遺産分割|遺言による特別受益を主張し、代償金1800万円獲得

遺産分割の解決事例:一部の財産だけの遺言でも特別受益として持ち戻し、代償金1,800万円を獲得

遺産分割|遺言による特別受益を主張し、代償金1800万円獲得

公開日:2025年10月30日/最終更新日:2026年9月28日(事例の要点表とよくあるご質問を追加)

この事例の要点

事件の種類遺産分割(調停)
ご依頼者被相続人(母)の子
相続人父、姉、ご依頼者、弟の4名
相手方弟(代理人弁護士あり)
遺言公正証書遺言で、特定の財産を父と弟に相続させる旨だけを記載
主な争点遺言に書かれていない財産を分ける際、遺言で取得する財産を特別受益として持ち戻すか
結果持戻し計算を前提とする内容で調停が成立し、代償金1,800万円を獲得

※個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。

 

遺言書に記載のない財産はどう分ける?「遺言による特別受益」を主張し、代償金1800万円を獲得した解決事例

「特定の財産を長男に相続させる」といった記載はあるものの、その他の預貯金や不動産について誰に相続させるのかが書かれていない「不完全な遺言書」が見つかるケースは少なくありません。

このような場合、遺言書に書かれていない財産をどのように分けるべきか、相続人間で激しい認識のズレが生じ、トラブルに発展しがちです。

本記事では、弁護士法人IGT法律事務所が代理人として介入し、誤った遺産分割の主張を覆して「遺言による特別受益」を認めさせ、ご相談者様が代償金1800万円を獲得した事例を解説します。

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遺言書に一部の財産しか記載がない場合の法的ルール

遺言書ですべての遺産の行き先が決まっていない場合、記載から漏れている残りの遺産については、相続人全員での「遺産分割協議」が必要になります。

この際、最も争いになりやすいのが「遺言によってすでに財産を受け取ることが決まっている相続人の扱い」です。

相手方が主張しがちな「誤った分け方」

遺言で財産をもらう相続人は、「遺言に書かれている財産は自分のもの。残りの財産は、全員で法定相続分通りに(平等に)分けよう」と主張しがちです。しかし、この主張は多くの場合、法的に誤っています。

正しい分け方:「特別受益の持ち戻し」

遺言によって特定の相続人に財産を取得させることは、原則として「特別受益(生前贈与や遺贈などによる特別な利益)」に該当します。

そのため、公平を期すために、遺言で指定された財産も一度「遺産全体」に足し戻し(持ち戻し計算)、そこから各人の法定相続分を算出した上で、すでに遺言で受け取る分を差し引いて、最終的な取得額を決めるのが正しいルールです。

【事案の概要】不完全な公正証書遺言による兄弟間の対立

本件は、母親(被相続人)が残した公正証書遺言の内容が不完全であったために生じた、兄弟間の遺産分割トラブルです。

項目 事案の詳細
被相続人 母親
法定相続人 父親、姉、ご相談者様、弟(計4名)
遺言書

公正証書遺言あり


(「特定の財産を父と弟に相続させる」との記載のみ。その他の財産についての指定はなし)

主な争点 遺言に記載のない「残りの遺産」の分け方。父と弟が遺言で取得する財産を「特別受益」として計算に含めるか否か。

依頼前の状況と相手方(弟)の主張

ご相談者様は、「遺言で父と弟がもらう分も含めて、すべての遺産を合算してから法定相続分で分けるべきだ(特別受益の持ち戻し)」と正しい主張をしていました。

しかし、弟は「遺言で分け方が決まっている財産は別計算だ。それ以外の残った財産だけを、法定相続分で分けよう」と主張。両者の議論は完全に平行線となり、ご相談者様は当事務所へご相談にいらっしゃいました。

当事務所の対応と結果:代償金1800万円を獲得

1. 代理人として遺産分割調停を申し立て

当事務所はご相談者様の代理人に就任し、まずは相手方と交渉を行いました。相手方にも代理人弁護士が就きましたが、「特別受益に該当する」という当方の正しい法的解釈に対して理解が得られなかったため、速やかに家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てました。

2. 粘り強い交渉と調停の成立

調停の場においても、当事務所は「遺言で指定された財産は特別受益にあたる」という法的主張と証拠を徹底して展開しました。調停の途中で相手方の当初の代理人弁護士が辞任するなどの動きもありましたが、当方は一切妥協せず粘り強く交渉を続けました。

3. 解決の結果

最終的に、相手方も当方の主張を受け入れざるを得なくなり、「遺言による取得分を特別受益と認める(持ち戻し計算を行う)」ことを前提とした遺産分割内容で調停が成立しました。

これにより、当事者間での任意交渉時と比較してご相談者様の取得分が大幅に増加し、最終的に代償金1800万円を獲得する結果となりました。

当事務所からのコメント(実務への示唆と遺言作成の重要性)

本件は、「遺言で取得する財産=特別受益である」という基本的な法的ルールを相手方が理解・納得しなかったために調停にまで発展したケースです。

しかし根本をたどれば、被相続人(母親)が遺言書を作成する際、一部の財産だけでなく「すべての遺産について誰に渡すか」あるいは「残りの財産はどうするか(残余財産の帰属)」を明確に記載しておけば、そもそも生じなかった紛争です。

公正証書遺言であっても、内容が不十分であれば激しい相続トラブルの火種になります。遺言作成時の専門家によるリーガルチェックの重要性を改めて認識する事案でした。

不動産・非上場株式の複雑な相続トラブル
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よくある質問(FAQ)

Q. 遺言書に一部の財産しか書かれていない場合、残りの財産はどうなりますか?

A. 遺言書に書かれていない財産は、相続人全員の遺産分割で分け方を決めます。その際、遺言ですでに財産を受け取る相続人の取得分は、特別受益として計算に含める(持ち戻す)のが原則です(民法903条1項)。ただし、婚姻期間20年以上の夫婦の一方が配偶者に居住用の建物・敷地を遺贈した場合は、持戻し免除の意思表示があったものと推定されます(同条4項)。

Q. 「特別受益の持ち戻し」とは何ですか?

A. 特定の相続人が被相続人から受けた遺贈や、婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与を、相続財産に足し戻して各相続人の取り分を計算することです(民法903条1項)。遺言で財産を受け取った相続人は、その分を差し引いた残りを受け取ることになります。

Q. 「相続させる」と書かれた遺言で取得した財産も、特別受益になりますか?

A. 特定の財産を特定の相続人に承継させる遺言(特定財産承継遺言)による取得も、遺贈と同じように特別受益として持戻しの対象と扱われることが多く見られます。本件でも、父と弟が遺言で取得する財産を持ち戻す計算を前提に調停が成立しました。

Q. 特別受益の主張に期限はありますか?

A. 2023年4月1日以降は、相続開始から10年を過ぎると、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなりました(民法904条の3)。施行日より前に開始した相続については、相続開始から10年を経過する時と2028年3月31日のいずれか遅い時まで主張できます。

Q. 遺言書で家族が揉めないようにするにはどうすればよいですか?

A. 「自宅は長男に」といった一部の指定だけでは、残りの財産を巡って本件のような争いが起きやすくなります。「記載のない残りの財産はだれに相続させるか」を必ず書き、持戻しを免除するかどうかも明確にしておくことをお勧めします。

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遺言書の内容が曖昧であったり、一部の財産しか記載されていない場合、他の相続人から不当に少ない取り分を提示され、気づかないうちに数百万〜数千万円単位で「損」をしてしまうリスクがあります。

弁護士法人IGT法律事務所では、特別受益や遺留分など、複雑な計算と法的解釈が求められる遺産分割案件を数多く取り扱っています。

  • 「一部しか書かれていない遺言書が見つかり、分け方で揉めている」
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当事務所のその他の遺産分割解決事例は、こちらのまとめページでご覧いただけます。

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※ 本ページは、最終更新日(2026年9月28日)時点の法令・判例・実務に基づいて作成しています。解決の結果は個別の事情を前提としたもので、同様の結果をお約束するものではありません。

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士 慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了 東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士 相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。 ▶ 弁護士小林洋介のプロフィール詳細 / ▶ 初回60分無料相談のご予約はこちら

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