【不動産トラブル解説】共有持分放棄と登記引取訴訟とは?

【不動産トラブル解説】共有持分放棄と登記引取訴訟とは?

執筆者:弁護士小林洋介

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士

保有資格:弁護士、経営革新等支援機関、2級FP技能士

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相続の法律相談のなかで、最近よくご相談を受けるのですが、不動産を共有で相続したけど、この共有持分が不要なので処分できないかという問題です。

今回は、不動産や相続に関する法律問題に関心のある方に向けて、「共有持分放棄」と「登記引取訴訟」という少しマニアックなテーマについて、分かりやすく解説していきます。

◆「共有持分」って何?

不動産を複数人で所有している状態を「共有」と言います。

たとえば相続や共同購入の結果、1つの土地や建物を兄弟や親子など複数人が共有するケースはよくあります。

この「共有状態」の中で、1人1人が持っている権利のことを「共有持分」といいます。

◆共有持分放棄とは?

すべての不動産について、売却ができれば問題がないのですが、山奥の山林などを相続してしまった場合には、なかなか売却ができないこともあります。

そのような共有持分を手放したい場合、売却や贈与だけでなく、持分を放棄(ほうき)するという選択肢があります。

それでは「放棄」とは何でしょうか。

読んで字のごとく、「自分の権利はいりません」と手放すことです。

ただし、ポイントがあります。

民法上持分を放棄すると、それは「他の共有者に帰属する」とされています(民法255条)。

つまり、放棄された持分は、他の共有者に移るのです。

ただし、この「放棄」が問題になるのは、登記がされない場合になります。

放棄したと言っても、登記簿上の名義がそのままになっていれば、法律的には第三者に対抗できず、「名義上の所有者」としての責任がついて回ることになります。

 ◆登記引取訴訟って何?

さて、「持分を放棄したのに、登記名義が残っている」というケース。

多くの場合、その不動産について売却もできないような利用価値の低いものであったりします。

そうすると、他の共有者からしても登記名義を自分に移すということに消極的であることがよくあります。

このときに登場するのが、「登記引取訴訟」です。

持分放棄をしたが、他の共有者に対して「登記を引き取ってくれ」と裁判を起こすのが「登記引取訴訟」です。

放棄の意思があったこと、放棄の効果がすでに生じていることを立証すれば、裁判所は「登記を移せ」という判決を出してくれます。

この判決に基づいて、法務局に登記を申請することができます。

【こんな時に使われる!】

・相続で兄弟間の関係が悪く、協力が得られない

・名義人が行方不明、あるいは非協力的

・書面で持分放棄の意思表示があるが、登記の手続がなされていない

このような場合に、登記引取訴訟をする必要があります。

◆注意点と実務上のポイント

1. 放棄は一方的にできるが、登記は手続が必要

2. 放棄の事実を証明する証拠(書面ややり取りの記録)が重要

3. 登記引取訴訟は時間とコストがかかる場合もある

できるだけ早い段階で、持分放棄についての合意書や登記申請の準備を整えるのがトラブル回避のポイントです。

◆【まとめ】 

共有不動産のトラブルは、放っておくと処分や管理が困難になり、長期的な問題に発展することも。

特に持分放棄をめぐるトラブルは、法的な手続、対応も必要です。

「持分放棄したいのに、他の共有者が協力してくれない…」

「登記をどうにかしたいけど、相手と連絡が取れない…」

そんなお悩みがある場合は、お早目に当事務所にご相談ください。

  ※ 本記事は、執筆日における法令、判例、実務に基づき作成しており、その後の法改正等に対応していない可能性があることをご了承ください。

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