相続を弁護士に相談するメリット──不動産・非上場株式・事業承継で「損しない」ための判断軸
相続が発生したとき、手続きや遺産分割の相談を「誰にすればよいのか」で迷われる方は少なくありません。税理士、司法書士、銀行、そして弁護士。それぞれに役割があり、どの専門家が適しているかは、遺産の中身と相続人の関係によって変わります。
結論から申し上げると、遺産の中に不動産や非上場株式(同族会社の株式)が含まれる場合、相続人の間に対立の芽がある場合、あるいは遺留分や使い込みといった争点がある場合には、早い段階で弁護士に相談する意義が比較的明確です。評価をめぐって最終的な取り分が大きく変わりうる財産だからです。この記事では、相続相談を弁護士にするメリットと、特に弁護士に頼むべきケースを、実務の視点から整理します。
結論──弁護士に相談すべきかの判断軸
- 相続人同士の交渉・調停・訴訟を本人に代わって代理できるのは、原則として弁護士だけです(税理士には代理交渉権限がなく、司法書士は認定を受けた場合に140万円以下の簡易裁判所の事件を扱えるにとどまり、家庭裁判所の調停・審判は代理できません)。
- 不動産・非上場株式は評価の幅が大きく、評価をめぐる主張しだいで取り分が数百万円から数千万円単位で変わることがあります。
- 遺産分割・遺留分・使途不明金・相続税・登記といった複数の論点を、全体最適の視点から一つの方針にまとめられます。
- 相続放棄(原則3か月)や相続税申告(10か月)など、期限のある手続きを見据えた設計ができます。
- もめてから相談するより、争いの芽がある段階での早期相談のほうが、選べる選択肢が多く、結果的に費用対効果も高くなる傾向があります。
相続相談は「誰に」すべきか──弁護士・税理士・司法書士・銀行の役割分担
相続に関わる専門家は複数あり、できることと守備範囲が異なります。ご自身の悩みがどこにあるかで、最初に相談すべき相手が変わります。
| 相談先 | 主な守備範囲 | 他の相続人との交渉・代理 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割協議・調停・訴訟、遺留分侵害額請求、使途不明金、遺言作成・執行、財産評価をめぐる交渉 | 可能(本人の代理人として交渉・調停・訴訟ができる) | 相続人間に対立がある/不動産・非上場株式など評価が争点になる/遺留分・使い込みがある |
| 税理士 | 相続税の試算・申告、非上場株式の税務上の評価、生前の相続税対策 | 不可 | 相続税の申告が必要/生前の節税対策を検討したい |
| 司法書士 | 不動産の相続登記、法定相続情報の作成、(一定範囲で)遺産分割協議書の作成 | 不可(簡裁の一部を除き代理権限は限定的) | 相続人間に争いがなく、登記手続きが中心 |
| 銀行・信託銀行 | 遺産整理業務の取りまとめ、遺言信託 | 不可(争いのある案件は原則取り扱わない) | 手続きの窓口を一本化したい/争いがない |
重要な違いは、他の相続人との交渉や、調停・訴訟の代理を本人に代わって行えるのは弁護士だけだという点です。税理士や司法書士は、それぞれの専門領域では欠かせない存在ですが、相続人同士が対立している局面では、代理人として矢面に立つことができません。逆に、争いがなく相続税申告や登記が中心であれば、税理士・司法書士が適していることも多くあります。当事務所は、税務は提携税理士、登記は提携司法書士と連携しながら、法律面を弁護士が担う体制でお受けしています。
弁護士に相続相談をする5つのメリット
1. 交渉・調停・訴訟を本人に代わって進められる
相続人同士の話し合いは、感情のもつれから当事者だけでは進まなくなることが少なくありません。弁護士が代理人として間に入ることで、直接顔を合わせずに交渉を進められ、話し合いがまとまらない場合には遺産分割調停・審判へと手続きを引き継げます。当事者本人に代わって法的な主張と交渉を担えるのは、専門家の中で弁護士だけです。
2. 全体を見渡して方針を設計できる
相続は、遺産分割・遺留分・相続税・登記・使途不明金といった論点が同時に絡むことが多く、一つずつ別々に対処すると全体としては不利になることがあります。弁護士は、これらを一つの方針の中で優先順位づけし、どこで争い、どこで譲るかを含めた全体最適の解決を設計できます。
3. 財産の「評価」をめぐって損をしない主張ができる
預貯金は金額が明確ですが、不動産や非上場株式は評価の方法によって金額が大きく変わります。相続税の課税上の評価額(路線価・財産評価基本通達に基づく評価)と、遺産分割・遺留分で用いるべき時価は必ずしも一致しません。ここで適切な主張ができるかどうかで、最終的な取り分が変わります。IGTでは、不動産鑑定士や税理士と連携し、評価そのものを争点として組み立てます。
4. 期限のある手続きを見据えて動ける
相続には期限のある手続きがあります。相続放棄・限定承認は原則として相続開始を知った時から3か月以内、相続税の申告・納付は10か月以内が原則です。遺留分侵害額請求にも期間の制限があります。弁護士は、これらの期限から逆算して、いつまでに何を判断すべきかを整理できます。
5. 紛争を予防できる(生前対策・遺言)
弁護士の関与は、争いが起きてからだけではありません。遺言書の作成や生前対策の段階で相談することで、将来の紛争そのものを予防できます。特に、事業承継や不動産が絡む相続では、遺留分に配慮した遺言や生前贈与の設計が、後の争いを大きく減らします。
特に弁護士に相談すべきケース
不動産が主要な遺産であるケース
自宅、収益物件、底地・借地、共有持分など、不動産が遺産の中心を占める場合、「誰が取得するか」「いくらと評価するか」「売却するか分割するか」が争点になります。評価額の主張しだいで代償金の額が大きく動くため、早期に弁護士が関与する意義が大きい類型です。
非上場株式・同族会社の株式があるケース
同族会社のオーナーが亡くなった場合、その株式が遺産に含まれます。非上場株式は市場価格がなく、評価方法(純資産価額方式・類似業種比準方式など)や少数株主か支配株主かによって評価が大きく変わります。会社の経営権や事業承継とも直結するため、専門的な検討が欠かせません。
遺留分・使途不明金の問題があるケース
特定の相続人に偏った遺言や生前贈与がある場合、遺留分侵害額請求の当否とその金額が争点になります。また、被相続人の預金の使い込み(使途不明金)が疑われる場合もあります。いずれも、証拠と評価の両面から冷静に見立てることが重要で、追及すべきかどうかの判断自体に専門的な検討が必要です。
相続人の間に対立や不信があるケース
すでに話し合いが感情的になっている、連絡が取れない相続人がいる、一部の相続人が財産を開示しないといった場合には、当事者だけで公平な分割に到達するのは困難です。代理人として交渉・調停を担える弁護士の関与が有効です。
「損しない」とは何か──評価をめぐる実務
相続で「損をする」場面の多くは、財産の評価を安易に受け入れてしまうところで生じます。特に不動産と非上場株式は、依頼者側の主張と相手方の主張とで評価額に大きな開きが出ることがあり、その差がそのまま取り分の差になります。
たとえば遺留分侵害額請求では、対象となる不動産をいくらと評価するかで請求額・支払額が変わります。相手方が高い評価額を前提に多額の請求をしてきた事案で、不動産鑑定によって評価額を見直し、支払額を大きく圧縮できたケースもあります(遺留分・不動産評価をめぐる解決事例)。遺産分割でも、全物件について鑑定を取り、当初提示より有利な取得を実現した事例があります(遺産分割・不動産評価をめぐる解決事例)。
非上場株式についても、少数株主のトラブルや遺産分割・遺留分の局面で、適正な評価と資金化を実現してきました(非上場株式の相続のご案内、非上場株式の買取をめぐる解決事例)。使途不明金についても、「すべて追及するのが得とは限らない」という費用対効果の見極めから助言しています(使途不明金を追及すべきか、遺留分侵害額請求コラム)。
いずれの結論も個別事情によるものであり、同様の結果を保証するものではありません。ただ、評価を「争点」として扱えるかどうかが、結果を左右する分かれ目になることは、実務上たしかに言えます。
相談のタイミングと費用の考え方
ご相談のタイミングは「早いほどよい」というのが率直なところです。分割協議に署名・押印してしまった後や、遺留分の期間が経過した後では、取りうる選択肢が限られます。逆に、争いの芽が見えた段階、あるいは生前対策の段階であれば、予防も含めて幅広い方針を検討できます。
費用面では、初回相談の負担を抑えられるかどうかがひとつの目安になります。当事務所では初回60分の無料相談をご用意しています。着手金・報酬の考え方は案件の類型によって異なりますので、見通しと費用を初回相談であわせてご説明します(弁護士費用のご案内)。相談すべきか迷う段階でも、費用対効果の見立てを含めてお話しできます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続をまだもめていなくても弁護士に相談してよいですか。
はい。もめていない段階のご相談も歓迎しています。むしろ、分割協議に入る前や生前対策の段階でご相談いただくほうが、将来の紛争を予防でき、選べる選択肢も多くなります。もめてからより、もめる前のほうが、弁護士にできることは多いのが実情です。
Q2. 税理士や司法書士とは何が違うのですか。
税理士は相続税の申告、司法書士は相続登記を主に担います。これに対して弁護士は、他の相続人との交渉や、遺産分割調停・訴訟の代理を本人に代わって行えます。争いのない手続きが中心なら税理士・司法書士、対立や評価の争点があるなら弁護士、という整理が目安です。当事務所は税理士・司法書士と連携して対応します。
Q3. 不動産や非上場株式が遺産にある場合、なぜ弁護士なのですか。
これらの財産は評価の幅が大きく、評価額の主張しだいで取り分が大きく変わるためです。評価を争点として組み立て、必要に応じて不動産鑑定士や税理士と連携できる点が、弁護士に相談する意義になります。
Q4. 自分の相続分(持分)だけの相談でも受けてもらえますか。
はい。ご自身の取り分や持分に関するご相談も承ります。共有持分の扱いや、他の相続人との調整方針についても、見通しをお伝えします。
Q5. 相談前に何を準備すればよいですか。
被相続人の戸籍・除籍、遺言書(あれば)、遺産の一覧がわかる資料(不動産の登記事項証明書・固定資産税評価証明書、預金の残高がわかるもの、株式の資料など)があると、初回相談で具体的な見通しをお伝えしやすくなります。すべて揃っていなくても構いません(初回無料相談の流れ)。
相続でお悩みの方へ──IGTができること
弁護士法人IGT法律事務所は、不動産と非上場株式の相続で「損をしない」ことを軸に、遺産分割・遺留分・使途不明金・事業承継・生前対策まで幅広く対応しています。評価を争点として組み立て、税理士・司法書士・不動産鑑定士と連携しながら、全体最適の解決を設計します。
相続人の間に対立の芽がある方、遺産に不動産や同族会社の株式が含まれる方、遺留分や使い込みが気になる方は、方針が固まる前の段階でご相談ください。初回60分の無料相談で、見通しと費用の考え方をあわせてご説明します。
▶ 初回60分無料相談のご予約はこちら/▶ 担当弁護士のプロフィール
参考にした一次情報
- 民法(相続・遺留分・相続放棄等):e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- 裁判所ウェブサイト(遺産分割調停・審判等の手続案内):https://www.courts.go.jp/
- 国税庁(相続税・財産評価基本通達等):https://www.nta.go.jp/
本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。個別の事案の見通しは、必ず弁護士にご相談ください。
【この記事の執筆者】
執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)
弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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