遺言書を作るなら公正証書遺言にすべき理由|自筆証書遺言との違いも弁護士が解説
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弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士 保有資格:弁護士、経営革新等支援機関、2級FP技能士 東京弁護士会相続遺言部所属 |
遺言書を作るなら公正証書遺言にすべき理由|自筆証書遺言との違いも弁護士が解説
「遺言書を作ろうと思っているけれど、自筆でもよいのか、それとも公正証書にすべきなのか分からない」 このようなお悩みをお持ちの方は少なくありません。
結論から申し上げると、遺言書を作るのであれば、公正証書遺言を優先して検討すべきです。 もちろん、自筆証書遺言にも利用場面はあります。
しかし、相続でもめたくない、確実に自分の意思を実現したい、残されたご家族の負担を減らしたいという観点から見ると、公正証書遺言のほうが優れています。
当サイトでも、遺言書を作成すべき理由について解説していますが、遺言書がないと、相続人全員で遺産分割協議をしなければならず、不動産の名義変更や預貯金の解約が進まなくなることがあります。
特に、不動産や非上場株式がある相続、相続人が多い相続、相続人の一部と疎遠な相続では、遺言書の有無が手続の難易度を大きく左右します。
今回は、なぜ遺言書を作るなら公正証書遺言にすべきなのかを、できるだけ分かりやすく解説します。
この記事の要点
- 遺言書がないと、原則として相続人全員で遺産分割協議が必要になる
- 自筆証書遺言は手軽だが、形式不備・紛失・検認の負担が問題になりやすい
- 公正証書遺言は、確実性が高く、相続開始後の手続も進めやすい
- 不動産、非上場株式、相続人多数、子どものいないご夫婦では特に重要
- 遺言執行者や付言事項まで含めて設計すると、より争いを防ぎやすい
遺言書がないとどうなるのか
遺言書がない場合、遺されたご家族は、原則として相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
これは、「誰がどの財産を取得するのか」を全員一致で決める手続です。一人でも反対したり、連絡が取れない相続人がいたりすると、話し合いが成立せず、手続が止まってしまいます。
たとえば、次のような事態が起こります。
- 不動産の名義変更ができない
- 銀行預金の解約や払戻しが進まない
- 兄弟姉妹や甥姪との連絡調整に大きな負担がかかる
- 感情的な対立が生まれ、相続が長期化する
この点は、当サイトの遺言書を書くと遺産相続の問題を解決できる4つの理由でも詳しく触れています。
遺言書があるだけで、遺産分割協議を回避できる場面が多く、相続人同士が正面からぶつかるきっかけを減らすことができます。
なぜ公正証書遺言にすべきなのか
1.形式不備で無効になるリスクを減らせるから
自筆証書遺言は、ご自身で書けるため手軽に見えます。
しかし、法律上の方式が細かく決まっており、これを満たさないと無効になるおそれがあります。 よくある問題としては、次のようなものがあります。
- 日付の記載が曖昧だった
- 署名押印の仕方に問題があった
- 訂正方法が適切でなかった
- 財産の特定が不十分だった
これに対し、公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、方式面の不備が生じにくくなります。
「せっかく遺言書を書いたのに、あとで無効と言われる」という事態を避けたいのであれば、公正証書遺言のほうがはるかに安心です。
2.紛失や隠匿のリスクを減らせるから
自筆証書遺言を自宅で保管していると、そもそも見つからない、内容が気に入らない相続人に隠される、誤って捨てられてしまう、といった問題が起こり得ます。
遺言書は、書くだけでは足りません。相続開始後に確実に見つかり、実際に使える状態で残ることが重要です。
公正証書遺言は、公証役場で作成されるため、遺言の存在が不明になりにくく、紛失リスクも小さくなります。
「残された家族が遺言書を探し回る」という事態を避けたい方には、公正証書遺言が向いています。
3.相続開始後に検認が不要だから
自宅保管の自筆証書遺言では、相続開始後、原則として家庭裁判所で検認という手続が必要になります。
検認は、遺言書の有効・無効を判断する手続ではありませんが、申立てや必要書類の準備、期日の対応など、相続人に一定の負担が生じます。
一方で、公正証書遺言は検認が不要です。
そのため、相続開始後の手続に早く着手しやすく、預貯金、不動産、証券などの名義変更・解約手続を進めやすくなります。
4.遺言執行者まで含めて設計しやすいから
相続対策で本当に大切なのは、「誰に何を渡すか」だけではありません。
誰がその内容を実現するのかまで考えておく必要があります。 そこで重要になるのが、遺言執行者です。
遺言執行者を定めておくと、相続開始後に遺言内容の実現を進めやすくなります。
当サイトの解決事例でも、他の推定相続人と連絡が取れないため、遺産分割協議を回避する目的で公正証書遺言と遺言執行者の指定を行ったケースを紹介しています。
相続人の一部と連絡が取れない、海外在住の相続人がいる、といったケースでは、遺言執行者の有無が手続の進み方に大きく影響します。
5.付言事項を活用して気持ちも残せるから
遺言書は、単に財産の分け方を記載するだけのものではありません。
なぜその分け方にしたのか、どのような思いで決めたのかを、付言事項として残すことができます。
たとえば、介護をしてくれた親族に多めに残したい、日ごろ世話になった甥に遺したい、といった事情がある場合、付言事項があることで他の相続人の納得感が高まることがあります。
実際に、お子さまのいない方の遺言書の解決事例でも、甥に遺産を託す理由や感謝の気持ちを付言事項として残したことで、より争いにくい設計にしています。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 本人が自書して作成 | 公証人が関与して作成 |
| 手軽さ | 高い | やや手間がかかる |
| 形式不備のリスク | ある | 低い |
| 紛失・隠匿のリスク | ある | 低い |
| 検認 | 必要な場合が多い | 不要 |
| おすすめ度 | 簡易なケース向き | 確実性重視なら最有力 |
このように比較すると、「すぐに書けること」では自筆証書遺言に利点がありますが、「確実に実現されること」では公正証書遺言に大きな利点があります。
特に公正証書遺言をおすすめしたい方
次のような方は、特に公正証書遺言を検討すべきです。
- 不動産を複数お持ちの方
- 非上場株式を保有している方
- 相続人の人数が多い方
- 子どものいないご夫婦
- 兄弟姉妹や甥姪が相続人になり得る方
- 相続人の一部と疎遠な方
- 特定の方に多めに遺したい方
- 事業承継も見据えている方
当事務所は、不動産や非上場株式を含む相続案件に注力しています。
こうした財産は分け方が難しく、相続人同士の意見が対立しやすいため、遺言書で承継先を明確にしておく意味が特に大きいといえます。
公正証書遺言を作る前に準備しておきたいこと
公正証書遺言をスムーズに作成するためには、事前準備が重要です。
当サイトの相続相談の前にやっておくとよいことでも解説しているとおり、まずは次の情報を整理しておくと、相談が充実します。
- 推定相続人の情報
- 遺贈したい相手がいる場合はその方の情報
- 預貯金の情報
- 不動産の情報
- 有価証券、非上場株式の情報
- 生命保険などの情報
また、次の点も整理しておくと、よりよい遺言書になりやすくなります。
- 誰に何を承継させたいのか
- なぜその分け方にしたいのか
- 遺言執行者を誰にするか
- 遺留分に配慮が必要か
- 相続開始後に想定されるトラブルは何か
「家族仲がよいから大丈夫」とは限りません
相続のご相談では、「うちは家族仲がよいので、相続でもめることはないと思っていました」というお話をよく伺います。
しかし、相続が始まると、感情・お金・不動産・これまでの家族関係が一気に表面化することがあります。 しかも、もめる原因は、財産の額そのものだけではありません。
- 連絡がつかない相続人がいる
- 不動産を誰が取得するか決まらない
- 生前の介護や援助に対する思いの差がある
- 過去の家族関係が蒸し返される
このような事情があると、相続人全員の合意を前提とする遺産分割協議は、思った以上に難しくなります。
だからこそ、元気なうちに、公正証書遺言で方向性を明確にしておくことが重要です。
まとめ|遺言書は「書くこと」より「実現されること」が大切です
遺言書を作るなら、公正証書遺言にすべき最大の理由は、実際に使われ、実際に役立つ遺言になりやすいからです。
- 形式不備で無効になりにくい
- 紛失や隠匿のリスクが小さい
- 検認が不要で相続開始後の負担を減らしやすい
- 遺言執行者や付言事項まで含めて設計しやすい
特に、不動産や非上場株式がある方、相続人が多い方、子どものいないご夫婦、相続人の一部と疎遠な方は、早めに遺言書を検討したほうがよいでしょう。
遺言書は、ご自身の意思を残すためだけでなく、残されるご家族の負担を減らすための大切な準備です。
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公正証書遺言を作成すべきか迷っている方、どのような内容にすればよいか分からない方は、早めに弁護士へご相談ください。
当事務所では、不動産・非上場株式を含む複雑な相続案件に対応しており、遺言書作成についてもご相談いただけます。
遺言書作成に関するよくあるご質問(FAQ)
Q1.自筆証書遺言ではだめなのですか?
A.だめというわけではありません。ただし、自筆証書遺言は形式不備で無効になるおそれがあり、自宅保管だと紛失や隠匿のリスクもあります。確実性を重視するのであれば、公正証書遺言をおすすめします。
Q2.公正証書遺言にすれば、相続でもめなくなりますか?
A.絶対にもめないとはいえません。ただ、公正証書遺言にしておくことで、方式面や存在面の争いは起きにくくなります。また、遺言執行者や付言事項まで整えておくことで、争いの予防効果を高めることができます。
Q3.子どもがいない夫婦こそ遺言書が必要なのですか?
A.はい。子どもがいないご夫婦では、兄弟姉妹や甥姪が相続人になることがあり、人数が多くなったり、関係が薄かったりして、遺産分割協議が難航しやすくなります。そのため、遺言書作成の必要性が高い類型といえます。
Q4.法定相続人ではない人にも財産を残せますか?
A.遺言書があれば可能です。たとえば、内縁の配偶者、お世話になった親族、特定の甥姪などに財産を遺したい場合、遺言書で意思表示しておくことが重要です。
Q5.公正証書遺言を作る前に、何を準備すればよいですか?
A.推定相続人の情報、財産の内容、不動産や預貯金の資料、誰に何を承継させたいかという希望を整理しておくと、相談がスムーズです。詳しくは、相続相談の前にやっておくとよいこともご参照ください。
Q6.遺言執行者は必ず決めたほうがよいですか?
A.必須ではありませんが、実務上は決めておくことをおすすめします。特に、相続人が多い場合、相続人の一部と疎遠な場合、遺贈先がいる場合には、遺言執行者がいることで手続を進めやすくなります。 ※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。
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執筆者:弁護士小林洋介

