相続して大丈夫?相続税対策で始めたアパート経営(その1)

相続して大丈夫?相続税対策で始めたアパート経営(その1)

こんにちは。相続に強い弁護士の小林洋介です。
「かぼちゃの馬車」というシェアハウスの購入資金を金融機関からの融資で調達させてオーナーにシェアハウスを購入させ、そのオーナーから一括借上げで賃料を支払うという仕組みで急成長した株式会社スマートデイズですが、平成30年4月9日に民事再生の申立てを行ったという報道がありました。
平成27年相続税改正をきっかけとして、相続税の節税対策として、遺産の相続税評価額を圧縮する目的で、アパート物件購入資金の全部または一部を融資(アパートローン)で賄い、アパート経営を行う方も多く見かけます。
これは本当に相続して大丈夫なのでしょうか?

 典型的な相続税の節税効果

相続税の節税を実現するためには、遺産の相続税評価額を引き下げる必要があります。
まず、土地の評価額ですが、アパートを建築して賃貸事業を行うことで、その土地は「貸家建付地」としての評価額となり、評価額を引き下げることができます。また、小規模宅地等の特例を利用できればさらに評価額を引き下げることができます。
また、建物の評価額については、実際に建築に支出した金額ではなく、固定資産税評価額に借家権割合などを控除した金額となります。したがって、評価額を引き下げることができます。
さらに、アパートローンを利用してアパートを建築した場合には、アパートローンの借入残高がマイナスの財産となりますので、土地建物の相続税評価額から残債を控除することができます。
これらによって、相続税評価額を引き下げ、相続税の節税を果たすことになります。

サブリースの利用

相続税対策としてアパート経営を行っている方の場合、サブリース方式で契約されている方が多く見受けられます。サブリースとは、オーナーが直接入居者を募集して賃貸契約を締結するのではなく、不動産管理会社等(以下「事業者」という。)がオーナーから物件を借上げ、入居者に転貸する方式をいいます。この場合、入居者の募集、管理は事業者が行うことになります。
サブリース方式で契約されている方が多いのは、相続税対策としてアパート経営を行う方は、相続税圧縮にのみ関心があり、不動産賃貸事業そのものには比較的関心をはらわれていない方が多いからと思われます。

これらの相続税対策に潜む法的リスク

1 賃料減額請求

サブリースでは、たとえば「30年一括借り上げ」とうたわれていたとしても、賃料が30年間減額されないことを保証するものではありません。サブリース契約書のなかには、「一定期間経過後の家賃見直し」の条項が必ずありますし、事業者はオーナーに対し、借地借家法に基づいて賃料の減額請求ができます。

 ローン不払いの場合の賃料差押

サブリースでは、オーナーは事業者に対して一括で居室を貸し付けますので、オーナーに対して賃料を支払うのは事業者だけです。アパートローンの債権者は当該アパートの土地建物に抵当権を設定しますので、アパートローンが延滞した場合には、その回収のため、その賃料を差し押さえしてきます。これを抵当権に基づく物上代位での賃料の差押えといいます。
賃料差押を行う場合には、第三債務者である賃借人を特定する情報が必要となります。サブリースの場合は、事業者と債権者である金融機関は通常サブリース物件の建築から融資まで協働してプロジェクトを進めており、協力関係にありますので、債権者が賃借人を特定することは容易です。
そのため、債権者が賃料差押を行うことが極めて容易であるといえます。この場合、オーナーとしては物件からのキャッシュフローが途絶えてしまい、固定資産税を支払うにも苦慮してしまいます。

 3 団体信用生命保険に入っていない

居住用の住宅ローンや一般的な不動産投資ローンの場合には、借主が死亡した時に債務を肩代わりする団体信用生命保険(団信)に入っていることが多いと思います。これに対し、相続税対策のアパートローンの場合、相続税評価額の引き下げのため、負債を計上することを目的としますので、団信に入っていないことが多いです。
そうすると、物件の稼働状況(賃料収入)が低くなってきたにもかかわらず、借主の死亡によっても負債が消滅せず、相続放棄などを行わなければ、相続人がアパートローンを返済し続けなければならないことになります。

 

ここまで、相続税対策としてのアパートローンの節税効果、サブリース、法的リスクをご説明しました。次回は、実際の相続が発生した場合の留意点、アパート経営がうまくいかなくなった場合の方策について解説します。

アパート経営(その2)はこちら

 

執筆当時の法令等に基づいて解説しておりますので、その後の改正等の内容を反映していない可能性があります。また本コラムは一般的な内容を記載したものであって、具体的な法律相談の回答ではありませんので、これに依拠して行動されたことによるいかなる結果が生じたとしても、責任は負いかねます。あらかじめご了承ください。