相続で妻が自宅を手放さなくても良くなる?配偶者居住権の新設
こんにちは。相続に強い弁護士小林洋介です。
本日は、平成30年7月6日に成立しました相続法改正について、配偶者居住権という権利が新しく創設されましたので、これについてお話しします。
配偶者の居住権を保護するための方策としては、原則として遺産分割終了までの暫定的な保護としての「①配偶者短期居住権」と、原則として配偶者が亡くなるまでの間の長期的な保護としての「②配偶者居住権」という2つの新しい権利が創設されることとなりました。なぜこのような権利が新設されることとなったのでしょうか?
今までの遺産分割の問題点について説明します。
相続で妻が自宅を手放さなくてはならない場合があった
今までは、遺産分割終了後も配偶者の住み家を確保するために、その自宅の所有権を配偶者に相続させることが行われていました。しかし、一般に不動産の評価額が高額であることから、配偶者は自宅以外の財産を取得できなくなります。
たとえば、遺産である自宅の価値が4000万円、遺産の預貯金が1000万円あったとします。相続人が配偶者と子供1人とすると、法定相続分は2500万円ずつとなります。
配偶者がこの自宅の所有権を相続するためには、預貯金1000万円を全部子供に渡したうえで、あと1500万円の代償金を子供に支払わなければなりません。
その後の生活資金なども考えると、自宅の所有権の相続をあきらめて、自宅を手放してお金に換えて、遺産分割を行っていた事例が少なくありませんでした。
所有権を相続しなくても「居住」することができる権利
改正後は、配偶者居住権を利用することで、例えば、自宅の価値4000万円を、配偶者居住権2000万円、居住権付き所有権を2000万円というふうに評価して、配偶者が居住権2000万円を取得したうえ、さらに預貯金500万円を取得して、生活資金を相続できるということが可能となります。
また配偶者居住権は、配偶者が死亡すれば消滅しますので、相続されることはありません。このため数次相続を防ぐという効果もあります。
配偶者居住権の設定にはぜひ遺言書を!
それでは、配偶者居住権を妻が取得するにはどうしたらよいでしょうか?
これについては、遺贈(遺言による贈与)、死因贈与契約、遺産分割により取得します。遺産分割は、原則として相続人の全員の合意が必要となりますから、配偶者相続人が被相続人の居住建物に住み続けることを生前に確保しておくためには、被相続人の遺言で配偶者居住権の遺贈を定めておくことがとても重要になってきます。
今後は、超高齢化社会を見据えて、ご夫婦のうち自宅の所有権を有している方がそうでない配偶者への配偶者居住権を設定する遺言を書いておく(共有建物であれば相互に遺言を書いておく)ことが必須になってくるのではないでしょうか。
施行日はこれから!
本記事の作成時点において、配偶者居住権の施行日は未定で、公布日(平成30年7月13日)から2年以内とされています。
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