共有物分割請求とは?解決までの流れ・費用・3つの分割方法を弁護士が解説
執筆者:弁護士小林洋介 |
はじめに:共有不動産のトラブル、一人で悩んでいませんか?
「親から相続した実家が共有名義のまま放置されている」
「兄弟と共有している不動産を売りたいが、反対されている」
このように、不動産が共有状態にあることで、売却や活用ができずに困っているケースは少なくありません。共有状態の不動産は、権利関係が複雑になりがちで、放置すればするほど解決が難しくなります。
しかし、ご安心ください。法律上、共有状態は原則としていつでも解消(分割請求)することができます。
この記事では、共有物分割の基本、話し合い(任意分割)と裁判(訴訟)の違い、解決までの具体的な手順や費用の目安について、図解とともにわかりやすく解説します。
1. 共有物分割請求とは?(基本の仕組み)
共有物分割請求とは、共有名義になっている不動産などの財産を、法的な手続きを通じて解消(分割)することを指します。
原則として、共有者はいつでも分割を請求することができます4。
解決のアプローチは大きく分けて2段階あります。
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任意分割(話し合い): 当事者同士の話し合いで合意を目指す方法。
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共有物分割訴訟: 話し合いで合意できない場合、裁判所に訴えを起こして解決を図る方法。
※注意点:遺産相続との違い
相続が発生した直後の「遺産共有」の状態では、原則として「共有物分割」ではなく「遺産分割」の枠組みで解消することになります。
どちらの手続きになるか不明な場合は、弁護士にご相談ください。
2. 解決までの全体フロー
共有状態の解消は、一般的に以下の流れで進みます。
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交渉(任意分割): 共有者間で分割方法や条件を話し合います。
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調停: 話し合いがまとまらない場合、裁判所の調停委員を介して合意を目指します(※省略して訴訟へ移行することもあります)。
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訴訟: 裁判所が判決、または訴訟上の和解によって分割方法を決定します。
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実行: 登記の変更や代金の支払いを行い、解決となります。
3. 3つの分割方法(どうやって分けるか?)
共有物を分ける方法は、大きく分けて3つのパターンがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解して、最適な方法を選びましょう。
① 現物分割(土地を分ける)
土地を分筆するなどして、物理的に分けてそれぞれが単独所有する方法です。
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メリット: 権利関係がすっきりし、自分の土地として自由に使えるようになります。
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デメリット: 建物の形状や法規制により物理的に分けられない場合や、分けることで土地の価値が下がってしまう可能性があります9。
② 代償分割(相手の持分を買い取る/自分の持分を売る)
特定の共有者が不動産全体を取得し、他の共有者に対して「代償金」を支払う方法です(価格賠償とも呼ばれます)。
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メリット: 不動産をそのまま利用し続けたい場合に有効です。公平に金銭で精算できます。
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デメリット: 取得する側に、相手に支払うだけの資金力(現金やローンの利用)が必要です。また、いくらで評価するかで争いになることがあります。
③ 換価分割(売却して現金を分ける)
不動産全体を第三者に売却し、諸経費を引いた代金を持分に応じて分ける方法です。
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メリット: 公平に分配でき、当事者間に資金がなくても実行可能です。
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デメリット: 競売(裁判所主導の売却)になると、市場価格より安くなる傾向があります。
4. 「任意分割(交渉)」と「訴訟」の違い
どの手段を選ぶかによって、期間やコスト、精神的な負担が異なります。
4-1. 任意分割(交渉)
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特徴: 当事者間の話し合いで解決を目指します。
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メリット: 最も早く、低コストで解決できる可能性があります。分割方法(換価か価格賠償か)、評価額、資金計画などを明確にした上で「合意書」を作成します。
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ポイント: 弁護士が代理人として交渉することで、感情的な対立を抑え、法的に妥当なラインでの合意を目指せます。
4-2. 訴訟(共有物分割請求訴訟)
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特徴: 交渉が決裂した場合や、相手と連絡が取れない場合に選択します。
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メリット: 相手が応じなくても、最終的には判決によって強制的に解決(分割)が決まります。
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実情: 訴訟になっても、判決まで行かずに途中で「和解」が成立するケースも多くあります。
5. 期間と費用の目安
解決にかかる期間とコストは、選択する手続きによって異なります。
| 手続き | 期間の目安 | コスト・費用の考え方 |
| 任意分割 | 数か月程度 | 相談料、着手金、成功報酬、実費(不動産評価・登記費用など) |
| 調停 | 数か月 〜 1年程度 | 任意分割と同様ですが、期日対応などの弁護士工数が増加します。 |
| 訴訟 | 数か月 〜 1年超 | 難易度や不動産の評価額に連動した報酬設計になることが一般的です。 |
※具体的な費用は、不動産の価格や事案の複雑さによります。初回相談時に見積もりを提示いたします。
6. よくあるケース別の進め方
ご自身の状況に近いシナリオを確認してみてください。
ケースA:売りたいのに相手が反対している
査定書や具体的な売却計画を提示し、メリットを説明します。それでも反対する場合は、「あなたが私の持分を買い取ってください(価格賠償)」を提案し、相手に資金調達ができるか問いかけることで、現実的な解決(売却)へ誘導します。
ケースB:自分が単独で所有したい(住み続けたい)
他の共有者に支払う価格賠償金の資金計画(預貯金やローン)を準備します。
交渉がまとまらなくても、判決で「全面的価額賠償(代金を払って取得する)」が認められる可能性があります。
ケースC:相手が音信不通・行方不明
相手が見つからないからといって諦める必要はありません。
「公示送達」などの法的手続きを用いることで、不在のままでも訴訟を進め、最終的に換価分割(売却)を実現できる可能性があります。
7. 弁護士への相談前に準備しておくとスムーズなもの
初回相談をより有意義なものにするために、可能な範囲で以下の情報を整理しておくとスムーズです。
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不動産情報: 住所、登記簿謄本、固定資産税納税通知書(評価額がわかるもの)
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共有者の状況: 誰と共有か、相手の意向(同意・不同意)、連絡がつくか
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利用状況: 現在誰が住んでいるか、賃貸中か
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ご希望: 売りたいのか、買い取りたいのか
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これまでの経緯: どのような話し合いをしてきたかのメモ
まとめ:共有問題は先送りせず、早めの相談を
共有不動産の問題は、時間が経つほど相続等で関係者が増え、解決が難しくなります。
「話し合いがこじれてしまった」「どう進めればいいかわからない」という段階でも構いません。まずは専門家である弁護士にご相談ください。
【当事務所の無料相談】
当事務所では、共有物分割請求に関する初回相談を承っております。あなたの状況に合わせた最適な解決プランと費用をご提案します。まずはお気軽にお問い合わせください。
※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。
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