使途不明金|遺産預金を実効支配した他の相続人から預金750万円を回収
公開日:2025年11月2日/最終更新日:2026年9月28日(事例の要点表とよくあるご質問を追加)
この事例の要点
| 事件の種類 | 遺産預金の返還請求(交渉) |
|---|---|
| ご依頼者 | 長女と次男 |
| 相手方 | 長男 |
| 経緯 | 預金を3人で分ける遺産分割協議が成立した後、長男が単独で預金を引き出して管理下に置いた |
| 当事務所の対応 | 内容証明郵便で遺産分割協議に基づく支払を請求し、訴訟のリスクを説明して交渉。不動産の管理方法も合意書で再整理 |
| 結果 | 訴訟を起こさず、750万円を任意に回収 |
※個別の事情を前提とした結果です。同様の結果をお約束するものではありません。
■本事例の結論と解決のポイント
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結論: お母様の相続において、すでに遺産分割協議が成立していたにもかかわらず、長男が勝手に被相続人名義の預金を引き出し、実効支配(事実上の使い込み状態)していた事案です。当事務所が長女および次男の代理人として介入し、「内容証明郵便」による返還請求と粘り強い交渉を行った結果、裁判(訴訟)に発展させることなく、法定相続分である預金750万円を任意で早期回収することに成功しました。
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解決のポイント: 遺産の無断引き出しトラブルは、当事者同士で話し合うと感情的な対立から「言った・言わない」の水掛け論になりがちです。弁護士という第三者が代理人として介入し、法的な根拠(遺産分割協議書の効力)に基づく毅然とした請求を行ったことが、相手方にプレッシャーを与え、訴訟回避とスピード解決につながった最大の要因です。
■ご相談時の状況とお客様の悩み
お母様が亡くなられ、相続人はご兄弟3人(長男、長女、次男)でした。 当初は当事者間で話し合いが行われ、「被相続人名義の預金は3人で分ける」旨を記載した遺産分割協議書がすでに成立していました。
ところがその後、相続人の一人である長男が単独で金融機関から遺産預金を引き出し、ご自身の管理下に置いて実効支配してしまいました。
さらに、遺産である不動産の管理についても、遺産分割協議書で定めたルールを無視した行動をとっていました。
約束を反故にされた長女と次男は、「これ以上自分たちで兄と話し合ってもらちが明かない」とお困りになり、当事務所へご相談にいらっしゃいました。
■弁護士の対応・解決策
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内容証明郵便による法的な返還請求: ご依頼を受けた当事務所は、直ちに長女・次男の代理人として、長男に対して「内容証明郵便」を送付しました。これにより、遺産分割協議書に基づく正当な預金分配の請求であることを公式な記録として突きつけました。
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粘り強い交渉による任意回収(訴訟の回避): 内容証明郵便の送付後、長男側と直接交渉を開始しました。弁護士が法的なリスク(不当利得返還請求訴訟などに発展する可能性)を説得し、粘り強く交渉を続けた結果、長男も応じざるを得なくなり、訴訟を起こすことなく任意で750万円を回収しました。
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不動産管理のルール再構築: 預金の回収だけでなく、問題となっていた「遺産不動産の管理方法」についても改めて交渉を行いました。将来再びトラブルが起きないよう、合理的かつ明確な管理方法を定めた合意書を新たに作成し、根本的な解決を図りました。
■IGTからのコメント
遺産の使い込みや使途不明金の問題は、親族間の信頼関係が完全に崩壊しているため、非常にストレスの大きいトラブルです。
本件のように「遺産分割協議書」という明確な合意がすでに存在する場合、約束を破った相手に対する請求の法的根拠は強力です。
しかし、相手が「お金は返さない」と開き直っている場合、そのまま放置すればお金が生活費等に消えてしまい、取り戻すのがさらに困難になるリスクがありました。
使い込み問題は「スピード」が命です。当事務所が代理人として迅速に動き、裁判という時間と費用のかかる手続きを回避して早期に現金を回収できたことで、ご依頼者様に大変喜んでいただけた事案でした。
■【FAQ】遺産の使い込み・使途不明金に関するよくある質問
Q. 相続人の一人が勝手に預金を引き出しました。横領や窃盗などの犯罪にはならないのですか?
A. 刑法には親族間の財産犯罪の特例(親族相盗例)があり、配偶者・直系血族・同居の親族の間では刑が免除され、それ以外の親族の間では告訴がなければ起訴できません(刑法244条・255条)。刑事手続による解決は期待しにくいため、多くの場合、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求といった民事の手続で返還を求めます。
Q. 遺産分割協議で決まったことを守らない兄弟には、どう対処すべきですか?
A. 有効に成立した遺産分割協議は、相続人全員を拘束します。まずは内容証明郵便で履行を求め、それでも応じなければ訴訟を起こし、判決を得て強制執行(差押え)をすることになります。
Q. 使い込みを取り返すために、必ず訴訟をしなければなりませんか?
A. 必ずしも訴訟になるとは限りません。本件のように、弁護士が代理人として訴訟になった場合のリスクを具体的に伝えることで、交渉だけで任意に返還されることもあります。時間が経つとお金が使われてしまうおそれがあるため、早めの対応が重要です。
Q. 遺産分割の前に預金が引き出された場合はどうなりますか?
A. 遺産分割前に一部の相続人が預金を処分した場合、他の相続人全員が同意すれば、その処分された預金も遺産分割の時点で遺産として存在するものとみなして分けることができます(民法906条の2)。処分した本人の同意は不要です。
(※法律上の見解は一般的な事例に基づくものであり、具体的な状況により結論は異なります。)
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※ 本ページは、最終更新日(2026年9月28日)時点の法令・判例・実務に基づいて作成しています。解決の結果は個別の事情を前提としたもので、同様の結果をお約束するものではありません。
【この記事の執筆者】
執筆・監修:弁護士 小林 洋介(こばやし ようすけ)
弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士
慶應義塾大学法学部卒業/東京大学法科大学院修了
東京弁護士会所属(相続遺言部会)/認定経営革新等支援機関/2級FP技能士
相続・事業承継分野を中心に、遺産分割・遺留分侵害額請求・生前対策まで幅広く対応。
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