遺産分割の弁護士報酬のご説明

遺産分割の弁護士報酬のご説明

執筆者:弁護士小林洋介

弁護士法人IGT法律事務所 代表パートナー弁護士

保有資格:弁護士、経営革新等支援機関、2級FP技能士

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当事務所の相続事件で、もっともご相談が多いのが遺産分割事件になります。本日は、遺産分割事件の弁護士報酬をご説明いたします。

1 着手金

当事務所の遺産分割事件の着手金は30万円(税抜)としております。以下断りのない限り消費税抜きの数字でご説明いたします。

この場合の業務スコープとしては、他の相続人との交渉業務、遺産分割調停、遺産分割審判(第1審まで)を含んで、30万円としております。

他事務所の報酬体系をみると、交渉で着手金をいくらとし、調停に移行したときにプラス10万円の着手金、審判に移行したときにプラス10万円の着手金などと設計しているケースも多く見かけます。

しかし、早期解決のためには、交渉でダメなら調停に速やかに移行し、調停でダメなら速やかに審判に移行することが重要です。もし、この場合に交渉から調停に移行する場合に追加の着手金がかかるとすると、なんとか交渉でまとめて欲しいとおっしゃるお客様もいると思います。

遺産分割事件を何十件とこなしている弁護士であれば、本件が交渉でまとまりそうな案件か、調停でまとまりそうな案件かの見極めは意外と早めにつきます。したがって、ここで交渉、調停、審判のステージ選択に時間を要するのはデメリットであり、速やかに次のステージに移ったほうがお客様のためであると考え、このような報酬体系としております。

また、複数人からご依頼いただく場合は、利益相反がないことを前提にお引き受けすることが可能です。着手金を割引することも可能ですので、詳しくは弁護士にお問い合わせください。

なお、審判が出たあとの抗告審、上訴審については、別途契約をお願いしております。

2 基本報酬金

当事務所では、報酬金について、①基本報酬金と、②追加報酬金の2つに分けてご請求しております。

まず、基本報酬金ですが、遺産分割の場合は、お客様が遺産分割の結果得られた経済的利益(端的に言うと取得した財産の評価額)を基準に、

3000万円以下の場合、10%、

3000万円~3億円の場合、6%+120万円

3億円を超える場合、4%+720万円

としております。

ここでいう経済的利益とは、交渉、裁判等で決定した、お客様が取得する財産(不動産、株式等については、相手方との間で合意した評価額、鑑定額または換価額とします。)の合計額とし、相続税、譲渡所得税、登記費用その他の費用等を控除する前の額面金額を意味します。

税額を控除した手取金額だと勘違いされる方もいらっしゃいますが、税計算は各人のお立場や各税目ごとの控除の有無等で大きく異なることとなり、そのことで我々の報酬が左右されるのも合理的でないと考えておりますので、ご理解いただければと思います。

また、基本報酬金の最低額を60万円とさせていただいております。

また、遺産分割事件を進めている間に、一部の遺産分割が成立することがあります。

たとえば、相続税の納税資金確保のため、預金だけ一部分割が行われる場合などです。

このような場合には、一部の遺産分割が成立した時点で、その経済的利益に見合った基本報酬金をご請求いたします。残額はすべての遺産分割が解決したあとでご請求いたします。

3 追加報酬金

次に、追加報酬金のご説明をいたします。

追加報酬金はすべての遺産分割事件にかかるわけではありません。

①特別受益、寄与分など具体的相続分を争う事件や、②遺産性の争い・相続負債の存否・遺産管理費用の存否などにより、取得財産額が増加した場合または相手方からの主張を排斥した場合にかかるものとなります。

追加報酬金の金額は、取得財産の増加額または相手方の主張排斥額に応じて、

300万円以下の場合、16%

300万円を超える場合、10%+18万円

となります。

なお、①特別受益、寄与分は遺産分割調停、審判で取り扱いがなされるものですが、②遺産性の争い、相続負債、遺産管理費用の存否などの紛争は、本来的には家庭裁判所ではなく地方裁判所で取り扱われる内容です。

したがって、ここでいう追加報酬金がかかるケースは、②の争いが、遺産分割調停のなかで解決できた場合に限ります。

②の争いが地方裁判所の別訴訟で解決がされる場合には、この②に関する追加報酬金はかかりません。

4 計算例

この基本報酬金と追加報酬金の計算が複雑だというご指摘もありましたので、計算例をご説明いたします。

(1) 計算例1

遺産総額が1億円で、相続人2人の事案において、相手方の特別受益が1000万円認められた場合

お客様の取得財産は、(1億円(遺産)+1000万円(特別受益))÷2=5500万円となるのですが、そのうち特別受益によって増加した部分が500万円ありますので、基本報酬金算出のための経済的利益は、5000万円とします。したがって、基本報酬金は、5000万円×6%+120万円=420万円となります。

次に、特別受益が認められたことにより、法定相続分5000万円(1億円÷2)より、500万円取得財産が増加したため、追加報酬金は500万円×10%+18万円=68万円となります。

(2) 計算例2

遺産総額が1億円で、相続人2人の事案において、相手方の寄与分の主張500万円を排斥した場合

お客様の取得財産は1億円(遺産)÷2=5000万円となります。したがって、基本報酬金は、5000万円×6%+120万円=420万円となります。

次に、相手方の寄与分500万円の主張を排斥したのですが、かりに寄与分500万円が認められるとすると、お客様の取得財産は(1億円ー500万円)÷2=4750万円となりますので、追加報酬金算出のための経済的利益は、5000万円ー4750万円=250万円となります。したがって、追加報酬金は、250万円×16%=40万円となります。

5 出廷日当

遺産分割事件では、調停期日、審判期日に代理人が裁判所に出頭することになります。とくに調停期日は、1回で2時間程度拘束されること、また争いが激しい案件では、期日の回数が多くなり作業工数がかかることから、出廷回数に応じた日当を1期日2万円お願いしております。

近年はウェブ会議での出廷も増えており、これにより遠方裁判所の事件も受任可能となりましたが、ウェブ会議での出廷にも出廷日当をお願いしております。

6 出張日当

出張日当は、弁護士が、委任事務処理のために事務所所在地を離れ、移動によってその事件等のために拘束される場合にご請求しております。

日当の金額は、移動時間(委任事務処理自体による拘束時間は含みません。)に応じて、弁護士1人あたり、

半日(往復2時間を超え、4時間まで):3万円

1日(往復4時間を超える場合):5万円

となります。

近年では、遺産分割調停もウェブ会議で実施することができるようになり、遠方の裁判所に出張する機会は少なくなりましたので、以前よりは出張日当がかかるケースが少なくなりました。

7 預貯金仮払い手続(民法909条の2)

相続法改正により、遺産預貯金の一部を、遺産分割成立前に相続人が引き出すことができるようになりました。葬儀費用や生活費の工面等で活用されております。

遺産分割事件を進めている間に、この手続の代行を行うことがありますが、その場合、被相続人1人あたり、1金融機関に対し、3万円の手数料をお願いしております。

なお、これにより仮払いされた金員については、民法909条の2「この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」とありますので、遺産分割の経済的利益に含まれることになります。

なお、預貯金仮分割の仮処分という家庭裁判所に申立てを行う手続があります。預貯金仮払い手続と異なる手続ですので、弁護士報酬は異なります。

8 実費

遺産分割事件では、戸籍、住民票などの取得、不動産登記事項証明書の取得、取引履歴の取り寄せ、調停申立ての収入印紙、不動産鑑定費用、郵送費、調書の謄写手数料など、さまざまな実費がかかります。これらは弁護士報酬とは別にご負担をお願いしております。

また、実費等に充当する目的で、事件着手時に預り金をお願いしております。一般的な遺産分割事件ですと、預り金を3万円ほどお願いしております。

9 遺産分割事件ではない相続問題について

最後に、遺産分割事件ではない相続問題についてご説明します。

上記の弁護士費用は、あくまで遺産分割調停、審判で解決可能な遺産分割事件についてご説明しました。

ところが、遺産分割には関連するが、遺産分割調停、審判で解決不可能な内容もあります。たとえば、養子縁組無効・遺言無効・遺産分割協議書無効など前提問題に争いのある事件、不当利得返還請求(預金使い込みなど)、相続負債・遺産管理費用に関する紛争、預貯金仮分割の仮処分などがあります。

これらの事件の多くは地方裁判所の訴訟事件であったり、家庭裁判所でも遺産分割とは別事件扱いになるものです。遺産分割調停、審判では取り扱ってくれません。

たとえば、遺産分割のご相談と思ってご相談をお聞きすると、遺産分割のほかに預金使い込みのご相談が含まれていることがあります。

この場合、遺産分割調停で、預金使い込みの事案まで解決できると思っていらっしゃるご相談者の方も多いのですが、預金使い込みは原則として地方裁判所の訴訟事件として解決すべき問題です。

当事務所では、遺産分割事件+預金使い込み事件(訴訟事件)をセットでご提案しております。

ご相談者様は、遺産分割で両方解決できるものと思い込んでいて、依頼している弁護士と話が合わないと言ってご相談にいらっしゃるケースも多いです。しかし、そもそも地方裁判所で決着すべきものを家庭裁判所の調停手続に乗せてやっていては、相手方が合意しなければ解決しません。多くのケースで使い込みが疑われている相手方が合意するはずもありません。

このような事案では、最初から遺産分割調停と預金使い込み訴訟を両方走らせるか、遺産分割調停を先に走らせて、その後に訴訟を追加するなどの戦略を立てる必要があります。このようなケースでは、弁護士費用を割引させていただく場合があります。

よくご相談を受ける事案ですので、コメントさせていただきました。ご参考になれば幸いです。

 

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