共有物分割を相談する弁護士の選び方|評価・訴訟・売却・費用で確認すること

共有物分割を相談する弁護士の選び方|評価・訴訟・売却・費用で確認すること

共有物分割を相談する弁護士の選び方|評価・訴訟・売却・費用で確認すること

共有不動産の問題で弁護士への依頼を考え始めると、どこに頼めばよいか迷う方は少なくありません。事務所のウェブサイトは書き方がそれぞれ違うため、比べ方に迷うこともあるでしょう。本コラムでは、特定の事務所を勧めたり順位を付けたりせず、どの事務所の面談でも使える確認事項を「面談で聞く質問」の形でまとめます(執筆時点は令和8年11月です)。共有物分割の手続そのものは共有物分割請求の総合ガイドで解説しています。

結論:面談での説明の中身で比べます

  • 評価:不動産の価格を何で裏付けるか(査定・私的鑑定・裁判所の鑑定)を、費用と見込める差額の両面から説明してもらえるか。
  • 出口:交渉・訴訟の手続だけでなく、売却・買取り・代償金の支払・登記まで見通しを示してもらえるか。
  • 費用:着手金・報酬金が「何に」かかるのか、最低額・上限・日当・実費まで確認できるか。
  • 立場:請求された側(通知書・訴状が届いた側)の事件も取り扱っているか。
  • 期間と連絡:期間の幅とそれを左右する事情、担当者と連絡の方法を事前に確認できるか。

1. 面談で確かめることが比較の材料になります

弁護士の広告は、日本弁護士連合会の「弁護士等の業務広告に関する規程」(会規第44号)で規制され、他の弁護士と比較する広告などは禁止されています(3条)。訴訟の勝訴率も表示できません(4条1号)。ご自身の不動産と共有者の状況に即した見通しと進め方は、面談で具体的に確かめるのが確実です。

2. 評価:不動産の価格をどう裏付けるか

共有物分割では、代償金の額も、売却するかどうかの判断も、不動産の価格で大きく変わります。価格の資料には、不動産会社の査定、当事者が不動産鑑定士に依頼する私的鑑定、訴訟の中で裁判所が鑑定人を指定して行う鑑定があり、費用も証拠としての位置づけも異なります(違いは共有物分割と不動産鑑定で解説しています)。面談では、次のような質問が役に立ちます。

  • 「この不動産の価格は、まず何の資料で見通しを立てますか。私的鑑定や裁判所の鑑定が必要になるのは、どのような場合ですか。」
  • 「鑑定を使う場合、その費用と、評価が変わったときに見込める差額をどう比べますか。」
  • 「相手方の示した金額のうち、どこを争えそうですか(評価時点、賃貸の有無、接道、建物の状態など)。」
  • 「共有者の間で分ける場合の価格(全体の価格×持分割合)と、持分だけを第三者に売る場合の価格の違いを、どう考えますか。」

裁判所の鑑定費用は最低50万円からが目安で、鑑定を申し出た当事者が予納します。評価が変わっても差額が費用を下回るなら、鑑定に進まない判断もあり得ます。鑑定の要否を費用と差額の両面から説明してもらえるかを確認するとよいでしょう。価格指標の違いは共有不動産の評価額の決め方をご覧ください。

3. 出口:手続の先の売却・買取りまで見通しを立てるか

共有物の分割は、協議が調わなければ裁判所に請求でき(民法258条1項)、裁判所は、現物を分ける方法か、共有者の一人に他の共有者の持分を取得させて金銭を支払わせる方法を命じることができます(同条2項)。これらの方法で分けられないときや、分けると価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売を命じることができます(同条3項)。一人が全体を取得して代わりに金銭を支払う方法(全面的価格賠償)を判決で採るには、取得者に支払能力があることなどが必要とされています(最高裁平成8年10月31日判決)。

依頼者にとっての解決は、判決や和解で終わりではなく、代償金を受け取る・支払う、売却代金を分ける、登記を移すところまで進んで実現します。面談では次の点を確認します。

  • 「住み続けたい、売って現金にしたい、早く共有から抜けたいという私の希望に対して、考えられる分け方とそれぞれの見通しはどうですか。」
  • 「判決になった場合、競売になる可能性はありますか。避けるために、交渉や和解でどのような進め方がありますか。」
  • 「私(または相手方)が全体を取得する場合、代償金の資金の手当てをどう確認しますか。」
  • 「売却する場合、不動産業者の選定、売買契約、登記、税金の相談に、誰がどこまで関わりますか。」
  • 「共有持分だけを業者に売る方法と比べて、手取額・期間・費用はどう違いますか。」

相続した不動産では、遺産分割をすべきときは共有物分割ができません(民法258条の2第1項)。相続開始から10年を経過した場合の例外(同条2項)は、遺産分割前の持分と、相続人以外の人の持分などが併存する場合の定めで、相続人が異議を申し出た場合には使えません。兄弟だけで相続した不動産全体が遺産のままなら、10年を経過しても原則として遺産分割の手続によります。どちらの手続から入るかを最初に整理してもらえるかも確認したい点です(実家が兄弟の共有名義になったとき)。

4. 費用:報酬の「計算対象」を確認する

弁護士費用は、料率だけを比べても実際の負担は分かりません。報酬金が受け取る金銭にかかるのか、取得する持分の時価にかかるのか、もともと持っている持分も対象になるのかによって、同じ料率でも金額が変わるためです。次の項目を確認しておくと、比べやすくなります。

確認する項目 面談で聞く質問の例
着手金 交渉から訴訟に進むとき、追加の着手金はかかりますか。
報酬金の計算対象 受け取る代償金・売却代金、取得する持分の時価、もとの持分のどれに、どのようにかかりますか。
時価の決め方 報酬の計算に使う時価は、合意した評価額・鑑定額など、どの金額ですか。
最低額・上限 報酬金に最低額や上限はありますか。
日当 裁判所への出廷や出張に日当はかかりますか。
実費 印紙代・郵便代・鑑定費用・登記費用・測量費・仲介手数料・税理士報酬は、いつ、誰に支払いますか。

弁護士は、報酬の種類・金額・算定方法・支払時期などを明示した報酬基準を事務所に備え置かなければならず(弁護士の報酬に関する規程3条)、依頼しようとする人から申出があれば、報酬見積書の作成・交付に努めるとされています(同規程4条)。受任時には報酬と費用について説明し、報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければなりません(同規程5条、弁護士職務基本規程29条1項・30条1項)。上の項目は、見積書と委任契約書で書面にして確かめておくと安心です。

5. 請求された側の対応、期間の見通し、連絡の方法

(1)請求された側の対応

請求された側にも、自分が取得して代償金を支払う、評価額を争う、売却に協力して代金を受け取るといった対応の選択肢があります。相手方の弁護士からの通知書と、裁判所から届く訴状とでは、期限の意味も対応も異なります。「通知書の回答期限と、訴状の期日・答弁書の提出期限までに、それぞれ何をしますか」「請求された側の事件も取り扱っていますか」と確認してください。詳しくは共有物分割請求をされた側の対応で解説しています。

(2)期間の見通し

期間は、評価に争いがあり鑑定が必要か、共有者の人数と所在、誰が取得するか・売却するかをめぐる対立の程度などで大きく変わります。当事務所では、ご依頼から解決まで早ければ6か月、長ければ1〜2年程度を目安としてお伝えしていますが、案件によって大きく異なります。「私の場合、期間を長くする要因は何ですか」と聞くと、見通しの根拠が分かります。

なお、弁護士は、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならないとされています(弁護士職務基本規程29条2項)。結論を約束してもらうことよりも、どの事情で結果がどう変わり得るかの説明を受けることが大切です。

(3)担当者と連絡の方法

弁護士は、必要に応じて事件の経過や帰趨に影響する事項を依頼者に報告し、協議しながら事件を処理するものとされています(弁護士職務基本規程36条)。共有物分割は数か月から年単位に及ぶことがあるため、「主な担当者はどなたですか」「連絡は電話・メール・オンライン面談のどれでできますか」「相手方から提案が来たら、どのように相談して決めますか」を確認しておくと、依頼後の行き違いを減らせます。

6. 面談の前に用意しておくとよいもの

  • 不動産の登記事項証明書(共有者と持分の確認)
  • 固定資産税の納税通知書または評価証明書
  • 手元にある査定書・鑑定書、賃貸中であれば賃貸借契約書
  • 相手方からの通知書・訴状と、これまでのやり取りの記録
  • 共有になった経緯(相続・購入など)と、ご自身の希望のメモ

資料がそろっていなくても相談はできますが、あると評価や手続の見通しを具体的に聞きやすくなります。

よくあるご質問

Q1. 共有物分割は、どの弁護士に頼んでも結果は同じですか。

A. 手続の基本は民法で定まっていますが、不動産の評価の裏付け方、交渉か訴訟かの選び方、売却・買取りまでの進め方は、事案ごとに弁護士の判断が求められます。面談では、ご自身の不動産と共有者の状況を前提に、評価の方法、想定される分け方、費用の計算対象、期間の幅を具体的に説明してもらえるかを確認するとよいでしょう。

Q2. 弁護士費用は、着手金と報酬金の料率を比べれば足りますか。

A. 料率だけでは足りません。報酬金が受け取る金銭にかかるのか、取得する持分の時価にかかるのか、もとの持分も対象になるのかで金額が変わり、最低額や上限、日当、印紙代・鑑定費用などの実費が別に必要になることもあります。見積書と委任契約書で計算方法を確認してください。

Q3. 共有物分割を請求された側でも、弁護士に依頼できますか。

A. 依頼できます。請求された側でも、自分が取得して代償金を支払う、評価額を争う、売却に協力して代金を受け取るといった対応を選べます。相手方からの通知書や裁判所からの訴状には期限や期日が定められていることが多いため、届いたら早めに相談し、その事務所が請求された側の事件を取り扱っているか、費用体系はどうかを確認してください。

弁護士法人IGT法律事務所でお受けしていること

本コラムの確認事項は、当事務所の面談でもそのままお尋ねください。当事務所の共有物分割のご相談の範囲は次のとおりです。

  • 共有物分割請求の交渉・訴訟を、請求する側・請求された側のいずれからもお受けしています(費用体系は同じです)。
  • 不動産会社の査定、不動産鑑定士、持分の買取業者などと連携し、売却による解決も検討します。遺産分割の事例ですが、共有持分を第三者に売却して解決した例を共有持分の売却により遺産分割を解決した事例で紹介しています。
  • 遺産分割が終わっていない不動産は、遺産分割の手続から続けてご相談いただけます。
  • ご依頼の前に費用のお見積りをお示しします。費用は弁護士費用、担当弁護士は弁護士紹介をご覧ください。

初回相談は60分無料で、オンラインでのご相談も可能です。お申込みは共有物分割請求の弁護士相談(初回60分無料)からどうぞ。

参考一次情報

  • 日本弁護士連合会「弁護士等の業務広告に関する規程」(会規第44号。3条・4条。日本弁護士連合会)
  • 日本弁護士連合会「弁護士の報酬に関する規程」(会規第68号。3条〜5条。日本弁護士連合会)
  • 日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(会規第70号。29条・30条・36条。日本弁護士連合会)
  • e-Gov法令検索「民法」(258条・258条の2。e-Gov)
  • 最高裁判所第一小法廷 平成8年10月31日判決(平成3年(オ)第1380号。裁判所)

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。