共有物分割請求を無視されたら?回答がない場合の対処法と訴訟への踏み切り方

共有物分割請求を無視されたら?回答がない場合の対処法と訴訟への踏み切り方

執筆者:弁護士小林洋介

弁護士法人IGT法律事務所

代表パートナー弁護士 保有資格:弁護士、経営革新等支援機関、2級FP技能士

東京弁護士会相続遺言部所属

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「相続した不動産が共有状態のままになっている」 「共有者の一人が話し合いに応じず、手紙を送っても無視される」 「早く共有状態を解消したいのに、相手が逃げ回っていて話が進まない」

共有不動産や共有物の問題において、こうした**「共有者からの無視・放置」**は、実は非常に多いトラブルの一つです。話し合いで解決しようと努力しても、相手が無反応であれば、時間ばかりが過ぎていき、精神的なストレスは計り知れません。

しかし、相手が無視を決め込んでいる場合こそ、法的な解決手続きに移行する絶好のタイミングでもあります。法律上、共有状態の解消は共有者の正当な権利であり、相手が無視をしたとしても、手続きを止めることはできないからです。

本記事では、共有物分割請求を無視された場合の具体的な対処法から、最終的な解決手段である「共有物分割訴訟」の流れ、そして弁護士に依頼するメリットについて、不動産トラブルに詳しい弁護士が徹底解説します。

共有不動産のトラブルを弁護士に相談するなら


1. 共有物分割請求を「無視」されるリスクとは?

まず、相手からの反応がないからといって、そのまま放置してしまうことのリスクを理解しておきましょう。「そのうち連絡が来るだろう」と待っていることは、事態を悪化させる最大の要因です。

固定資産税や管理費の負担が続く

共有不動産である以上、たとえあなたがその土地や建物を使用していなくても、持分に応じた固定資産税や都市計画税の納税義務が発生します。マンションであれば管理費や修繕積立金も同様です。相手が無視している間も、あなたの財布からはお金が出ていき続けることになります。

さらなる相続で権利関係が複雑化する

時間が経過する最大のリスクは「新たな相続」の発生です。共有者の誰かが亡くなると、その持分がさらにその相続人へと分割されます。 当初は2〜3人の共有だったものが、数年の放置でネズミ算式に共有者が増え、10人、20人となってしまうケースも珍しくありません。こうなると、全員の合意を得ることは事実上不可能となり、不動産の価値は著しく毀損します。

建物の老朽化と法的責任

建物が老朽化し、外壁が崩落して通行人に怪我をさせた場合などは、共有者全員が損害賠償責任(工作物責任)を負う可能性があります。「自分は住んでいないから関係ない」「相手が無視しているから管理できない」という言い訳は通用しません。


2. 相手が無視・拒否する場合の初期対応:内容証明郵便

電話や普通郵便での連絡を無視されている場合、漫然と連絡を続けるのは時間の無駄です。法的手続きを見据えた「証拠作り」と「心理的プレッシャー」を与える段階へ移行します。

内容証明郵便(配達証明付き)を送付する

最初に行うべきは、「共有物分割協議の申入れ」を内容証明郵便で送ることです。 内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を日本郵便が証明してくれるサービスです。これに「配達証明」をつけることで、相手が確実に受け取ったことの証明になります。

内容証明郵便を送る2つの目的

  1. 本気度を伝える(心理的効果) 普段見慣れない形式の書面が届くことで、「今までのように無視して逃げることはできない」「相手は本気で法的手続きを考えている」というプレッシャーを相手に与えます。これにより、慌てて連絡をしてくるケースも少なくありません。

  2. 訴訟の前提となる事実証明(法的効果) 将来的に裁判(共有物分割訴訟)になった際、「事前に話し合いによる解決を求めたが、相手が応じなかった(協議が整わなかった)」という客観的な証拠になります。これは、いきなり訴訟を起こすのではなく、然るべき手順を踏んだことを裁判所に示すために重要です。

弁護士名義で送付する効果

ご自身で内容証明を作成することも可能ですが、弁護士名義で送付する効果は絶大です。 差出人が「弁護士」となっているだけで、相手方は「訴訟を起こされるかもしれない」という危機感を強く抱きます。これまで無視を続けていた相手でも、弁護士が出てきた途端に交渉のテーブルに着くことは、実務上非常によくあることです。


3. 話し合いにならない場合の切り札「共有物分割訴訟」

内容証明郵便を送っても無視される、あるいは「絶対に売らない」「ハンコは押さない」と頑なな態度を取られる場合、当事者同士での解決は不可能です。

この場合、裁判所に対して「共有物分割訴訟」を提起することになります。

共有物分割訴訟とは?

共有物分割訴訟とは、話し合い(協議)で分割がまとまらない場合に、裁判所が強制的に分割方法を決める手続きです。 この訴訟の最大の特徴は、「訴えを起こせば、必ず何らかの形で決着がつく」という点です。裁判所は「分割しない」という判決を出すことは原則としてできません(例外を除く)。つまり、無視を決め込む相手に対しても、強制的に共有関係を終わらせることができるのです。

調停(話し合い)を飛ばして訴訟できるか?

離婚などの家事事件では、訴訟の前に「調停」を行わなければならない「調停前置主義」がありますが、共有物分割訴訟にはこれが適用されません。 つまり、相手が無視を続けているような悪質なケースでは、調停を挟まずに、いきなり地方裁判所へ提訴することが可能です。これにより、無駄な時間を省き、早期解決を目指すことができます。


4. 裁判所が決める「3つの分割方法」

共有物分割訴訟では、裁判所が以下の3つの方法の中から、事案に即した最適な分割方法を決定します。原告(あなた)が希望する方法を主張することはできますが、最終的な判断は裁判所の裁量に委ねられます。

① 現物分割(げんぶつぶんかつ)

土地を物理的に分筆し、それぞれの単独所有にする方法です。 (例:100坪の土地を50坪ずつに分けて、AさんとBさんの単独所有地にする) 最も原則的な方法ですが、建物がある場合や、土地が狭くて分けると価値が下がる場合などは採用されにくい傾向があります。

② 賠償分割(全面的価格賠償)

特定の共有者(例えばあなた)が不動産全体を取得し、その代わりに、他の共有者(相手方)に対して持分に応じた「代償金」を支払う方法です。 (例:あなたが土地建物をすべて取得し、相手に持分相当額の現金500万円を支払う) この方法は、「不動産を単独で取得したい」「現金を支払う能力がある」という場合に有効です。実務上、非常に多く採用される解決策です。

③ 換価分割(競売)

現物分割も賠償分割もできない、あるいは適切でない場合に採用される方法です。 不動産を「競売」にかけ、売却代金から経費を引いた残りを、持分に応じて共有者全員で山分けします。 (例:裁判所主導で競売にかけ、落札額を現金で分ける)

【重要】競売のリスク

競売(けいばい)になると、市場価格の6〜8割程度という安値で買い叩かれるリスクがあります。これは共有者全員にとって経済的な損失です。 そのため、訴訟の過程で「競売になるくらいなら、適正価格で売却(任意売却)して分けましょう」あるいは「代償金を支払うので和解しましょう」という和解交渉が成立するケースが多くあります。 訴訟は、あくまで「判決」を目指すだけでなく、こうした有利な「和解」を引き出すための強力な武器となるのです。


5. 弁護士に依頼するメリットと費用対効果

共有物分割請求は、ご自身で行うことも不可能ではありませんが、相手が無視をしているような複雑なケースでは、弁護士への依頼が解決への近道です。

① 精神的ストレスからの解放

弁護士に依頼した時点で、相手方との連絡窓口はすべて弁護士になります。あなたは、理不尽な対応をする共有者と直接話す必要が一切なくなります。また、無視されることへの苛立ちや不安からも解放されます。

② 適正な評価額と分割案の提示

不動産の価値は、評価方法(固定資産税評価額、路線価、実勢価格など)によって大きく異なります。相手方は安く買い叩こうとしたり、不当に高い金額を要求してくるかもしれません。 弁護士は、不動産鑑定士と連携するなどして適正な評価額を算出し、あなたにとって最も経済的利益が大きくなる分割案を主張します。

③ 訴訟を見据えた戦略的交渉

単に手紙を送るだけでなく、「このまま無視を続ければ、訴訟になり、最終的には競売で損をすることになる」という法的リスクを相手に論理的に説明し、交渉を有利に進めます。 訴訟になった場合も、複雑な訴状の作成や法廷での主張・立証はすべてプロである弁護士が行います。


6. よくある質問(Q&A)

Q. 相手の住所が分からない場合はどうすればいいですか?

A. 弁護士であれば調査可能です。 相手が行方不明であったり、住所が変わっている場合でも、弁護士は職務上請求(戸籍や住民票の取り寄せ)を行い、現在の住所を調査することができます。それでも不明な場合は、「公示送達」という手続きを利用して訴訟を進めることが可能です。

Q. 私の持分がわずか(数十分の一)でも請求できますか?

A. はい、持分の割合に関係なく請求可能です。 共有持分がどれだけ少なくても、共有物分割請求権は民法で認められた正当な権利です。遠慮する必要はありません。むしろ、少数の持分を持っているだけで管理責任を負わされるリスクを避けるためにも、早めの解消をお勧めします。

Q. 訴訟にはどれくらいの期間がかかりますか?

A. 早ければ半年、長引けば1年以上かかることもあります。 ただし、訴訟提起後に相手が話し合いに応じ、早期に和解が成立するケースも多々あります。無視を続けられる時間を考えれば、訴訟に踏み切った方が結果的に早く解決することが多いといえます。


7. 放置は禁物。まずは弁護士の無料相談へ

共有物分割請求を無視されている状況は、自然に解決することは決してありません。時間が経てば経つほど、権利関係は複雑になり、不動産の価値は下がり、あなたの負担は増え続けます。

相手からの回答がない今こそ、「待つ」のをやめて「動く」タイミングです。

当事務所では、共有不動産のトラブル解決に豊富な実績を持つ弁護士が、あなたの状況に合わせた最適な解決プランをご提案します。 「訴訟まではしたくないが、相手に反応させたい」 「早急に現金化して共有関係から抜け出したい」 「相手に会わずにすべて任せたい」

どのようなご希望でも構いません。まずは一度、当事務所の無料法律相談をご利用ください。 あなたが抱えている不安を、法的な「解決への道筋」に変えるお手伝いをいたします。

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※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。

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