遺言書に納得いかないときは?知っておきたい「遺留分」
こんにちは。相続に強い弁護士の小林洋介です。
日本公証人連合会の発表によると、公正証書遺言の作成件数は年々増加し、平成29年の年間作成件数は110,191件となり、10年前の2008年76,436件と比べると、44%も増加しています。また、家庭裁判所における遺言書の検認件数も年々増加傾向にあります。
遺言書があれば、相続トラブルを防ぐことにつながります。
その一方で、遺言書に「すべての遺産を長男に与える」と書かれていて、トラブルの原因となるというケースも、よく聞く話です。
遺言書の内容に納得できない時、どうしたらよいでしょうか。
遺留分と、その請求方法とは?
法定相続人に最低限保障された取り分のことを、「遺留分」といいます。
しかし、相続人であれば誰でも遺留分を主張できるわけではありません。
亡くなった方の配偶者、子、親などの相続人には、原則として遺留分を主張する権利がありますが、兄弟姉妹は、遺留分を主張することが出来ません。
遺留分の割合は、直系尊属だけの場合は遺産の3分の1、それ以外の場合は遺産の2分の1となります。
遺留分を有する相続人が複数人いる場合は、遺留分の割合に、法定相続分の割合をかけます。
遺留分を請求する権利のことを“遺留分減殺請求”と言います。
この方法は、「遺留分侵害額請求をする」という意思表示を、遺贈や贈与を受けた相手にするだけです。
後々のトラブルを防ぐために、内容証明郵便で送りましょう。
遺留分侵害額請求をしても、相手方から遺留分を取り戻せない場合、調停や裁判手続をすることになります。
遺言書に納得できない、そんな場合は?
遺言書の効力の有無を争うという方法もあります。
遺言書は、種類ごとに方式が決まっています。
遺言書の方式の要件が1つでも欠けていれば、その遺言は無効になる可能性があります。
「自筆証書遺言」の場合は、すべて自筆で書いていなければなりません(この点は平成30年相続法改正により変更がなされます。)。
パソコンで作成している、他人が代筆しているといった場合は、無効になります。
また、遺言書を作成するためには、その内容と結果を理解する能力(これを「意思能力」といいます。)が必要です。
たとえば、遺言者が認知症を患っており、遺言書の内容と結果を理解する能力を欠いた状態で作成された遺言書は、意思能力のない者の遺言として無効になります。
遺言書の方式が守られていない、遺言者の意思能力に疑いが生じているなどの場合には、遺言無効確認の訴訟を提起して遺言書の無効を主張していくことになります。
執筆当時の法令等に基づいて解説しておりますので、その後の改正等の内容を反映していない可能性があります。また本コラムは一般的な内容を記載したものであって、具体的な法律相談の回答ではありませんので、これに依拠して行動されたことによるいかなる結果が生じたとしても、責任は負いかねます。あらかじめご了承ください。
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