価額が上がる方向での影響が生じる可能性があります。また、事業承継税制の特例措置(2027年12月末期限)とのダブルデッドラインが意識されるため、2026年〜2027年は事業承継の観点からも極めて重要な時期となります。

税務面の対応は税理士にご相談いただきながら、法務面の設計や相続人間の紛争予防については、非上場株式・事業承継に精通した弁護士への早期相談をお勧めします。

当事務所では、非上場株式の相続・遺産分割・少数株主問題・事業承継に関するご相談を初回60分無料で承っています。「今の状況を整理したい」という段階でもお気軽にご連絡ください。

非上場株式の相続・事業承継について、まずはご相談ください

  • 非上場株式の遺産分割でお困りの方
  • 自社株の評価額に納得できない方(少数株主・相続人)
  • 事業承継の法的設計を進めたい経営者・後継者
  • 相続人間で株式の扱いをめぐって対立が生じている方

弁護士法人IGT法律事務所は、東京・麹町を拠点に、不動産・非上場株式の相続を専門的に取り扱っています。

【初回60分無料】非上場株式の相続のご相談はこちら

お電話でのご予約:03-6265-6770(予約専用)
ご相談内容の秘密は厳守いたします。

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
▶ 弁護士小林洋介のプロフィール詳細 / ▶ 初回60分無料相談のご予約はこちら

ご相談はこちらへ

▶ 弁護士への初回60分無料相談はこちらへ。

相続のご相談は弁護士法人IGT法律事務所の相続相談サイトへ

サイト名 弁護士法人IGT法律事務所の相続相談サイト
事務所名 弁護士法人IGT法律事務所
住所 〒102-0083 東京都千代田区麹町4-3-3新麹町ビル6階
TEL 03-6265-6770(予約専用)
FAX 03-6265-4994
URL https://souzokusoudan-bengoshi.com/
コーポレートサイト 弁護士法人IGT法律事務所 公式サイト(企業法務・M&A・事業再生などのご相談も承ります)