会社から株式買取提案|即答NGの正しい対応

会社から株式買取提案|即答NGの正しい対応

会社から株式買取提案|即答NGの正しい対応

■本コラムの結論:絶対に「即答」や「合意書へのサイン」をしてはいけない理由

非上場会社(同族会社など)の経営陣や親族から、「あなたの持っている株式を買い取りたい」という提案や合意書が突然送られてきた場合、提示された金額で即答したり、安易にサインをしてはいけません。

その理由は、会社側から最初に提示される買取価格が、税務上の評価額などを基にした金額であることが多く、会社の純資産や将来の収益力を反映した「適正な時価」として妥当とは限らないからです。評価の目的、算定方法、会社の資産・収益、売買の法的な仕組みを確認したうえで判断する必要があります。

一度合意してしまうと、後から「安すぎた」と気づいても覆すことは極めて困難になります。

■なぜ会社(経営陣)は突然あなたの株式を買い取りたがるのか?

会社側が少数株主から株式を買い集めたいと考える背景には、主に以下の理由があります。

  1. 経営権の安定と集中: 外部や経営に関与していない親族に株式が分散していると、将来の事業承継やM&A(会社売却)の障壁となるため。

  2. スクイーズアウト(少数株主の締め出し)の事前準備: 強制的に株式を買い上げる法的手続きを実行する前に、できるだけ安く、かつ穏便に株式を回収しておきたいため。

  3. 会社の業績好調(または上場準備): 実は会社の価値が大きく上がっており、今のうちに安値で買い取ってしまおうという意図があるケース。

■提示された「買取価格(株価)」が不当に低いケースと適正価格の考え方

非上場株式には市場価格(上場企業のような日々の株価)がありません。そのため、会社側は「額面価格」や「相続税評価額(路線価などの税金計算用の低い価格)」を提示してくることがよくあります。

しかし、少数株主が会社(支配株主)に株式を譲渡する場合の適正な価格は、会社の実際の資産価値や収益力に基づく時価純資産法・DCF法・収益還元法などの客観的な評価手法を用いて算定されるべきです。この算定には、決算書等の詳細な財務データが不可欠です。

■少数株主が取るべき「正しい対応」の3ステップ

買取提案を受けた少数株主は、以下のステップで冷静に対処してください。

  • ステップ1:回答を「保留」する 「提案内容は確認しましたが、適正な価格か判断するため、専門家に相談して検討します」と伝え、期限を区切って回答を保留します。

  • ステップ2:根拠となる財務資料の開示を求める 提示された株価の算定根拠となる資料(直近3期分の決算書、法人税申告書、勘定科目内訳明細書、株価算定書など)の開示を会社に求めます。会社法上、株主は計算書類(貸借対照表・損益計算書など)の閲覧・謄写を請求でき(会社法442条3項)、議決権または発行済株式の3%以上を持つ株主は会計帳簿の閲覧・謄写も請求できます(同法433条1項)。法人税申告書や株価算定書の開示は任意の交渉で求めることになります。

  • ステップ3:非上場株式に強い弁護士へ相談・算定を依頼する 開示された資料をもとに、弁護士や公認会計士に適正な株価の算定を依頼します。適正価格が判明した段階で、弁護士を代理人として会社側と本格的な「価格引き上げ交渉」を開始します。当事務所の買取事例をご確認ください → 非上場株式買取|少数株主を代理して株式を売却し、約1億6000万円を獲得した事例

状況に応じて、次のページもあわせてご覧ください。

■【FAQ】会社からの株式買取提案に関するよくある質問

Q. 会社からの買取提案を無視し続けるとどうなりますか?

A. 会社側がどうしても株式を回収したい場合、議決権の90%以上を持つ特別支配株主による株式等売渡請求(会社法179条。株主総会決議は不要)や、議決権の3分の2以上を持つ場合の株主総会の特別決議による株式併合など、強制的に少数株主から株式を買い上げる「スクイーズアウト」という法的手続きに踏み切る可能性があります。放置せず、早めに専門家を交えて交渉のテーブルに着くことが重要です。

Q. 「この価格で売らないなら配当も出さない」と言われました。違法ではないですか?

A. 非上場会社では、利益が出ていても経営陣の判断で配当を出さない(無配とする)ことが法的に認められるケースが多いのが実情です。これを「兵糧攻め」と言います。少数株主としては配当を待ち続けるより、会社法上の譲渡承認請求と買取先指定請求(承認しないなら会社または指定買取人が買い取るよう求める請求。会社法136条・138条・140条)の制度を活用し、適正な価格での株式の現金化(エグジット)を目指す方が現実的かつ有利な解決となります。

Q. 株価の算定や交渉を弁護士に依頼すると、費用倒れになりませんか?

A. 会社の規模や業績にもよりますが、会社からの当初提示額が数百万円であっても、弁護士が介入して適正な評価を行い交渉した結果、数千万円〜1億円以上へと大幅に増額するケースは珍しくありません。当事務所では、事前のヒアリングで「交渉によって増額が見込めるか(費用倒れにならないか)」の見通しを丁寧にご説明した上でご依頼を承ります。

(※法律上の見解は一般的な事例に基づくものであり、具体的な状況により結論は異なります。)

※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。

【この記事の執筆者】

弁護士 小林洋介

執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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